goo blog サービス終了のお知らせ 

気がつけばふるさと離れて34年

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

乃南アサ著 「いちばん長い夜に」 & 2011年3月11日

2016-03-09 17:17:36 | 読書

この本は「いつか陽のあたる場所で」、「すれ違う背中を」に続くシリーズの完結編です。



刑務所で知り合ったペット洋服作りをしている芭子(はこ)とパン職人の綾香が前科持ちという暗い過去を抱えながら

二人で支え合って生きていく物語です。

仙台出身の綾香は幼い息子を家庭内暴力の夫から救うため、夫を殺害してしまいます。

芭子は学生時代、ホストに熱をあげ、その費用捻出のため出会い系サイトで知り合った男性を昏睡させお金を盗むという昏睡強盗罪で刑務所に入りました。

綾香のために逮捕後、離れ離れになってしまった彼女の幼い息子の消息を訪ねてあげようと芭子は綾香に内緒で仙台に向かうのですが、

それが2011年の3月11日だったのです。

結局、芭子は行きの新幹線で隣の席に座った男性と一緒に這う這うの体でタクシー3台を乗り継ぎ、3月12日の早朝、東京までたどり着きます。

タクシー代金は10万円以上に及びました。

仙台からタクシーで福島、宇都宮経由で東京の谷根千にある自宅にたどり着くまでの描写がかなり詳細で著者は被災者にインタビューでもしたのだろ

うかと思ったのですが、「あとがき」を読んで驚きました。

これは作者自身が体験したことだったのです。

この本の執筆のために編集者と仙台の調査に出かけたのが丁度3月11日だったのだそうです。

作者の伯母様が急病で倒れたということでどうしても東京に戻らなくてはならず、編集者とタクシー3台を乗り継いで東京まで戻られたということです。

ですから本の中の芭子が体験したこととして記述されている事柄は、まさに作者の乃南アサさんが実際に体験されたことだったのです。

だからこそ臨場感あふれる描写が可能だったのでしょう。

読みながら何度も「あの時」のことが思い出されました。

震災5周年のこの時期に偶然手にした本にこのようなことが書かれてあるなんて思いだにしませんでした。

話はかわりますが、故郷、大船渡を舞台にしたNHKの土曜ドラマ「恋の三陸、列車コンで行こう」を動画視聴しています。

時折、大船渡湾岸に立つセメント会社のオレンジと白のストライプの煙突が画面に現れます。

上の弟があの付近で仕事をしていて、震災の日、まず「強い地震がありましたが、僕は大丈夫です」というメールが届きました。

その後、暫くして「津波で僕の車も流されてしまいました。僕は高台に避難していたので無事です」というメールが届き、その後3日間

音信普通になってしまい、心配したことなど思い出しました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

チョコレート博物館

2016-03-07 14:10:40 | 日記

ケルン観光のトップは何と言ってもユネスコ世界遺産の「ケルン大聖堂」です。

その後はローマ・ゲルマン博物館、ルートヴィッヒ美術館、ライン河下りなどが観光客に人気があるようです。

最近はライン河沿いに建つ「チョコレート博物館」の人気も高まっています。



元々このあたりにはシュトルヴェルクという名のチョーコレート会社がありました。

シュトルヴェルクは1876年にケルンで創業した食品会社ですが、チョコレートやマルチパンで有名になりました。

第2次大戦後の世界経済恐慌以来、経済状況が悪化していたシュトルヴェルク社を1972年にイムホフさんが買収後、

会社の復興に成功しました。

その後、本社をケルン郊外に移転する際に見つかった種々のチョコレート関連の品を集めて、イムホフさんの個人資産で建てられたのが

チョコレート博物館です。

1993年10月31日に開設されました。

1922年生まれのイムホフさんは2007年に亡くなりましたが、子供の頃に近くにあったチョコレート会社から漂ってくる甘いチョコレートの香に

憧れ、チョコレート製造業に携わることが夢だったそうです。

その夢を実現させ、チョコレート博物館のオーナーを14年間勤めたイムホフさんは幸せな人生を送ったといえるでしょう。

チョコレート博物館では単にチョコレート関連の展示を行っているだけでなく「チョコレート講習会」も開いていて好評を博しています。



最近では「黄金のカカオの木」の隣にチョコレートでできたケルン大聖堂も陳列されているということです。


(写真は全てホームページから拝借しました)

ドイツではヴァレンタインデーにチョコレートを贈るのは一般には行われていません。

ですからチョコレートの消費量が最も増加するのがクリスマスやこのイースターの時期です。

イースターの子供たちの楽しみは庭や家の中に隠された色つきゆで玉子、ウサギや卵チョコレートを捜すことです。

ウサギ型のチョコレートの中での人気者はゴールドパッケージのウサギです。

我が家には毎年、小型のウサギが鎮座しますが、チョコレート博物館の屋上にも鎮座して入場者を睥睨していると先日、地元の新聞が報道していました。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

芝木好子著 「鹿のくる庭」

2016-03-03 15:50:27 | 読書

先日、久しぶりに森の散歩に出かけたら鹿の親子に遭遇しました。


鹿を見たその日の午後、本の整理していたら「鹿のくる庭」という文庫本が目にとまったので再読することにしました。


京都の山奥に住む画家が描いた鹿の絵をたまたまギャラリーで見かけ、衝動買いしてしまう人妻の心の襞を描いている短編です。

賭博で負債を抱えた夫が鹿の絵を売ってしまうことを恐れたこの女性は画家の元に絵を返しに行きます。

鹿や狐などの小動物がよく訪れるこの画家の庭が短編の題になっているのです。

思わず微笑んだのはこの画家がペットの犬を連れて付近の林を散歩していた時、鹿に遭遇したのですが、

犬が吠えたため鹿がすぐ逃げてしまったという箇所です。

私たちが森で鹿の親子を見かけたとき、奥にはシェパード犬がいたのですが、何故か全然吠えずにおとなしくしていたのです。

鹿の親子は左を向けば私たち夫婦がいるし、右を向けばシェパード犬がいるので、道を渡るべきかどうか暫く考えていた様子でしたが、

結局ゆっくり元来た道を戻っていきました。

芝木さんは芸術に造詣が深く、舞、画ややきものを題材にした著作が多くなっています。



「青磁砧」も好きな本ですし、「日本の伝統美を訪ねて」はいつも一時帰国する前に手にとって眺めています。

今年は能登半島にまた行きたいと考えているので「伝統美」の中の「輪島塗」をもう一度読んでみました。

この本の中でも特に「志野焼の里」の項が好きなのは、芝木さんが惹かれるという青磁や赤絵や志野が私も好きだからです。

青磁を「冷たく澄んだ珠のようなきらめきのあるやきもの」、

そして志野を「白くふんわりとやわらかで、ほのかに薄紅色のにじみ出てくるやさしい感じ」

などとても味わい深い筆致で綴られています。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする