のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

秘密の花園/バーネット

2009年10月31日 00時26分59秒 | 読書歴
97.秘密の花園/バーネット

小公女を読み終えた途端、猛烈に読み返したくなったのが
こちらの「秘密の花園」でした。「赤毛のアン」とか
「昔気質の一少女」あたりに続いてもよかったのですが
幼いころの思い出つながりで、「秘密の花園」へ。
作者は「小公女」と同じくバーネット。

ヒロインはびっくりするぐらい巷の「ヒロイン」像のイメージを
打ち破る女の子、メアリー。
無愛想で気が強くて我儘。
やせっぽっちで愛敬がなくて、憎たらしいくらいの頑固者。
メアリーは、愛されて育てられなかったために
「愛されること」も「愛されたい」という感情も知らず、
そして、勿論、自分自身も誰かを「愛したい」とか「好きだ」と
思うことなく過ごしていました。
彼女が知っているのは、「召使いとの関係」だけ。
彼女の周りにいるのは、
「自分がしたいことを要求するために存在する人たち」のみ。
そんなメアリーがコレラで両親を失い、召使いは逃げていき
突如、孤児になり、遠い親戚のおじさんに引き取られることになり
イギリスへやってくるところから、話が始まります。

周りの人たちを愛する、とか
周りの人たちに愛されたい、とか
そういった感情をまったく持ち合わせていなかったメアリーが
「秘密の花園」で自然に触れ、体を動かし、草木や花を育てていくうちに、
どんどんと子供らしく、愛らしくなっていきます。
その変化がとても自然。
彼女を見ていると、人間には自然とのふれあいが、誰かを愛する心が
必要なんだろうな、と素直に思えます。
そして、どんどん良い方向に変わっていき、
大好きなものが増えていく彼女を見ていると
私まで嬉しくなります。
この本を読んでいると、
良い変化は周囲の人たちにも良い影響を及ぼすのだということを
そして、笑顔や人に対してのポジティブな感情が
「よい出来事」や「よい変化」を呼び寄せるのだということも
素直に納得できる気がします。

とか、なんとか言いつつ、それでも終盤まで
メアリーは気が強く、強情な女の子のままなのですが。
それでも、素直な部分も持ち合わせているから
そのキャラクターも愛しく思えるわけで
ただ気が強いだけでは駄目だな、素直な部分も持ち合わせなくてはね
と自戒の念を込めて読み返しました。

海からの贈り物/リンドバーグ夫人

2009年10月27日 17時35分30秒 | 読書歴
96.海からの贈り物/リンドバーグ夫人

■内容
 大西洋横断飛行に最初に成功した飛行家リンドバーグ大佐夫人
 であり、自らも世界の女流飛行家の草分けの一人である著者が
 その経歴を一切捨て、一人の女として、主婦として、自分自身を
 相手に続けた人生に関する対話である。ほら貝、つめた貝、
 日の出貝などの海辺の小さな芸術品に託して、現代に生きる
 人間ならだれでもが直面しなければならぬいくつかの重要な
 問題が語られる。

■感想 ☆☆☆*
 最近、平易な文章にばかり触れていたため、読み難い日本語訳に
 すっかり手こずってしまったが、それでも読み進めながら
 しみじみと共感できる作品だった。
 むしろ、読み難い訳のおかげで、何度も読み返しながら読み
 進められ、通常以上に、文章の意味を、内容をかみしめながら
 読み進めることができたように思う。

 今から約40年前にアメリカ人向けに書かれたものではあるが、
 今もまったく状況は変わっていないことを実感した。
 むしろ、40年たったことによって、私たちの状況は当時よりも
 リンドバーグ夫人が警鐘を鳴らす状況に一層近づいているのでは
 ないか、という気がした。

 リンドバーグ夫人は、「最近の」男性も女性も、意識を外に
 向けてばかりで、自分を内部に向かわせることが少なくなった
 と指摘する。特に女性は、フェミニスト運動のおかげで、
 多くの権利を手にし、今まで以上に世の中での活躍の機会
 を持つようになった。けれど、そのために女性が失ったものは
 大きいのではないか、と彼女は訴える。
 人には自分を見つめる時間が必要であり、ひとりで考える
 時間が必要であり、孤独になることは大切である、という
 彼女の考えには心から共感できた。
 そして、確かにそのとおりかもしれない、と自分自身を省みた。
 インターネットにテレビ、携帯、様々なツールが増えたおかげで
 私たちの生活は便利になり、私たちは多くの情報を簡単に
 手に入れられるようになった。
 そして、その手に入れた情報のおかげで判断基準を増やす
 ことができている。だが、その中で、私たちがひとりで
 ゆっくりと物事に思いをはせる時間、物思いにふける時間は
 どんどん削られているように感じる。
 今、教育の世界では子供たちの想像力・創造力の欠如が
 指摘されていると言う。しかし、欠如しているのは、
 想像力でも創造力でもなく、それらを養う時間なのでは
 ないかと思った。

