のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

流星ワゴン/重松清

2016年02月03日 14時13分54秒 | 読書歴
2.流星ワゴン/重松清

吉岡秀隆◇ストーリ
死んじゃってもいいかなあ、もう・・・と思っていた38歳の秋の夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして、ワゴンの中で自分と同い歳の父親に出逢う。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。人生のやり直しは、叶えられるのか?

◇感想 ☆☆☆☆
ドラマ版の流星ワゴンが大好きだったため、原作も読んでみたくなり、図書館で借りてきました。
原作を読むことによって、改めてドラマ版の脚本のすばらしさ、チュウさん演じた香川さんのはまり具合を堪能できた気がします。香川さんだけでなく、主人公を演じた西島さん、西島さんの奥さんを演じられた井川遥さん、そしてワゴンの運転手、吉岡秀隆さん。原作を読んで、いかにこの人選がぴったりだったか実感できました。

ドラマと原作、どちらも好きでしたが、でもやはり原作を読んで改めて「ドラマの方が好きだったなぁ。」としみじみ思いました。
原作はあくまでも父と子に焦点を当て、そこをじっくりと描いていますが、ドラマでは原作にまったく出ていないチュウさんの奥さん(そして主役、西島さんのお母さん)のことも橋本さんの奥さん、そして西島さんの奥さんである井川さんなど、女性陣にもしっかりと焦点を当て、より一層「人が一緒に生きていくことのむずかしさ」「お互いに大切に思っているはずなのに、なぜかすれ違ってしまう哀しさ」を思い知らされました。

家族だから、近い存在だからこそ、許せなかったり、期待しすぎてしまったり、その結果、思うようにいかずにがっかりしてしまったりしてしまう。厄介な、そして愛しい存在が家族というものなんだろうな、と思いました。

実のところ、最近、少し香川さんの演技が少し苦手だったのですが、このチュウさんがあまりにも破天荒で厄介で不器用で愛しくて、またもや好きな役者さんに舞い戻ってきました。息子がかわいらしくてたまらないのに、どうしても感情を素直に表せなかったチュウさんが息子と同い年になり「家族」ではなく「朋輩(親友?)」として接することによって、不器用なりに素直に自分の気持ちを表せるようになる姿は、チュウさんがあえて息子と同い年の姿で現れた理由としてとても説得力があった気がします。

どんなときも一生懸命で「歴史の流れは変えられない」とどれだけ言い聞かされても、がむしゃらに息子のために、そして仲良くなったワゴンの親子のために泣いてわめいてさわぐチュウさんがとにかく愛しくてたまりませんでした。

・・・あれ?小説の感想、というよりはすっかりドラマの感想ですが、小説もドラマの雰囲気そのままでとてもおもしろかったです。
でもやっぱり、ドラマのほうが好きだなー。どちらもラストには希望がきちんとありますが、ドラマの方が希望の光が大きくて、そこもとても好みです。

1.未成年/イアン・マキューアン

2016年01月15日 20時43分46秒 | 読書歴
今年は細々と読書を復活させます。
去年はスマートフォンを手に入れたおかげで他人様のブログを読み漁ることにはまってしまい、読書にまったく時間が割けなかったのです。今年は1か月5冊を目標に読み進められたらいいな。とりあえず図書館通いは昨年末から復活しました!
久々にじっくり心を落ち着けて、本の中の世界を楽しみます。

1.未成年/イアン・マキューアン

◇ストーリ
輸血を拒む少年と、命を委ねられた女性裁判官。
法廷で様々な家族の問題に接する一方、自らの夫婦関係にも悩む裁判官の元に、信仰から輸血を拒む少年の審判が持ち込まれる。聡明で思慮深く、しかし成年には数か月足りない少年。宗教と法と命の狭間で言葉を重ねる二人の間には、特別な絆が生まれるが・・・。

◇感想
教会友達が貸してくれた本です。貸してくれた時に「この本はのりちゃんと感想を共有したい」と言われたにも関わらず、読み進めるのがきつくて、なかなか読み終わらず、とうとう年を越えてしまいました。きつかった・・・。

中盤までは、宗教って一体なんなんだろう?と思いながら読み進めていました。私はクリスチャンだけれど、敬虔という言葉とはほど遠いクリスチャンです。神様より自分の生活をついつい優先させてしまう、それでいて弱っているとき、辛いときは聖書の言葉や教会の存在に心励まされる。つまり宗教を自分の都合のよいように使っているといっても過言ではない身勝手なクリスチャンです。「神様」を主語にできず、ついつい自分主体で動いてしまう。そんな私にとって、「エホバの証人」である主人公やその家族たちが自分や自分の愛する息子の命よりも神の教えを優先させる姿勢は「よく分からない。でもわかる部分も少しある気がする。でも、やっぱり分かりたくない。分からない」という身近なような、まったく理解できないような存在でした。畏怖の対象、という言葉が少し近い気がします。

私は宗教というものは人が生きることを応援するものであるべきだ、と思います。
人が生きていくうえで、心の支えになるものだと思っています。
「生きる」ことを阻むものであってはいけない、と思っています。
そうあってほしい、と思っています。

世の中にはいろんな宗教があって、私は、それらの宗教を否定するつもりは毛頭ないし、できることならば他の宗教を信じる人たちともお互いに尊重し合い、いつくしみ合って生きていきたい、そう願っているけれど、それはその宗教が人の命を大切にしていることが大前提だと思っています。
信じる人の理解が足りなくて、つい自分の命を粗末にしてしまう、そんなこともあるかもしれないけれど、でも宗教には「生きよう」と声高に言ってほしい、と改めてそう思いました。

ただ、読み終えて一番強く心に残ったのは「誰かにかかわること」の怖さと支えを失った人のもろさでした。
誰かに関わるのであれば、中途半端はよくないし、覚悟を決めて、真摯に向かい合うべきだ、と思わされました。そして、そういった覚悟がない自分の弱さをずっと突き付けられながら読み進めました。私が主人公であっても、きっとこの小説のヒロインと同じように少年と向き合うことができず、それを大人のずるさでごまかしていただろうな、と思うと、やりきれなくなりました。

人が生きていくには支えが必要なのだ、と改めて思いました。
支えとなるものは宗教であってもいいし、自分にとって大切な誰かの存在であってもいい。なんでもいい。
けれど、それを失った人間はこんなにももろいのかと哀しくなる物語でした。今もまだもやもやしています。

