「男の隠れ家ー陶酔庵」日記

いろいろあってまだ生きてます。世捨て人を気取りながら、その高みにはほど遠い俗世の世迷い人生、命だけが通り過ぎてゆきます。

「旅先三日目」

2006年10月07日 | 「放浪」への憧れ

先日放送されたテレビ番組、「情熱大陸」で作家・角田みつよ氏をとりあげ、
その中でひとつのエッセイが紹介されました。
わたしの五感をチクリと刺激されましたので、すでにご存知の方もいるかと思いますが紹介します。

 角田みつよ 「旅先三日目」

旅に出る。見知らぬ町に着く。
幾度も迷いながらあるきまわり、だいたい三日目に、
自分が、まるごとその町に溶けこんでしまったような錯覚を抱く。
体が急に軽くなる。
仕事も名前も年齢も、私はなんにも、持ち得ない、
持っていたとしてもここではまったくの無用だと気づく。
それはちっともさみしいことではなくて、むしろすがすがしい気分である。

旅から帰ってくると、つい、何か持っているような気になってしまう。
仕事、家、友、約束、銀行口座、名前、年齢。
実際私たちはそうしたものを背負って日々よろよろと暮らしていて、
ひとつでも失うとなんとはなしに不安になる。
けれど実際のところ、本当には、私はなんにも持っていないんじゃないか。
持っている気になっているものすべては、思い込みとか、
一時的に預かっている何かなんじゃないか。
そのことを忘れそうになると、私はいつも、あわてて旅に出る。
旅先三日目のあの空っぽな気分を思い出すために。



2005年4月5日掲載


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コメント (2)
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