 だからといって、私は今の生活スタイルをすぐには変えられ
 ない。私は今の便利さを手放せられない。けれど、それでも、
 少しずつひとりに戻る時間を、自分ひとりで考える時間を
 確保したい。そう思った。

よつばと/あずまきよひこ

2009年10月22日 23時35分46秒 | 読書歴
95.よつばと/あずまきよひこ
■ストーリ
 いつでも、今日がいちばん楽しい日。
 夏休みの前日、とある町に強烈に元気な女の子「よつば」と、
 「とーちゃん」の親子が引っ越してきた。遠い海の向こうの
 島から来たらしい不思議な女の子、よつばがはじめて体験する
 「毎日」に振り回される周囲の人達。

■感想 ☆☆☆☆☆*
 ここ数年、家にある漫画を読み返したり、以前好きだった漫画を
 古本屋で読み返すことはあっても、新規開拓からすっかり
 遠ざかっていましたが、いろんな縁が重なったおかげで、
 久々に集中的に漫画の新規開拓を行えています。

 で、色々と読んだ最近の中でもピカイチだったのがこの作品。
 おもしろくて、おかしくて、かわいらしくて、いとしくて、
 ノスタルジックな気持ちに浸ることもできて、と
 この作品を読むだけで、心の中の様々な部分を刺激されました。

 物語はとてもシンプル。
 ある街に引っ越してきたよつばちゃんが父ちゃんや父ちゃんの友達、
 新しい街のお隣さんたちと一緒に「はじめて」を楽しむ物語。
 無邪気にどんなことでも楽しむよつばちゃんは、好奇心のかたまりで
 「はじめて」が大好き。「はじめて」ではないものも大好き。
 よつばちゃんは、どんなものだって楽しむ。
 それがたとえ、雨や風のような日常生活にあふれているものであっても。
 大雨の中、大喜びで外に出ていくよつばちゃんを心配する
 お隣さんへの父ちゃんの言葉が印象的。

 「大丈夫、大丈夫。
  あいつはなんでも楽しめるからな。よつばは 無敵だ。」

 この漫画を読んでいると、小さい頃の風景を、
 あの頃の空気のにおいを、あの頃の時間の流れを
 鮮明に思い出しているような気持ちにさせられます。

チルドレン/伊坂幸太郎

2009年10月22日 23時33分45秒 | 読書歴
94.チルドレン/伊坂幸太郎
■ストーリ
 こういう奇跡もあるんじゃないか?
 まっとうさの「力」は、まだ有効かもしれない。
 信じること、優しいこと、怒ること。それが報いられた瞬間の輝き。
 ばかばかしくて恰好よい、ファニーな「五つの奇跡」の物語。
 短編集のふりをした長編小説です。

■感想 ☆☆☆☆*
 5編のストーリーで、過去と現在を往復しつつ、陣内のぶれない
 人間性や、彼が父親に抱いていたわだかまりからの解放について
 描いた作品。
 各ストーリで、日常の1場面にスポットが当てられる。
 そこには、見過ごそうと思えば見過ごせる程度のちょっとした
 謎が隠されている。そのちょっとした謎に気付いているわけでは
 ないのに、陣内は彼特有の感性で敏感に反応し、いちゃもんを入れ、
 騒ぎ立て、いつのまにか謎を明らかにしていく。その隣で、
 目が見えないにも関わらず、唯一、起こっている出来事を正しく
 見ることのできる永瀬。
 そして、陣内に呆れながらも、彼の感性を認めている友人、鴨居。
 彼らが築いている関係の温かさ、親しさゆえの無遠慮さが大好きで
 気がつけば何度も読み返してしまう作品だ。

 突飛なキャラクターの陣内が周囲の友人たちにきちんと迷惑がられ
 呆れられ、そして結局は愛されている姿がいとおしい。
 突飛に見えて、枠におさまっていない分、実はもっとも真実や真理に
 近い陣内。だから彼の言葉は傍迷惑なのにポジティブだし、
 自分勝手なのに、希望にあふれている。人に元気を与える。
 「奇跡」は狙って起こすものではない。だから、意識して与えられる
 「優しさ」なんかを飛び越えたところにいる陣内の周囲に
 「奇跡」があふれているのかもしれない。

