2週間以上前のイベントで恐縮ですが、一応行ったので記録として記事にしておきます(10月松竹座の「GOEMON」もまだUPできていません…)
大阪市の「咲くやこの花賞」については、拙ブログでも何度か取り上げております。記憶に新しいところでは、秀太郎さんのお弟子さんの千壽さんが昨年受賞され、8月に「千壽の会」を催されました。壱太郎さんも平成23年に受賞されています。
その「咲くやこの花賞」受賞者によるパフォーマンスや美術作品など、様々な分野の質の高い芸術作品を気軽に鑑賞したり、体験したりできるイベントが毎年10月に開催されています。今年の案内は
コチラ。“気軽に”とあるように、チケット代は非常に安価、勘十郎さんのイベントも500円でした。
勘十郎さんは昭和60年に受賞されています(当時は簑太郎)。これまでの
受賞者リストを見ると、選考委員会の見る目がお高いといいましょうか、その後のご活躍は目覚しい方たちばかりです。
今回のイベント、チラシには「文楽の魅力や人形の仕組み、遣い方を実際に文楽人形を遣ってわかりやすく解説します」とありましたが、会場にこられたのは勘十郎さんお一人。何でも、この日は地方公演や他のイベントが重なり、文楽の人形遣いさんは皆さん出払ってしまっていて、勘十郎さん「今日、大阪にいてる文楽の人形遣いは私一人やと思います」とおっしゃっていました。

会場には人形が置いてありましたが、もちろん、それぞれの説明はありましたが、このコたちが動くことはありませんでした。
ということで、勘十郎さんのトークショーになりました。まず、スイス公演にいらっしゃっていたお話から。海外公演増えたそうです。あちらですので、カーテンコールがあるそうなんですが、慣れていないので、皆さんバラバラ、今度は行く前に稽古しないといけないとおっしゃっていました。
文楽の人形の遣い方、三人遣いは完成した芸術なので、これ以上何も加えることはできないそうで、ただ、それを完全に遣えるかどうかは人形遣い次第で、勘十郎さんの師匠の簑助さん

はまだまだ勉強したはるので、勘十郎さんは永遠に追いつけないと思っていらっしゃるそうです。勘十郎さんの口から「ウチの師匠」という言葉が飛び出すたびに、「え、簑助さん

、どうしゃはったん、何言わはったん」といちいち反応してしまったワタクシ。これは孝太郎さんのブログでも同じで、「父が~」って出てくると、ついビクッとなってしまいます。
人形は毎回塗り替えるそうです。使っている木は軽いと言われている桐なんだそうですが、それでも何度も塗るとその塗料分だけ重くなるので、何十年も使っている人形は鉄の塊のように思えるとおっしゃっていました。
文楽の人形遣いは「足遣い10年、左遣い15年」で一人前と言われるけれど、その修業はすべて自分の貯金になっている。たとえ、主遣いは初めてであっても、その前に足も左も経験しているので、決して初役とは言ってもらえないそうで、また、師匠方はよく覚えていらっしゃるそうで、本人はすっかり忘れているのに、「○○年に誰々の足やったがな」と言われるそうです。
勘十郎さん、学校の勉強が嫌いだったそうで(以前にも聞いたことがあります。よっぽどお嫌いだったんですね)、それで勉強せんでええように文楽の世界に入ったのに、学校よりももっと勉強しないといけなくなったとおっしゃっていました。文楽でも三業といって、人形以外に三味線、浄瑠璃がありますが、どちらも「暗譜」が基本で、覚えるのは無理と思って、人形に進まれたそうです。
ベテランの太夫さんはやっぱり遣いやすいそうです。人形が勝手に動いてくれると。人形は決して間は作れないので、太夫さん次第だとおっしゃっていました。
立役と女形では構えが違うそうです。動きも、女形の足は気持ち遅く、左は肘を張らずに、手はいつも身のほうへ巻きついていないといけないそうで、今度文楽を見るときはチェックしてみてくださいとおっしゃっていました。勘十郎さんは立役も女形も両方やりたいそうで、来年の春の巡業はお初と松王丸を両方なさるそうです。歌舞伎ではありえない配役です。
今年の文楽公演はずっと大入りが続いているそうです。11月もよろしくとお願いされていました。一人でも多く、ここにいらっしゃる人が一人3人連れてきてくださったら、それだけでもすごい数になりますからと。
お時間ある方、ご興味ある方、ぜひ国立文楽劇場へお出かけくださいませ。

会場はこんな感じ。

八重垣姫(だったと思います。違うかったらスミマセン)

杉本文楽の人形。一人遣いなので小さいそうです。衣装はエルメスのスカーフを4枚使って仕立てたもの。誰も縫ってくれる人がいなくて、勘十郎さんが作られたそうです。柔らかくてすべるので、非常に縫いにくかったとおっしゃっていました。

中央公会堂です。本当にお天気の良い日でした。