2015年3月の読書

2015年05月12日 01時08分29秒 | 読書歴
今頃ですが、3月の読書について。
私にしては珍しく、割に新しい作者さんと出会った楽しい読書月でした。

20.タイム屋文庫/朝倉かすみ ☆☆

初恋のオトコノコ、吉成君の来店を待つ貸本屋のお店、「タイム屋文庫」。時間旅行を題材にした本のみを置き、そこでゆっくり時間を過ごす客は自分自身の過去や未来と出会えると言う。そんなお店を始めた考えなしで抜け作の三十女・柊子。彼女の初恋のつづきの話。
まるでおばあちゃんちを訪れたようなゆったりのんびりとした時間を過ごせる貸本屋。我が家の近くにもこんなお店があったらいいなぁ、と思わせてくれるお店でした。ただ、主人公の恋の話は色々とあっさり。こんなふうにすぐ傍に素敵な男性がいました、なんて展開は現実にはなかなかないんだよー、とトウのたったヒネクレモノのアラフォー女は思いました。

21.何者/朝井リョウ ☆☆☆*

就職活動の情報交換をきっかけに集まった、拓人、光太郎、瑞月、理香、隆良。学生団体のリーダー、海外ボランティア、手作りの名刺、などで懸命に自分を鼓舞し、就職活動に立ち向かう大学生たち。彼らは就職活動を無事に終え、「何者」になれるのか。生きているという実感が味わえる職業は何なのか。必死にもがく就職活動中の大学生の話。最初から最後まで痛くて痛くて痛くて痛くてやりきれなくなるお話でした。SNSが日常的なツールになっている今、ツイッターでフェイスブックで自分の日常を発信し、思いを吐露し、自意識と向き合い続けなくてはならない今の若者は大変だな、としみじみと思いました。人とつながりあうことが普通になりすぎていて、そのつながりにがんじがらめになっている彼らはとても窮屈そうで、もっと自由になっていいんだよ、と心から思いました。すぐ隣にいる人の楽しそうな日常が見えてしまうからこそ、増大していく不安と戦わなければいけない彼らは私が学生時代の頃よりももっともっと心の強さを求められるんだろうな。これからの若者はもっともっと大変な時代を生き抜かなきゃいけないんだろうな、と心重くなりながら読み終えました。


22.幸福な日々があります/朝倉かすみ ☆☆

森子46歳。祐一(モーちゃん)49歳。結婚生活10年を迎えた元日の朝、森子は静かに離婚を切り出す。平穏で幸福な結婚生活が続いていると思っていたモーちゃんは、どうしても離婚を納得できない。10年前と今を交互に描くことで、平穏に見えたこの10年間の至るところに別れの予兆があったこと、小さな違和感がやがて決定的な決裂につながることが描かれます。誰もが羨む幸せな結婚に満足しようとしたヒロイン。そして、妻が小さな我慢を重ねているなんて思いもよらない鈍感な夫。
10年で少しずつ少しずつすり減り疲弊した森子の気持ちはなんとなくわかりました。相手を思いやっているように見えて、自分のわがままを貫く身勝手な夫との結婚生活は一見、幸せそうに見えて森子の我慢によって成り立っていたことも理解できました。それでも私はモーちゃんがかわいそうでなりませんでした。森子の我慢によって成り立っていた結婚生活は森子が我慢できなくなったことで崩壊します。でも、どうせ我慢できなくなるのであれば。離婚を切り出さずにいられなくなるのであれば。モーちゃんにもわかるようなはっきりとした予兆、不穏を用意してあげればよかったのに、と思わずにはいられないのです。そもそも我慢なんてせずに、都度都度、自分の思いをぶちまけてくれればよかったのに。幸せだと信じていた結婚生活を唐突に取り上げられるほうがよっぽどダメージが大きいのに。と、モーちゃんの鈍感さに自分と似たところを感じていた私は、彼にものすごく偏った肩入れをしながら読んでしまいました。

23.半熟AD/碧野圭 ☆☆*

番組制作会社の元AD、田野倉敦。バラエティ番組のやらせが原因で会社を首になった二十七歳。仕事を探すも見つからない彼は、同居人の先輩に強引に引き込まれ、一般人相手の映像制作会社を手伝うことになります。不本意な仕事ばかり舞い込む彼のもとに、ある日、天才的な歌声を持つ少女が現れて・・・。深いこと考えずに楽しく爽やかに読み終えられるお話でした。ドラマ化に向いてそうな気がするのになー。迷惑な先輩にはぜひぜひ田辺誠一さんを推したいです。でもって、ひきこもりの美少女歌手には、高畑充希さん。ぴったりだと思うんだけど。ぜひぜひドラマ化お願いします。

24.格闘する者に○/三浦しをん

マイペースに過ごす女子大生可南子にしのびよる苛酷な就職戦線。漫画大好き。だから、漫画雑誌の編集者になれたらいいなあ。でいざ、活動を始めてみると思いもよらぬ世間の荒波が次々と襲いかかってくる。
と、いうわけで、これまたシューカツ小説です。でも、「何者」とはまったくテイストが異なるお話でした。登場人物たちがみんな呑気者で、ぎすぎすしておらず、この人たちとなら友達になれるなー、なれたらいいなー、友達になってほしいなー、と思いながら読み進めました。シューカツにも人となりって出るんだなー、と思いました。おそらくこのお話のヒロインもヒロインの友人たちも就職を人生の大事なステップだと認識してはいるけれど、それに人生すべてを左右されるほどの重みを見出してないんだろうなぁ、と思いました。その軽やかさがとても魅力的でした。やっぱり肩に力が入っていないってとても大事な気がします。


25.森崎書店の日々/八木沢里志   ☆☆*
26.続・森崎書店の日々/八木沢里志 ☆☆*

交際を始めて1年になる恋人から、突然、「他の女性と結婚することになった」と告げられた貴子は、深く傷つき、会社を辞めた。恋人と仕事をいっぺんに失った貴子は、叔父のサトルの経営する「森崎書店」という古書店を手伝うことになる。本に囲まれ、人に囲まれ、貴子はやがて自分を取り戻していく。
後味は悪くないし、古書店が舞台の作品というのも大好きなのです。でも、どうにもこういう作品、読んだことある気がする!的なデジャブが強く、今ひとつ作品に入り込めませんでした。どうやら映画化されている模様。雰囲気はとても好きなので映画作品も見てみたいな、と思いました。
続編のほうも、やっぱり「あれ?こういう話、読んだことある気がする・・・・」的なデジャブにやっぱり襲われました。嫌いじゃないんだけどなー。むしろ、好きなんだけどなー。


27.夜を守る/石田衣良

上野・アメ横。冴えない青春を送る四人が、街を守るために立ち上がった。
ぶらぶらしているフリーターのアポロ、実家の古着屋を手伝っているサモハン、役所勤めのヤクショ、頭がちょっと弱く施設暮らしの「天才」。4人は夜回りを行い、遭遇した事件を地道に解決に導いていく。

さくさく読めて、読み終えた後に心があったかくなる話でした。おもしろかったし、元気になりました。この作品こそ、ぜひぜひドラマ化してほしいなー。IWGPはもはや続編のドラマ化はキャストがまったく集まらないと思われるので、ぜひぜひこちらの作品のドラマ化ご検討をお願いします☆

