5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

橋番が守る橋

2015-01-25 22:30:11 |  文化・芸術
頃は大寒。その次候は「水沢腹堅」で、寒さが最も厳しくなる時期で沢には氷が厚く張りつめるというわけだが、昨今は暖冬で風がなければずいぶん暖かい。それでも、今夜からはまた雨模様の予報だ。寒くなるというから年寄は体温調整に苦労する。

「疾く鎖す橋番小屋や寒の雨」

これは会津八一の句で「文人たちの句境」(関森勝夫編)に載っている。

橋番小屋というと江戸の時代劇が思い浮かぶが、橋の渡り賃を取る代わりに、川水の増減を見守ったり、通行人の安全に気を配る役割の橋番が居た橋の袂の小屋のこと。今なら交番のような役割だろうか。

寒の氷雨が降り続き「今日は早仕舞いだ」とばかりに板戸を閉じてひっそりとした橋番小屋の様子。雨にけぶって先が見えない橋は、いかにも寒々とした景である。

関森の解説には、橋番のいる橋などもう日本には殆どないだろうが、静岡の島田と金谷の間を流れる大井川にはまだ木橋が架かっていて橋番小屋が置かれているとある。「蓬莱橋」のことだろうか。

WIKIには、この蓬莱橋は明治12年(1879)の完成、牧の原台地の開拓農民の出資による建設だったために通行料を取る賃取橋であると書かれている。さらに、平成9年には「世界一の長さの木造歩道橋」としてギネス登録もされているともある。

俳人の関森は教育者でもありその半生を静岡県下の複数の大学で過ごしているから、蓬莱橋のことも当然承知しているのだ。

ふるさと静岡の珍しい木の橋を見せようと母親を連れて大井川に架かる全長900メートルの長い橋を往復したことがあるのだそうだ。炎天の日だったとあって、当時80歳の母親は平然と歩ききったのに、若い彼の方は暑気あたりを起こして後で寝込んだと書いている。

以前に、この橋をTV番組で見たことがあるのだが、河原ばかりの大井川、夏は太陽に焼かれた石や砂の輻射でさぞ暑かろうし、南アルプスから吹き下す冬の風はきっと冷たい「寒」の雨を蓬莱橋にも降り注ぐだろう。現代の橋番はそんなとき早仕舞いが許されるのだろうか。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