おとらのブログ

観たもの、見たもの、読んだもの、食べたものについて、ウダウダ、ツラツラ、ヘラヘラ書き綴っています。

坂東玉三郎特別公演

2024-06-26 00:06:01 | 観たもの
 南座の公演でございます。玉ちゃんの「阿古屋」ですが、その前に「口上」と千次郎さんの「解説」がつきました。

 「口上」は幕が開くと、金屏風の前に玉ちゃんが女形の正装でお座りでした。金屏風は絵のないシンプルなものでした。「阿古屋」は六代目歌右衛門さんからお習いになりました。玉ちゃんの初演は1997年に国立劇場で、その時は通し上演で序が「二人景清」、中段が「琴責」、大詰が「清水寺」だったそうです(正しくはコチラをご覧ください)。二人景清は先代の團十郎さんで、玉ちゃんは「琴責」ではいつも私たちが見ている「阿古屋」ですが、その後の「清水寺」は景清のお母さんに普段着で会いに行くという場面だそうで、あの重い鬘と衣装の後に、急に軽くなって変な感じだったそうです。通し上演って、歌舞伎公演データベースで見る限り、この国立の1回だけだったので、もひとつだったんでしょうね。初役の時はとても緊張されたそうで、勢いだけで乗り切ったとおっしゃっていました。

 ちなみに、ワタシ、この翌年の1998年の松竹座の「阿古屋」を見ております。「とにかくすごい演目らしい」っていうのを聞いて見たのは覚えていますが、内容は忘却の彼方です。そんな初期で見ていたことに、今はビックリです。松竹座って結構こういうケースが多くて、政岡も初演かその後ぐらいで見ています。歌舞伎座では出来なかったんでしょうね。

 話が逸れました。「琴責の段」はとても文学性の高い段だそうで、お白州に正装で登場します。玉ちゃんは「景清の行方は知らない」という心持で演じていらっしゃるそうです。華やかに見えるけれど、気持ちは萎れている、と。これは義太夫で語られているそうです。

 現代ならあちこちに監視カメラがあって、SNSがあって、景清の行方なんてすぐにわかってしまうでしょうね、って砕けたこともおっしゃっていました。ただ、玉ちゃんはそういう外の世界のことを忘れていただくために、精一杯勤めていると。どの「口上」でも、このことおっしゃっていますよね。玉ちゃんのおかげで、豪華絢爛なお姿を見て、お琴、三味線、胡弓の美しい音色を聞いて、ひととき夢の世界に浸らせていただけます。

 少し、南座の思い出もお話しくださいました。50数年前の南座顔見世で初めて南座へ来られたそうです。その後は毎年8月に松嶋屋さんの「花形歌舞伎」にご出演、ここで孝玉コンビでいろいろ手掛けられました。その評判がよくて、新橋演舞場でも6月に「花形歌舞伎」があり、さらに南座では3月も「花形歌舞伎」がかかり、大きなお役に次々と挑戦されました。この時の経験が後に歌舞伎座で大きなお役をなさる時に大いに役立ったそうです。

 初日あたりはこの「口上」も長かったようですが、ワタシが見た時(22日)は時間通りぴったり終わり、続いて千次郎さんの「解説」です。同じ舞台で、千次郎さんが金屏風の前で松嶋屋さんの裃をつけて座っていらっしゃいました。玉ちゃん、千次郎さんのこと結構気にかけてくださっていて、4月の「お染久松」では番頭さん、6月の「牡丹燈籠」ではお医者のお役と、2幕最初の解説(円朝さんのお役の代わり)をお勤めでした。

 「阿古屋」の解説です。いつも番附で読んでるっちゃ読んでるんだけど、改めて耳から聞くとより理解できました。お衣装のこととか、琴・三味線・胡弓のそれぞれの楽器のこととか、「へぇ~~~」ってなることをいろいろと聞きました、三味線は景清が去ってしまった後の想いを、胡弓は景清との縁の儚さ、人の世のむなしさ、わが子への愛情を表現しているそうです。竹田奴は文楽のツメ人形を模してあって、それでああいう顔と動きなんやって納得しました。

 解説が終わると休憩を挟んで本編の「阿古屋」です。重忠は吉之丞さん、岩永は千次郎さんでした。吉之丞さん、やっぱりこっちのほうがしっくりきます。ちょっと吉右衛門さんの面影があったりして、“賢い”武将でした。岩永は人形振りです。千次郎さんの人形振りはまあまあって感じでしたが(スミマセン、上から目線です)、人形遣いの二人がもうちょっと突っ込んで演じてくれたら、それらしく見えたんとちがうかなぁと思いました。千次郎さんだけ目立ってしまって、ちょっと違うって思ってしまいました。

 玉ちゃんの三曲はもちろんperfectでございます。「ひととき、夢の世界へ~」が本当に夢の世界で聞いておりました。気がつくとお琴が出てて、次に気がつくと三味線をお持ちで、次に気がつくと胡弓で…。演奏が良すぎるんでしょうね。申し訳のないことでございます。それでもまだ胡弓の時はこの世にいたかもしれません。儚いなぁってちょっとしんみりしてしまいました。

 この「阿古屋」は劇場からのリクエストが多いようで、せっかく児太郎さんと新時蔵さんもいらっしゃることですし、どこかであるかもしれません。一瞬、12月?って思ったけれど、時蔵さんが新感線歌舞伎の方なので、それはないですね。
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