28.ハルカ・エイティ/姫野カオルコ

大正に生まれ、見合い結婚で大阪に嫁ぎ、戦火をくぐり抜け、戦後の自由な時代の波に乗り、たくましく生きていくハルカ。人生の荒波にもまれつつも、平凡な少女は決して後ろ向きになることなく、戦後にその魅力を開花させていく。
戦争を描いてはいるものの、軽やかな作品でした。それはきっとハルカの魅力が大きく影響しているんだろうな。と、思っていたら、ハルカのモデルとなって作者の伯母さんのリクエストだったようです。戦争中のことを描くからといって、何から何まで辛気臭く描かないでほしい。あの頃はあの頃なりに楽しいことがあった、というスタンスは向田作品のヒロインたちと重なるな、と思いました。本文がとても軽やかだっただけに、あとがきで「戦争を知らない世代が戦争を描くことの覚悟と責任感」について書かれている文章は、とても力強く、作者の覚悟を実感しました。

2015年2月の読書

2015年03月01日 01時09分14秒 | 読書歴
久々に本を購入しましたが、やっぱり本は何度も読み返すぐらい好きな本を購入したいな、と心から思いました。つい帯文句につられてふらふらと購入してしまったけれど。初読本の購入は冒険すぎました。しょんぼり。

12.風が強く吹いている/三浦しをん ☆☆☆*

→三浦さんの小説を読むたびに、随筆との作風の違い、選ぶ言葉やテンションの違いっぷりに目を白黒させられます。同一人物なんだよねぇ・・・。不思議。根強い人気がある箱根駅伝ですが、あの2日間のために1年を過ごしていると言っても過言ではない人たちがたくさんいるんだということが分かり、私の世界も広がりました。来年は箱根駅伝をもう少し真剣に見ようと思いました。

13.王妃の館(上)(下)/浅田次郎 ☆☆☆

→浅田さんお得意の「困ったちゃん(だけど全然憎めない)」がたくさん出てくる話ですが、読み終わった後にあったかい気持ちになりました。人は期せずして誰かに支えられているし、自分が意識していないところで、誰かを支えていることもある。はるか昔に完成したレシピが今も受け継がれていて、旅人たちの心身をあたためることもある。人生にそうそう奇跡は起きない、と私は思っていますが、でも、こういう思ってもいなかったような人たち(たとえば時代や場所を超えて)誰かの行動が誰かに影響することは確かにあるかもしれない、と思うし、それはすごく奇跡的なことだな、と思いました。

15.その女アレックス/ピエール・ルメートル ☆

→久々に購入した本。「驚愕のミステリー。この結末をあなたは決して予測できない。」というようなあおり文句に見事あおられました。確かに私にはまったく予測ができない結末でした。気持ちよく黙れされました。けれど、おそらく二度と読み返すことはないだろうなー。それぐらい描写が陰惨でした。今も思い返すだけで気がめいるような描写にかなりのページ数が割かれていた気がします。読み続けるのが辛かった・・・。実写化はまずできないだろうな、と思うし、実写化は絶対にしてほしくないかな。おそらく、どうしてもこの本を好きになれないし、読み返すこともないだろうな、と思ったのは、私がアレックスに感情移入しすぎたせいもあるんだろうな、と思います。

16.100万回の言い訳/唯川恵 ☆☆

→久々に恋愛小説を読みました。うーん。うーん。私には夫婦の心情はよく分からないけれど、でも、これが夫婦のありようだとすると、とてつもなく寂しい関係だな、と思いました。難しいなぁ、夫婦って。

17.ミーナの行進/小川洋子 ☆☆☆☆

→美しくて、かよわくて、本を愛したミーナ。あなたとの思い出は、損なわれることがない。ミュンヘンオリンピックの年に芦屋の洋館で育まれた、ふたりの少女と、家族の物語。

という帯文句に心惹かれ、借りた本です。帯文句を読んで期待していた通りのお話でした。小さい頃には気付かなかったささやかな日常が時を経て思い返されることで、きらきらと輝き、宝物のような日々となっていく。あの頃にはすごく幸せだったことにすら気付かなかった「当たり前」の日常にひそんでいた喜びや幸せに時を重ねて気付いている主人公の回想録を読んでいると、改めて時を重ねるということは悪いことじゃないな、と思えました。
記憶に残る夏休みのささやかでありふれた、けれど幸せに満ちた一日を思い返し、思い返すたびに「全員そろっている。だいじょうぶ。誰も欠けていない。」と繰り返すヒロイン。幸せだったあの一日を思い返すことで励まされる。そんな一日を持っているヒロインを心から羨ましく思いました。

18.ヒア・カムズ・サン/ 有川浩 ☆☆☆

→演劇集団「キャラメルボックス」とのコラボ作品。舞台とはまったくの別物だと書かれていましたが、それでもキャラメルらしいまっすぐさ、愛情に満ちた作品でした。キャラメルの作品はいつも登場人物が誰かのことをまっすぐに思っていて、そのまっすぐさに私は心惹かれるんだろうな、と思いました。今回の有川さんとキャラメルのコラボ作品は、誰かをまっすぐに思い続ける登場人物がいるところは、いかにもキャラメルらしく、けれど、そのまっすぐさを素直に表現できずに空回りしてしまうところが有川さんらしさなのかな、と思いました。

19.八月の六日間 / 北村薫 ☆☆☆*

→清潔感漂う素敵な作品でした。私は彼の言葉の選び方、場面場面のつなぎ方がとても好きなんだな、ということを改めて実感しました。出てくる登場人部がみなとてもすてきです。

20.タイム屋文庫/朝倉かすみ   読書中

2015年1月の読書

2015年02月04日 23時51分59秒 | 読書歴

1.隠し剣秋風抄/藤沢周平 ☆☆☆
2.隠し剣孤影抄/藤沢周平 ☆☆☆
3.花のあと/藤沢周平   ☆☆
4.蝉しぐれ/藤沢周平   ☆☆☆

→昨年末から藤沢周平さんにはまりました。
時代に、剣の力に、そして武士社会の家制度や人間関係に翻弄される主人公たちのほろ苦い人生に胸を痛めながら年末年始を過ごしました。幸せってなんだろう、と思わずにはいられないほろ苦い結末が多くて少し参ってます。次はザ・エンタメ!という感じのスカッと爽快、単純明快な作品に触れたいなー。

5.夜の光/坂木司     ☆☆☆

→藤沢先生のほろ苦い世界観に浸りすぎた反動で、優しい柔らかい世界を求め、坂木さんにたどり着きました。さくさく読みやすい。そして、登場人物たちがみな優しい。坂木さんの作品を読んでいると、自分の猛々しさを素直に反省したくなります。

6.先生と僕/坂木司    ☆*
7.切れない糸/坂木司   ☆☆

→クリーニング屋さんのお話。業界モノは、異業種交流会に参加しているような面白さが満載で大好きです。私は何の気なしに(まったく深く考えることなく)今の仕事を選んだけれど、仕事が違うと生き方もまるで異なって来るんだなぁ、ということを他業種のお話を伺っているとしみじみ思うのです。

