5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

運転手は詩人

2021-06-15 22:07:33 |  旅行・地域

15日のコロナ、全国で1418人(延778269人)の感染と67人(累14217人)の死亡が確認された。このうち、愛知県では98人(延50025人)の感染と、6人(累901人)の死亡が報告されている。

お仲間たちと長江を下る600kmのクルーズ旅を楽しんだのは三峡ダムの完成前、2004年のことだった。重慶市はこの旅の出発点、四川盆地にある内陸巨大都市だが、この南には貴州省が隣接する。さらにその真ん中にあるのが省都の貴陽だ。貴陽に行ったことはないのだが、今日の中日夕刊「世界の街海外リポート」を読んでちょっと興味が湧いた。ウイキによるとここの人口は345万とあるから驚いた。横浜に匹敵する人口規模である。

貴陽からのリポートは「タクシーで聴く漢詩」といかにも中国的なタイトルになっている。興味をもって読んだ。

貴州といえば赤白の瓶が特徴的な貴州茅台酒(白酒)の産地としても有名だが、ある日、この銘酒を楽しんだ特派員氏が乗ったタクシーの運転手がBGM代わりに詠んでくれた自作の漢詩、韻を踏んだ七言絶句がほろ酔いの耳にはちょうとよく響いた。

仕事を題材にした「送客」という詩は

 西の空が紅くなった頃
 仕事に駆り立てる喇叭が鳴る
 街を走り続け 客を送り届けた時
 明るい月を迎える
 
「蜂」という詩は

 蜜蜂が忙しく花粉から糖を作る
 この甘い蜂蜜が ひとの食べるものだと
 鉢は知る由もない

祖国の誇りをテーマにした詩は

 改革開放によって
 中国は強くなり
 技術は世界に轟くようになった

など、運転手詩人らしく幅広い作風と見える。

貧困地域も多くあった貴州省で育った彼は、小学校もろくに行けておらず学はないが、詩作だけは得意だった。いまでも、仕事詰めの単調な日々にあるささやかな楽しみが、素人漢詩なのだ。

やがてタクシーはホテルに着き、彼の詩吟も終わりだ。「もう着いちゃったか、もっと謳いたかったなあ」と笑いながら、走り去ったという。

貴州に暮らす彼なら、名産の白酒も嫌いではなかろう。「酒」の詩も聴きたかったところだ。酒吞みの名詩人といえば、唐の李白、​杜甫、白居易などが上げられるが、ここは長江下りを詠んだ李白の「早発白帝城」を引用しよう。

 朝早く美しい彩雲がたなびく白帝城を出発し
 千里離れた江陵まで一日で帰って行く
 両岸の猿たちの哀声が終わらぬうちに
 小舟は幾重の峡を一息に通過してしまった
 
 


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