生き方上手~対話編~/日野原重明

2009年10月22日 23時29分53秒 | 読書歴
93.生き方上手~対話編~/日野原重明
■内容
 ミリオンセラー「生き方上手」の読者101人と91歳を越えた
 医師との対話。私たちにできることは、よりよい死を考えながら
 生きる、ただそれだけなのです。
■感想 ☆☆
 図書館へ行く、という私に祖母が「じゃあ、これも読んでみて。」
 と貸してくれた数冊のうちの1冊。祖母が本を読んでいる姿など
 見たことがないため、驚いたものの、だからこそ興味をひかれ、
 読み始めた。
 「生き方上手」の読者から送られた「読者カード」への回答が
 本になっているため、「生き方上手」を読んでいることが前提
 となっている。この本だけを読むことは想定されていないつくりと
 言っていいと思う。また、様々な年代の方に、見やすく読んで
 もらうよう構成されており、そのために文字が大きかったり、
 文字数が少なかったり、と少し物足りなく感じるところもある。

 けれど、そういったところを補って余りある説得力に満ちた
 言葉の数々だった。91歳を超えてなお、医師として現役で
 働き続けているという著者だからこそ、言葉に力を与えている
 のだと思う。それでいて、彼は「医師」という職業だけに
 人生を注いではおらず、「音楽」という楽しみも見つけて、
 今も毎日を生き生きと過ごしている。
 そういった充実した日々が彼に力を与え、そして読者である
 私たちにも元気を与えてくれるのだと思う。
 なにより、彼が持つすべてのものに対する「肯定」の気持ちが
 私を穏やかな気持ちにさせてくれた。

 こういったジャンルのベストセラーには苦手意識があるため、
 なかなか手に取れないでいますが、「生き方上手」は
 読んでみたいかも・・・と思わせられました。

きつねのはなし/森見登美彦

2009年10月19日 22時40分22秒 | 読書歴
92.きつねのはなし/森見登美彦
■ストーリ
 京の骨董店を舞台に現代の「百物語」の幕が開く。
 細長く薄気味悪い座敷に棲む狐面の男。闇と夜の狭間のような
 仄暗い空間で囁かれた奇妙な取引。私が差し出したものは、
 そして失ったものは、あれは何だったのか。
 さらに次々起こる怪異の結末は。妖しくも美しい幻燈に彩られた奇譚集。

■感想 ☆☆*
 「夜は短し 恋せよ乙女」ですっかり森見さんの虜となってしまい
 集中的に他の作品にも手を伸ばしている。彼の作品に共通して
 いるのは、リズミカルな文章、ユーモアあふれる言い回し、
 そして登場人物に対する作者の愛情だと思う。それらが森見さんの
 作品をどこかコミカルで、どこかとぼけた味わいあふれるものに
 しているのだと思う。
 しかし、この作品は、森見さんの作品に対する私の上記のような
 見解を見事に覆す作品だった。どこまでも森見さんらしくない作品。
 読みながら、谷崎潤一郎の「陰影礼賛」を思い出した。
 そして、純日本風の家屋の隅々に必ず存在する陰影を、
 畳の部屋に漂うほの暗い雰囲気を、雨の日に瓦屋根から落ちる雨だれ
 が響かせるぽつんぽつんという寂しい響きを思い出した。

 社会はどんどん便利になり、24時間、お店が開くようになり
 ほしいものが何時でも手に入るようになった現代。どこにいても、
 手軽に連絡を取り合えるようになった現代。
 それでも、私たちの中には、今も脈々と「暗闇」が満ちていた時代の
 「目に見えないもの」が信じられていた時代の、「神様」や
 「天狗」や「河童」などが人間のすぐ隣にいた時代の考え方が
 流れ、私たちに影響をしているのだと思う。
 この「不思議」な話には、日本人だからこそ分かる感覚が
 たくさん盛り込まれているような気がする。そして、そういった
 「不思議」を家屋が作り出す「陰影」を感じ取れる日本人の感性を
 私は、ひそかに誇りに思ってしまうのである。
 の存在を
 をどの作品もどこかまったく
 

そのときはかれによろしく/市川拓司

2009年10月19日 22時32分37秒 | 読書歴
91.そのときはかれによろしく/市川拓司
■ストーリ
 小さなアクアプランツ店「トラッシュ」を経営している主人公、
 遠山智史のもとに、ある夜、森川鈴音と名乗る美しい女性が現れ、
 アルバイトとして住み込みで雇ってくれるように頼む。智史は
 怪しく思ったものの、彼女に奇妙な懐かしさを感じ、受け入れる。
 一方、智史は、結婚紹介所で知り合った美咲さんと何度かデートを
 重ね、デートのたびに、自分の13歳のときの思い出話をしていた。
 13歳の彼に初めてできた友達、五十嵐佑司と滝川花梨との
 出会いから別れまでについて。
 やがて彼は、鈴音がかつての友人、滝川花梨だということに
 気づき・・・。