8.三匹のおっさん ふたたび/有川浩  ☆☆*

→大好きな「三匹のおっさん」の続編。1冊目は単純明快な勧善懲悪ものですっきりする話ばかりでしたが、2冊目は今の世の中を反映しているからなのか「すっきり気持ち良い終わり方」のお話が少なかったような気がします。ちょっぴり消化不良。

9.田村はまだか/朝倉かすみ ☆☆☆☆

→一度読んだにも関わらず、そして、「あぁ。好きだな、この話。」と心を温められた記憶があるにも関わらず、話の詳細をこれっぽっちも思い出せなかったため、再読。やっぱり好きでした。何度読んでも好きな作品は好き。毎日を丁寧に地道に生きるっていうことは簡単なようで難しくて、難しいくせに軽んじられがちで、でも、それでも地道に生きれる人、大切なことや大切な人を大切にし続けられる人は強いんだな、と思いました。
地道に丁寧に、大切なものを見失わずに生きた田村も愛しいけれど、小学校卒業から(おそらく)20数年が経過しているのに、クラス会の二次会で「田村はまだか?」と田村を待ち続ける40代のかつてのちびっこたちもたいがい愛しいな、と思いました。

10.煙とサクランボ/松尾由美 ☆☆☆

→バーの片隅で生きる幽霊のお話。思っていたよりもかなりビターな雰囲気で、ドラマ化したら、面白そうだな、と思いました。主人公の幽霊は柴田恭平さいいか、もしくは水谷豊さん。ヒロインは、倉科カナちゃんかな。ちっこいかわいらしい感じがぴったりだと思うんだけどな。そして、幽霊に動じることなくすんなり受け入れちゃう(でも、かなりヒネクレモノの)バーのマスターは、ぜひ金子ノブアキさんにお願いしたいです。・・・見たいなー。

11.霧島、部活やめるってよ/朝井リョウ ☆☆☆*

→映画化までされたかつての話題作にようやく図書館で出会えたので喜び勇んで借りてきました。面白かった!そして、今を生きる若者たちがあまりにも窮屈な世界で生きているので、もの悲しい気持ちになったお話でもありました。特に1月前半、藤沢先生のお話を読んでいたので、余計に質の異なる息苦しさを感じたのかもしれません。藤沢先生が描く作品世界の時代と比較すると、私たちは格段に自由に生きられるようになったのに。みんなが目に見えない檻や空気感と言う得体のしれないものと戦って生きている。大変な時代になったなぁ、としみじみ考えさせられました。


---- 2月の読書 ---------------

12.風が強く吹いている/三浦しをん ☆☆☆*
13.王妃の館(上)(下)/浅田次郎 (読書中)

2015年1月の読書

2015年01月17日 22時54分44秒 | 読書歴
昨年末から藤沢周平さんにはまりました。
時代に、剣の力に、そして武士社会の家制度や人間関係に翻弄される主人公たちのほろ苦い人生に胸を痛めながら年末年始を過ごしました。幸せってなんだろう、と思わずにはいられないほろ苦い結末が多くて少し参ってます。次はザ・エンタメ!という感じのスカッと爽快、単純明快な作品に触れたいなー。

1.隠し剣秋風抄/藤沢周平 ☆☆☆
2.隠し剣孤影抄/藤沢周平 ☆☆☆
3.花のあと/藤沢周平   ☆☆
4.蝉しぐれ/藤沢周平   ☆☆☆
5.夜の光/坂木司     ☆☆☆
6.先生と僕/坂木司    ☆*
7.切れない糸/坂木司   ☆☆
8.三匹のおっさん ふたたび/有川浩  ☆☆☆ ※読書中※

2014年3月の読書

2014年04月11日 23時03分25秒 | 読書歴
充実の3月。
いろんな分野の本を読むことができました。
以前はノンフィクションがとことん苦手だったのになぁ・・・・。
4月はナルニアやドリトル先生など、児童書を読み返したい気分です。

14.アカネちゃんのなみだの海 ~モモちゃんとアカネちゃんの本(6)~/松谷みよ子

□感想 ☆☆☆☆☆
何度も何度も何度も読み返してしまう大好きな童話を久々に読み返しました。何度読み返してもまったく色あせることなく楽しめます。30年かけて完結篇にたどりついた「モモちゃんとアカネちゃん」シリーズ。ずっとずっと一緒に育ってきたから、折に触れ、読み返してきたから、モモちゃんもアカネちゃんも猫のプーも双子の靴下のタッタちゃんとタアタちゃんも、私の中では「おさななじみ」のような思い入れがあって。だから、このシリーズ最終作を読み返すたびに、どうかどうか、ふたりがプーやタッタちゃん、タアタちゃんたちといついつまでも幸せに暮らせますように。大きくなったからといって、彼らとお別れすることがありませんように。と願わずにはいられないのです。

15.東條英機の妻・勝子の生涯/佐藤早苗

□感想 ☆☆☆☆
なぜか義務教育期間を平和教育に力を入れている学校で過ごしてしまったためなのか、「戦争もの」やこの時代に関連する作品に触れるのがとても苦手になってしまいました。夏休みになると必ず反戦映画を学校で見たせいなのか、「戦争」→「悲しい」→「辛い」→「つらすぎる」→「近寄りたくない、味わいたくない」という感情の方程式が無意識で発動してしまうのです。とはいえ、「戦争」=「絶対に繰り返してはならないもの」だと刷り込まれてはいるものの、刷り込まれている割には、あの時代の背景やあのとき何が起こっていたのか、という客観的史実をあまりに知らなさすぎるので(ということにも大人になってから気付いたわけですが。)年に一度ぐらいは自発的にあの時代のルポを読もう、と心がけるようにしています。
読むたびに、私はこの時代のことを本当に何も知らないし、あの時代の空気感を本当には実感できないんだろうな、と改めて思います。きっと、あの時代を生きた人にしか理解できないことがたくさんある。けれど、それでも、私は分からないなりに、あの時代のことをきちんと知っておくべきだし、そうすることで、あのときは「避けて通れなかった時代の流れ」を私たちの「明日」に生かせるにちがいない、と祈るように思います。
戦争を引き起こすのは、「特定の誰か」ではない。いろんな要因が絡み合って、いろんな人たちの思惑やその時代特有の思想が絡み合って、引き起こされてしまうことがある。そのうえ、それらの思想の根っこにあるのは、あったのは、その人たちなりに日本という国の未来を思ってのことだったんだろうな、ということを考えさせられる本でした。

