のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

スキップ/2004年冬公演

2010年03月24日 22時08分41秒 | 日常生活
■ストーリ
 高校2年の一ノ瀬真理子(岡内美喜子)は、雨で運動会が中止になった日、
 自宅でレコードを聴きながら、ついうたた寝をしてしまう。
 目が覚めてみると、そこは知らない家。鏡に映った顔は、中年女性の顔だった。
 彼女は、42歳の高校教師「桜木真理子」(坂口理恵)となっていたのだ。
 うたた寝の間に、25年という時を、「スキップ」してしまった真理子。
 初めて対面する夫と娘。教師になっていた真理子に近づいてくる新学期。
 真理子は自分の置かれた状況にとまどいながらも42歳の女性として
 生きていく決心をする。

■感想 ☆☆☆☆☆
 大好きな作家、北村薫さんの作品の中でも特に大好きな作品「スキップ」を
 これまた大大好きな演劇集団「キャラメルボックス」さんが舞台化した作品。
 「大好き」がいっぱい詰まり過ぎている夢のような作品です。
 だからこそ「がっかり」してしまうのではないか、とドキドキしていた作品
 でもあります。そのドキドキは幸いにも杞憂に終わりました。
 久々に見て、やはり大好きだなぁ・・・と作品世界に浸りました。
 
 ある日、突如17歳から42歳にスキップしてしまう主人公。
 17歳だった「私」が次の瞬間には42歳になってしまう恐怖。
 おそらく人生でもっともキラキラしている25年。
 恋愛、結婚、出産といった大きなイベントが立て続けに起こる可能性が
 高い期間であり、思う存分若さを満喫できる期間でもある。
 それらの「うまみ」をまったく味わうことなく、突如、42歳に
 飛んでいってしまう理不尽にヒロインはうろたえ、悲しむ。
 そして、女性だからこそ、味わう外見の変化へのショック。
 鏡で自分の姿を鏡でたヒロインが心の中で呟く場面が痛々しい。
  「割れたものはあるのよ。
   わたしの心は微塵に砕けました。」

 それでも、現実から目をそらさず、嫌なことから逃げるのではなく
 「嫌なことだからこそやってしまおう」と前を向くヒロインを
 岡内さんと坂口さんが凛とした佇まいでまっすぐ演じる。
 いつもは声の出し方や台詞の言い回しが苦手な岡内さんだけれど、
 今回ばかりは彼女の眼の光の強さ、視線に込められた思いの強さ、
 そしてすっと伸びた背筋やきびきびとした動きがヒロインに
 とてもよく合っている。私の思い描いていた真理子とぴったり
 重なり合い、違和感なく2時間見ることができた。

 坂口さんはいつも通り魅力的。芯の強い、でもかわいげを忘れない
 大人の女性をキュートにかっこよく演じていた。
 私が彼女の中で特に好きなのは、声だ。
 坂口さんもそうだけれど、今回のスキップでは4役ぐらいこなして
 大活躍だった岡田さん。このふたりの発声はまったく無理がなく
 とても聞きやすい。力が入りすぎていない声の出し方が心地よく
 大好きなのだと思う。

 毎回のことながら、このふたりが「ヒロイン」と「彼女の高校時代
 からのの親友」として再会する舞台終盤は、時にもてあそばれて
 しまったヒロインのせつなさが舞台からあふれ出してくる熱演で
 この舞台でのクライマックスだと思う。
 「時を越えてやってきた」という親友を信じることができなかった
 親友がヒロインを抱きしめる。
 「あたしは信じる。世界中が違うといっても、あたしは信じる」

 この場面と、そのすぐ後に続くラストシーンで17歳、そして42歳
 ふたりのヒロインが前をまっすぐ見つめる。このふたつの場面が大好きだ。

 「昨日という日があったらしい。
  明日という日があるらしい。
  だが、わたしには今がある。」

 また原作を読みたくなりました。
 そして、キャラメルボックスの舞台を生で見たくなりました。  

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