■感想 ☆☆*
 市川さんらしい温かいファンタジー。
 当初、心がすさんでいる私にとっては、ちょっぴり設定が結末が
 甘すぎるように感じられた。けれど、この物語の核は、当初、私が
 思っていたような、決してただ甘いだけの「男女のラブストーリー」
 ではないのだと思う。「友情」や「親子愛」なども含めた「愛情」
 の物語。そう思うと、「甘さ」が「気持ちのよい温かさ」に変わって
 感じられた。
 主人公である智史が友人たちに向ける愛情や、智史自身が両親から
 向けられる愛情は、私たちが普段、照れくささゆえに、なかなか
 口に出して伝えられない気持ち。だからこそ、そういった気持ちを
 素直に行動や口に出して行動できる主人公たちの様子が胸に響く
 のだと思う。最初は彼らをななめに見ていたが、いつのまにか
 そんな彼らにしっかりと感情移入してしまった私は、「そのときは
 かれによろしく」という言葉の温かさに、そしてそこに込められて
 いる気持ちの大きさ、暖かさ、果てしなさに、胸が詰まった。
 寒い冬、暖かい部屋の中で、暖かいストーブの傍で、暖かい飲み物を
 飲みながら読みたくなるお話。そして、読み終えた後、静かに
 大好きな人に思いを馳せたくなる。そんな気持ちにさせられる
 かわいらしい話だった。

33年前の我が家

2009年10月19日 07時48分09秒 | 日常生活
秋の恒例行事となっているJR小倉工場祭り。
おいしい野菜や忘れ物の傘が安く売られていたり
たこ焼きや綿あめなど縁日の王道メニューから、
つきたてのお餅といった縁日では変わり種のメニューまで揃えられていたり
大道芸やブラスバンド、エイサーなどのステージ鑑賞が楽しめたり、
見所、楽しみどころが満載の家族で楽しめるお祭りです。

会場となる小倉工場が我が家のすぐ近くにあるため、
ほぼ毎年、遊びに行っていますが、今年は鉄道ブームのおかげなのか、
グッズ販売や写真コーナーの充実ぶりが目立ちました。
しかも、人の集まり具合も尋常ではなく、今までにない盛況っぷり。

でも、人が集まってくるのも分かる!
だって、集められた資料のどれもこれもがとっても面白いもの!

今はもう使われることのなくなった機材。
かつての駅名を刻んだプレート。
そして、小倉市街を電車が走っていた頃の風景を治めた写真。

それらのひとつひとつに、郷愁を呼び起こされて、
思わず興奮しながら「あの頃」について、語り合ってしまいました。

この写真は、33年前の「我が家」です。
数十年後、この電車の右あたりに「我が家」が建ちます。
写真を見ながら、小倉の町は電車と縁が深かったこと
ワタクシの思い出にも電車が刻まれていることなどがどんどん蘇ってきて
そして、何とも言えない気持ちになりました。

変化はわるいことではないけれど
どうしても寂しさを伴ってしまうものなのかも。

バレリーナの小さな恋/L・ヒル

2009年10月17日 22時18分05秒 | 読書歴
90.バレリーナの小さな恋/L・ヒル

■感想 ☆☆☆☆*
 「小学館」の「小学○年生」シリーズを楽しんでいた私は、
 「まりちゃん」シリーズで「バレエをしている女の子」に憧れた。
 習いたいとまでは思わなかったけれど、バレエをしている女の子が
 主役の物語を見つけると必ず手に取っていたし、飽きることなく、
 頻繁に読み返していた。おそらくバレリーナの衣装やバレリーナ
 特有の優雅な動きが私の中に眠っているオンナノコ心を惹きつけて
 やまないのだと思う。

 この「バレリーナの小さな恋」は「ピンクのバレエシューズ」の続編。
 「ピンクのバレエシューズ」で、イギリスの片田舎にある親戚の家に
 ひきとられたヒロインは、その環境に負けず、独学でバレエの練習を
 続ける。彼女は豊かな自然に感受性を刺激し、バレエの才能も飛躍的に
 伸ばし、有名なバレエ学校への入学試験に合格する。
 ここまでが「ピンクのバレエシューズ」。