16.夜のピクニック/恩田陸

□感想 ☆☆☆☆☆
ウォーキングにチャレンジするようになってから、ずっとずっと「読み返したい!いや、読み返さねば!」と思っていた本です。100キロウォーキングへの憧れを私に植え付けてくれた本です。久々に読み返して、やっぱり好きだなぁ、としみじみ思いました。そして、今更何をどうあがいても詮無いことではあるものの、主人公たちと同じ頃、思春期真っ只中でこの作品に出会いたかったな、できれば100キロウォーキングも高校時代に友人たちと体験してみたかったな、と思いました。

17.しきぶとんさん、かけぶとんさん、まくらさん/高野文子

□感想 ☆☆☆☆
ひとめぼれして即購入した絵本。家に帰りついて読み、「ほら!わたしのひとめぼれに間違いなし!」とほくほく笑顔になりました。七五調のリズム感あふれる言葉の並び方、選び方は声に出して読むとより一層、楽しめます。お気に入りのフレーズは「まかせろ。まかせろ。おれにまかせろ。」大好き!買ってよかった!!大満足の一冊です。

18.「助けて」と言える国へ/茂木健一郎・奥田知志

□感想 ☆☆☆☆
おもしろかった!そして、非常に説得力ある言葉、説明にあふれた本でした。
私がもっとも「その通りだなぁ」と思ったのは、「「私」という主語だけで生きていると、しんどくなってしまう」という部分でした。たとえば、『私』は自信がなくても、「あの人が言ってくれるんだったらやってみよう」ということがあってもいい。それが「他者性」というものであり、「信仰」なのだと書かれていて、なるほど、と目からうろこがおちたような気持ちになりました。私たちは今、とても豊かで恵まれた社会に生きているはずなのに、なぜか社会全体に閉塞感が漂っていて、この空気感の中、私たちはこれからどう生きるべきなのか、何を信じて行動するべきなのか、といったことを考えさせられる本でした。

19.片想い百人一首/安野光雅

□感想 ☆☆☆
久々に百人一首読み返したいわー、と思い、借りた本。ちょっと思っていたような解釈本とは異なっていて、百人一首を起点として、そのほか様々な和歌を楽しむ本でした。日本語って美しいなぁ、としみじみ思いました。31文字でこんなにも豊かに自然を湛えたり、恋心を切々と訴えたり、文字と文字の間、余白に多くの感情を込める日本人の感性って本当に好きだなぁ。

好きだなぁ・・・と思った作品(歌)をいくつかメモ。
 冬ながら そらより 花の散りくるは くものあなたは はるにやあらむ/清原 深養父
 しなばやと あだにもいはじ のちの世は おもかげだにも そはじと おもへば/俊恵法師
 置くと見し 露もありけり 儚くて 消えにし人を 何にたとえん/和泉式部
 もろともに 苔の下には 朽ちずして 埋もれぬ名をぞ 見るぞ悲しき/和泉式部
 みな人の 知りがほにし 知らぬかな 必ず死ぬる ならひありとは/前大僧正恵円
 あはれなり わが身のはてや あさ緑 つひには 野辺の露と思へば/小野小町

20.ホントのこと言えば?/佐野洋子対談集

□感想 ☆☆☆
佐野洋子さんと様々な方々(大竹しのぶさんや明石家さんまさん、岸田今日子さん、谷川俊太郎さんなどなど錚々たるメンバばかり!)との対談集。本当に男っぽいさばさばとした、でも実は情の深い女性だったんだな、ということがよく分かる対談集でした。好きなんだけど、というよりは心から憧れる人。でも少し苦手意識を持たずにはいられない人。コンプレックスを刺激される人、でした。

21.ゆんめでて/畠中恵

□感想 ☆☆☆☆
「しゃばけ」シリーズ。図書館で見かけるたびに借りてしまう。なんといってもお気に入りは「家鳴り」(小鬼さん)。
やなりー!!かわいいー!!ときゅんきゅんしながら読みました。今、私がもっとも飼いならしたいペットはまちがいなくやなりです。私の袖の中に入って来てくれるんだったら、いつでも金平糖とかだし巻き卵とかいれておくんだけどな。
と思いながら読み進めていたら、想像以上に切ない辛い結末で、何とも言えない気持ちになりました。体が弱くて、いつも死と隣り合わせの毎日を生きている若旦那。だからこそ、身近な人(ではないけれど。あやかしなんだけど。)との別れを必要以上に怖がってしまう。彼らとずっとずっと一緒に暮らしたい、と願う若旦那の気持ちは痛いほどわかるけれど、その未来を選んだがために「出会わなかった人、出会えなかった人」との出会いも、その後の幸せな記憶もすべて消えてしまう。人が経験できることには限りがあると分かっていても、出会えなかった運命の恋のことを思ってせつない気持ちになりました。

22.PK/伊坂幸太郎

□感想 ☆☆☆☆
伊坂さーん!!と作者さんの手を取ってあらん限りの力を込めてぎゅっと握りしめたい!ハグをしたい!!という気持ちに襲われた作品でした。おもしろかったー!読みながら、大好きだったドラマ「セクシーボイスアンドロボ」で浅岡ルリ子さんが語った言葉を思い出さずにはいられませんでした。「そうよ。あなたは誰かに対して絶対に影響を与えている。人はどうしようもないほど関わりあってるのよ。」私の言動や存在は、自分のあずかり知らないところで、必ず誰かの人生に影響を与えている。それは悪いことばかりではなく、巡り巡ってこの作品のような奇跡を引き起こすこともある。誰かが誰かの人生に関わって生み出された、小さな宝石のようなかわいらしい奇跡に胸が熱くなりました。そんな小さな奇跡が無数にある(に違いない)この世界が私はやっぱり好きだなぁ、と思いました。

23.とびらをあけたメアリー・ポピンズ/P・K・トラヴァース

□感想 ☆☆☆☆☆
これまた、何度読み返したかわからない作品を久々に再読。子どもに媚を売らないメアリー・ポピンズがやっぱり大好きです。ぶっきらぼうでうぬぼれやで自分に自信があって、自分大好きな人。世の中に「見えないけどあるもの」がたくさんあることを知っている人。「見えないけどあるもの」と大人になっても親密な関係を築いている人。私は彼女と会って、世の中にはわかりにくい優しさがあるんだということを知りました。

24.はるひのの、はる/加納朋子

□感想 ☆☆☆*
「ささらさや」「てるてるあした」に続くシリーズ第三弾。一冊一冊が独立しているので、この一冊で十分に楽しめます。だけど、知っていたほうがその10倍は楽しめます。あのユースケくんがこんなに大きくなっちゃって。と感慨深い気持ちになった作品でした。「ささらさや」から一貫してテーマとなっているのが生と死。「ささらさや」から読み返したくなっちゃったなー。

2014年2月の読書

2014年03月01日 23時11分31秒 | 読書歴
久々に小説を読みました。面白かったな。
やはり私は基本的にノンフィクションより、フィクションが好きなんだよね、としみじみ思いました。
と、言いつつ、今月も小説少なめです。