 続編にあたるこの話で、彼女は入学したバレエ学校で厳しいレッスン
 を受け始める。勿論、お約束のようにライバルが現れるし、
 嫌がらせも受ける。
 けれど、持ち前の勘の良さと感受性の強さで、めきめきと頭角を現し
 バレエ団への入団を許され、プリマとして認められていく。
 児童小説なので、話は短い。その短い話の中でヒロインが成功して
 いくので気持ちよく読み進められる。その結果、疲れた時などに
 つい手を伸ばしてしまう1冊になっているのだと思う。
 
 ヒロインはどんな状況でもめげることなくバレエに向かい続ける
 強さとバレエへのゆるぎない愛情を持っている。
 けれど、悲壮感を漂わせてはおらず、どこか無理をしているような
 印象もない。「なにくそ!」といったがむしゃらさもない。
 彼女は肩肘をはらず、自然体で過ごしている。だからこそ、そして
 悲壮感を漂わせることなく、軽やかにバレエに向かっているからこそ、
 私は彼女に憧れ続けているのだと思う。

小公女/バーネット

2009年10月17日 22時07分15秒 | 読書歴
89.小公女/バーネット
■ストーリ
 19世紀のイギリス。裕福だが母のいない家庭に育ったセーラ・
 クルーは、実業家でもある父親・クルー大尉の仕事の都合で
 イギリスのロンドンにあるミンチン女子学院に入学。寄宿舎で
 生活することになる。特別待遇となった心優しいセーラは、友人にも
 恵まれ、幸せな生活を送る。
 しかし、11歳の誕生日に、父親の訃報と事業破綻の知らせが
 セーラの元に届き、生活が一転し、屋根裏部屋に住まわせられ、
 女中奉公までさせられるようになる。貧しい暮らしの中でも、
 “公女様(プリンセス)のつもり”で、優しさを失わずに暮らすセーラ。
 ある日、隣の家にインドから富豪が引っ越してきて・・・。

■感想 ☆☆☆
 物心つくずっと前から「ハウス名作劇場」を見て育った(らしい)私は、
 この「小公女」を夕食時に見ていて、いきなり大号泣し、両親を
 びっくりさせたことがある。セイラとエミリー(フランス人形の形を
 したお友達)が羨ましかったし、その影響で、大きくなってもしつこく
 人形遊びをし続けていた。
 それぐらい愛着のある作品で、所有している文庫本の表紙は勿論、
 「ハウス名作劇場」のセイラがイラストで描かれているものである。
 (古本屋でこのイラストを見つけた瞬間、
  手にとってレジに向かってたっけ。)

 というわけで、割と定期的に読み返している作品。
 小さい頃は、読むたびに
 「セイラって、なんて健気なんだろう。」とか
 「セイラって、なんて偉いんだろう。」とか
 「セイラって、なんてかわいいんだろう。」とか思っていたけれど
 今、読み返すと、セイラの印象は以前と少し異なる気がする。

 ・・・もっとも、最後の感想に限らず、私のセイラに対する印象は
 小説というよりもアニメによって築かれた部分が多いわけですが。

 今、読み返すと、セイラは割と強情で、「健気」という感じではない。
 急激に変わった状況に耐え忍んでもおらず、どちらかというと、
 運命に立ち向かい、その状況の中で、負けまいと雄々しく戦っている
 女の子である。
 勿論、優しさも持ち合わせてはいる。けれど、それは先天的なもの
 ではなく、どちらかというと、彼女自身が自分の描いている理想像に
 追いつこうと考えた結果、養った「優しさ」のような印象を受けた。
 彼女はプライドを持って生きているし、プライドを持って理想を
 追い続けている。だから、プライドを傷つける人は許さないし、
 プライドがあるからこそ、無意識に人を見下している部分がある
 ような気がするのだ。
 ただ、それは、この作品が書かれた時代を考えるとしょうがない
 部分も大きいのだと思う。この時代には、確かに「階級差」があった
 のだろうし、その中でセイラは「上に立つもの」だった。
 「階級差がある状態」が普通で、その状態に疑問を挟む余地も
 なかったのだろうと思う。

 最後までアニメとの違和感を抱き続けたものの、その「階級差が
 ある状態」の中で、セイラが自分にできることを考え続ける姿、
 自分に与えられた特権に甘えず、自分自身とその階級を別に捉えて、
 自分自身を高めようとする姿は、とてもかっこよかった。

 ところで、このお話、現代の日本に設定を置き換えてドラマ化
 されるそうです。
 ・・・無理じゃない?
 どう考えても、この話は現代の日本に置き換えられないんじゃない?