6.小暮写真館/宮部みゆき

■感想 ☆☆☆*
久々に小説を読みました。宮部さんの作品は、本当に登場人物が暖かく、奇をてらわず、まっとうに人に寄り添ってくれるので、「小説読むには少し疲れてるんです。」という今の私の状態にも穏やかに寄り添ってくれました。登場人物たちがみなお互いにお互いを思いやりあっていて、その描写がとても居心地の良い作品でした。悲しみや傷を抱えているのに、その痛みに囚われず、前を向く主人公の両親の強さに心を打たれました。彼何が大切なのかを迷わない強さ、「大切にする」と決めたものを守るためにしがらみを断ち切る潔さが素敵な両親でした。それだけに、それほどの強さをもってしても、今なお痛みを「過去の出来事」にできず、ふとした拍子にその悲しみを見せる両親、特に母親の描写は胸に迫ってきました。いつもは、飄々とした明るさで包み込んでいるからこそ、余計に胸が痛くなってきました。
主人公の家族もお互いを思いやり、いたわりあっていたけれど、主人公の友人も、お世話になった不動産やさんの店主も、傷ついている主人公たちにそっと寄り添う姿が素敵でした。

7.鍵のない夢を見る/辻村深月

■感想 ☆☆☆
読んでいる間中、普段目をそらしている自分の中のエゴや自意識過剰な部分を突き付けられているようで、「わぁーっ。」と叫びだしたい気持ちになりました。「わかるなぁ。」と思う気持ちと、「わかりたくないなぁ。」と思う気持ち、「私にもこういう部分、あるわ。」と思う気持ちと、「でも、ここまでではない気がする。」という気持ち。そんな気持ちが混ざり合って、ごちゃごちゃになり、紐解くのが大変でした。読み終えたときには、疲れ果てていた気がします。どんなに否定しても、女性にはこういう部分があるんだろうなぁ、と思いました。少なくとも、私にはあるなぁ、と思いました。認めたくないけれど。

8.ふしぎなキリスト教/橋爪大三郎・大澤真幸

■感想 ☆☆☆☆
おもしろかったー!そして、とてもわかりやすかったー!
わたし、曲がりなりにもクリスチャンの端くれだというのに、色々と「そういうことかぁ。」と納得しながら読みました。なんとなく理解していたけれど、改めてすっきり整理できたかな。「キリスト教」という宗教がなかなか日本という国に馴染まない理由も分かった気がします。「キリスト教は結局、自分が『信じる』と選んで行動を起こすことを求められる宗教なんだ」という部分に「そうなんだよねぇ。」と深く頷きました。

9.梅咲きぬ/山本一力

■感想 ☆☆☆
深川の料亭「江戸屋」の女将である四代目秀弥の成長譚。きりりと背筋を伸ばして、前のみを見る秀弥がとてもかっこよく、それでいて義理人情を大切にする姿に今の日本には失われた人のぬくもりを思いました。自分にも他人にも厳しい。けれど、自分のための損得勘定を一切せずに周囲に気を配り続ける。「自己責任」ではなく、「お互い様」。面倒なしがらみも多いし、今以上に大変だったんだろうな、この時代の人たちは、とも思うけれど、でも、やはりご近所さんのこういった繋がりは必要だったんじゃないかな、と思いました。
ヒロイン、秀弥が人生をかけたたったひとつの恋が迎えた結末が切なくて、他人事なのに(そしてフィクションなのに)胸が痛くなりました。お互いに思いあっていても、そして、お互いに思いあっていることが分かっていても、報われない。寄り添うことができない。その切なさを思うと、「人生をかけた恋」になんて、出会わないほが幸せなのかもしれない、と思ってしまうのです。

10.たてつく二人/三谷幸喜・清水ミチコ
11.かみつく二人/三谷幸喜・清水ミチコ

■感想 ☆☆☆
仲良し二人組のラジオ番組を構成しなおしたもの。活字なのに、ふたりの息の合った掛け合いが聞こえてきました。実際に聞くと、なお一層面白いんだろうなぁ。関東の人たちが羨ましい・・・と心底思いました。(・・・あれ?もしかして、福岡でも聞けるのかしら?)

12.古道具ほんなら堂/楠章子

■感想 ☆☆☆*
無愛想な大人が媚を売ることなく、でも、決して突き放さず、その人が一番必要としているサポートをそっと(わかりにくく)行う。そんな話が大好きです。おそらく、この人物像の原点は、私にとってメアリー・ポピンズ。ついつい、「分かりやすい優しさ」に目を奪われてしまうけれど、私はぶっきらぼうに、わかりにくい優しさで誰かの傍に寄り添えられる人に憧れます。そういう優しさにきちんと気付ける人になりたいな、と思います。

13.インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日/中村安希

■感想 ☆☆☆
ユーラシア・アフリカ大陸を旅した684日間の記録。「旅先で何をしたか」ではなく、「旅先でどんな出会いがあったか」に的を絞って、描写しています。あまりにも日本と異なる生活様式に、世界は広いという当たり前のことをしみじみと思いました。けれど、別世界のように思えるこの国の人たちの生活も、私たちと関わっているのだということを、今更ながらに知りました。「先進国」と呼ばれる国々の「支援」がアフリカをどんどん変えていく。良かれと思っての支援だけれど、その「良かれ」という判断は、先進国の人たちの価値観による判断で、結局は、何が幸せなのか、どうかかわりあって、どう支えあうのが正しい姿なのか、それ分からないし、「みんなが幸せ」という世界を作るのは本当に難しいんだろうな、と思いました。
人と人とのかかわり方に正解なんて、きっとないのだと思います。けれど、私は彼女が国際協力に関して書いた「評価されない小さなことを謙虚な姿勢でやっていく。もっともっと評価されずに、それでも淡々とやっていく。」という文章に共感しました。そうかもしれないな、と納得しました。日本は常々、国際社会での立ち回りが下手だといわれてきたけれど、それって素敵なことなんじゃないかな、と思いました。支え合うことに他の国々の評価や、国と国のパワーバランスの変化は必要ない。そう思いました。
私はあまりにも世界のことについて、無知すぎるし、無関心すぎるんだな、ということを実感できた本でした。

2014年1月の読書

2014年01月31日 23時55分22秒 | 読書歴
2013年後半から心がざわついているせいか、じっくり本と向き合えず。
2014年1月も5冊からのスタートです。

本をじっくり読めるか、読めないか、が、私の心の元気を測るバロメーターなのですが
それでいうと、弱っていること甚だしいのです。自覚はあまりないんだけどな。
でも、ドラマもあまり見ていないし!
(あくまでも当社比。世間一般的にはとても見ているほうだと思われます。)

はよ心を落ち着けて、本やドラマと向き合いたいものです。
がんばれ、わたし。(←他人事)

1.ガソリン生活/伊坂幸太郎

■感想 ☆☆☆☆
なんとも愛すべきマイカー小説でした。「マイカー小説」というジャンルを見事確立させてました。ぜひとも続編を出してほしいよ!と熱望せずにはいられない作品でした。

 主人公は望月家のマイカー、緑のデミオ。彼目線で物語が描かれるため、事件に巻き込まれた望月家やその周辺にいる面々の行動をすべて知ることはできません。彼が知り得るのは、持ち主たちが車に乗っていたり、車のすぐ傍で立ち話をしていたり。「さあ、ここからが事件の核心部分!」と思っても、持ち主たちが車を出てしまうと、その核心部分を聞き逃してしまう。かと思えば、車同士のネットワークで人間が知り得ない情報を車たちから得ていたり。けれど、その情報を望月家の面々にはまったくもって伝えれなかったり。そういった「不完全」なストーリー軸があって、その隙間を縫って、いろんな小さなエピソードがちりばめられていて。なおかつ、「散りばめられていたエピソード」が見事な伏線で、クライマックスに向けてすべての謎が回収されていくさまを感嘆しながら読み進めました。すごいカタルシスだったなー。

 ユーモアあふれる語り口でしたが、描かれている現実は決してユーモア交じりではなく「世の中には分かり合えない人間がいる」というもので、やりきれなさの残る作品でした。やりきれない、けれど、実際に起こりそうな事件。だからこそ、ラストにデミオを待ち受けていたあたたかい運命に胸が熱くなりました。

2.復活の日〜ありふれた生活8〜/三谷幸喜
3.さらば友よ〜ありふれた生活9〜/三谷幸喜

本読むのがきついわー、でも、文字に触れたいわー、というときに必ず頼ってしまう三谷さんのエッセイ。彼のどんなときもユーモアを忘れないサービス精神が大好きです。この2作は映画「ザ・マジックアワー」の宣伝活動でテレビによく出ていた頃から、三谷さん生誕50周年に向けての活動が始まるか始まらないか辺りまで。本当によく働いている人だなぁ、と感嘆します。そして、そんなに忙しいにも関わらず、好きな映画もよく見返していて、何をどうやったら、そんな時間をひねり出せるのかしら?と自分の時間の使い方の下手さ加減を呪いたくなります。
最も好きな話は、かつてお世話になった劇場(シアタートップス)が閉鎖するため、久々にサンシャインボーイズの劇団員が集まって再結成し、舞台を作り上げるまでのあれやこれやを書いたもの。たった10日間でひとつの作品を作り上げるプロ集団のカッコよさ、劇団が休止してからもう何年も経つけれど、集まれば「かつての仲間」としてよみがえる空気感とか「彼らならやってくれるはず」という仲間に対する絶大な信頼感とか、それぞれが忙しく活躍しているにも関わらず、飄々と稽古場に集まってくる劇団員たちとか、そういったかっこいい大人たちがが存分に描かれていて、この舞台をぜひとも見たかったな、その空間に私もいたかったなぁ、と心から思わされました。

4.人生の旅をゆく/よしもとばななな
5.人生の旅をゆく2/よしもとばななな

ばななさんの作品が大好きです。けれど、ばななさんのエッセイは私にとって「好きだけれど、苦手」「苦手だけれど、やっぱり好き」という気持ちにさせられるものばかりです。それでも、やはり折に触れ、彼女のエッセイを手にしてしまうのは、おそらく私がばななさんのはっきりとした物言いやスタンスがとても苦手で、でも、その一方で、彼女の揺るぎない強さを持った極端すぎる物言いやスタンスに憧れ続けているからなのだろうと思うのです。
 彼女は自分の周囲にいない人、自分が大切にしようと心に決めた人以外の意見には耳を貸さないし、彼らがどんなに自分を非難したとしても傷つかない。と、決めているように見えます。おそらく実際には「傷つかない」と決意して傷つかないでいることなんてできない。だから彼女は、聞こえてくるいろんな批判に胸を痛めることもあると思うのだけれど、でも、そういった自分を決して見せない。大切な人以外の意見は、「雑音」と決めて「聞かない」ことを選択している。
 私はその姿勢に、これからも違和感と憧れを抱き続けるんだろうと思います。そして、ばななさんのエッセイを読むときに感じるこの中途半端な姿勢、ぶれこそが私の人となりを象徴的に表しているんじゃないかな、とも思うのです。

2013年1月~6月上旬に読んだ本

2013年06月10日 21時44分47秒 | 読書歴
もう本当にただのメモです。
しかも自分でも読んだ本をすべて網羅できていない。
(全然、覚えていないのです。どれだけ記憶力皆無なんだか・・・。)
やはり地道にメモはとっておかないと。


1.大草原の小さな町/ローラ・インガルス・ワイルダー
2.この楽しき日々/ローラ・インガルス・ワイルダー
3.はじめの四年間/ローラ・インガルス・ワイルダー
4.わが家への道―ローラの旅日記/ローラ・インガルス・ワイルダー
5.大きな森の小さな家/ローラ・インガルス・ワイルダー
6.大草原の小さな家/ローラ・インガルス・ワイルダー
7.プラム・クリークの土手で/ローラ・インガルス・ワイルダー
8.シルバー・レイクの岸辺で/ローラ・インガルス・ワイルダー
9.農場の少年/ローラ・インガルス・ワイルダー

おもしろかったー!
そして、このシリーズすべて揃えたくなりました。
食べること、家を整えることが一日の大半を占めていた時代は
シンプルで今より大変なことが多い分、喜びが大きい時代だったんだろうなぁ、と思いました。

10.凍りのくじら/辻村深月
11.スロウハイツの神様(上)(下)/辻村深月

年に2,3回は辻村さんの作品を読み返してます。
どんだけ好きなんだろう・・・。

13.クリスマス・キャロル/ディケンズ

なぜにクリスマス前によまなかったんだろう・・・。
古本屋さんで見つけました。
文体が古いところがお気に入り。

14.不倫の恋で苦しむ男たち/亀山早苗

おもしろかった!
なんだか色々と考えさせられるルポでした。でも、不倫は反対。

15.不如帰/徳冨蘆花

明治時代の作品らしいのですが(うろ覚え。)まったく古さを感じさせませんでした。
時代だな、とは思うけれど、今でも十分に昼ドラにできそう。

16.ホームレス暴行死事件~少年たちはなぜ殺してしまったのか~/吉田俊一
17.街場の大学論~ウチダ式教育再生/内田樹

内田さんの論旨は明快でわかりやすかったです。

18.豆腐小僧双六道中ふりだし/京極夏彦

豆腐小僧がかわいらしくてかわいらしくて・・・。こんなペットがほしいなぁ、と思いました。
確かアニメ映画化されて、フカキョンが声をあてたのです。ぴったり!

19.東京に暮らす/キャサリン・サンソム

これまたおもしろかった!!
わずか100ねんほど昔の日本がまるで別世界のように見えます。
でも、今も変わってないな、と思うところもある。
変わらないで欲しかったな、と思うところがありすぎて、少々切なくなりました。

20.咲くやこの花/藤本有紀

大好きな成海璃子ちゃんが主演をしたドラマのノベライズ本。
百人一首が題材で、これまた親近感に満ち溢れた作品でした。

21.愛の旅だち~フランバーズ屋敷の人々(1)~/K・M・ペイトン
22.雲の果て~フランバーズ屋敷の人々(1)~/K・M・ペイトン
23.めぐりくる夏~フランバーズ屋敷の人々(2)~/K・M・ペイトン
24.愛ふたたび(上)(下)~フランバーズ屋敷の人々(3)~/K・M・ペイトン

おもしろかった。
けれど、「そしてふたりは幸せに暮らしました。めでたし。めでたし。」のその後が
とても現実的に描かれていて、そのリアルな感触に少し重たい気持ちになりました。

26.悼む人/天童荒太
27.元気が出る言葉/早坂茂三
28.ジミーと呼ばれた天皇陛下/工藤美代子
29.そうだったのか!アメリカ/池上彰
30.だまされることの責任/佐高信

31.黄金の都の癒し姫 「そして花嫁は恋を知る」シリーズ/小田菜摘
32.白銀の都へ旅立つ姫 「そして花嫁は恋を知る」シリーズ/小田菜摘
33.紅の沙漠をわたる姫 「そして花嫁は恋を知る」シリーズ/小田菜摘
34.緑の森を拓く姫 「そして花嫁は恋を知る」シリーズ/小田菜摘
35.緑の森を統べる姫 「そして花嫁は恋を知る」シリーズ/小田菜摘
36.黄土の大地を潤す姫 「そして花嫁は恋を知る」シリーズ/小田菜摘
37.大河は愛をつなぐ 「そして花嫁は恋を知る」シリーズ/小田菜摘
38.青の大河をのぼる姫 「そして花嫁は恋を知る」シリーズ/小田菜摘
39.黄金の都を興す姫 「そして花嫁は恋を知る」シリーズ/小田菜摘
40.黄金の都を受け継ぐ姫 「そして花嫁は恋を知る」シリーズ/小田菜摘
41.薔薇の想いは海を越える 「そして花嫁は恋を知る」シリーズ/小田菜摘

ひっさびさにライトノベルにはまりました。
表紙がキラキラしていて図書館で借りるのが少し恥ずかしかったかな。
ついつい他の文庫本ではさんで借りる、という男子中学生のような行動をしてしまいました。
でも、ハッピーエンドが絶対に待ち受けていると分かっている本は単純に面白い。
読んでいて幸せな気持ちになりました。

42.どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか/みうらじゅん・リリー・フランキー

めちゃくちゃかっこいい対談集でした。
いたるところに共感してしまったな。
特に女性の胸に対する考察
「男性の大きさの違いなんて、たかだか数センチで外から見たら分からないのに、
 女性の大きさの違いは、数十センチに及んで他の人が見てすぐに分かる。
 そんな環境でずっと生きているから女性はメンタルが強いんだ。」
というものは、なんだか思わず納得してしまったのでした。

43.牢の中の貴婦人/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

後味の悪さにびっくりした作品。
思わず「え?これで終わり??」とラストを3回ぐらい読み返しました。
そして、そ
れで終わりでした。そんなー!!

44.桃色トワイライト/三浦しをん
45.くすぶれ!モテない系/能町みね子

おもしろい肩のこらないエッセイでした。
二作品とも妙に自分と重なる部分があったような。

46.うちの一階には鬼がいる!/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

ダイアナ・ウィン・ジョーンズらしい作品。
彼女の作品は大人になれない大人がたくさん出てくる気がします。
少しずつ分かり合い、家族を形成していく様子がほほえましい作品でした。
こういう作品が好きさー。
ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品はすべてこんな感じだと思ってたさー。

47.イキルキス/舞城王太郎
48.短編五芒星/舞城王太郎

舞城さんの舞城さんたるべき作品。
彼の作品の魅力を言葉で伝えられる気はまったくしません。
芥川賞候補策だったらしいです。(短編五~のほう。)
舞城さんと芥川賞・・・。うーん。

49.えりなの青い空/あさのあつこ
50.ほたる館物語1~3/あさのあつこ

昔ながらの旅館、ほたる館を舞台にした物語。
ヒロインたちの10年後、20年後を覗いてみたいな、と思った作品でした。

51.一芸一談/桂米朝

さすがです。さすが米朝。
言葉の重みが違う。けれど、存在感はとても軽やかなのです。

52.古書ビブリア堂の事件簿

おもしろうございました。そして私、もっと本を読まなきゃな、と思いました。

53.シアター2/有川浩
54.クジラの彼/有川浩

最近は有川作品も折に触れ、読み返してます。
読み返すたびに幸せな気持ちになります。

55.悶絶スパイラル/三浦しをん

笑った。声出して笑いました。

56.消された一家―北九州・連続監禁殺人事件/豊田正義

重い重い実に重いルポでした。
こんなにも残虐な事件が我が家のすぐ近くで起こっていたとは。
すぐ近くなのに、同じ世界とは思えない。
その距離感に果てしなさを感じました。
読んでいて、とても辛い気持ちになりました。
「もう無理だ」と思う瞬間が何回かありました。

57.ビジネスマンのための行動観察入門

58.いしいしんじのごはん日記
59.三崎日和 いしいしんじのごはん日記2

いしいさんのごはん日記。シンプルです。そして、とても面白いです。
淡々とした文章のつづり方、素直な感情表現は少し吉本ばななさんを髣髴とさせられました。

60.前進する日もしない日も/益田ミリ
61.桃色トワイライト/三浦しをん
62.お針道具~記憶の断片~/宮尾登美子
63.県庁おもてなし課/有川浩

読み終えて幸せな気持ちになりました。
ヒロイン、ヒーローがともにとてもかわいらしいのです。

64.「べてるの家」の恋愛研究

「べてるの家」とは、北海道浦河町にある精神障害等をかかえた当事者の地域活動拠点だそうです。
当事者研究が盛んで、ことあるごとにメンバー同士で集まり病気や共同生活の事について会議をしています。
自分の病気にオリジナルの病名をつけて毎日の経過をまとめ、報告するのが定例化しており、
病気が悪くなることも、生活や活動に支障が出てくることもすべてあるがまま受け入れるんだそうです。
この本は、その当事者研究の中から「恋愛」に関する研究をまとめたもの。
あるがまま受け入れて、「こんなことがあって。」ととても深刻な症状を笑いながら
報告しあう当事者たちに強いな、と思いました。
そして、私の知らず知らずに抱いていた偏見に気づかされました。

65.ユルスナールの靴/須賀敦子

須賀敦子もマルグリット・ユルスナールという作家もどちらも初めて知りました。
どちらも潔くかっこいい。文体に知性ってにじみ出るんだな。