気がつけばふるさと離れて34年

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

山本夏彦[翻訳]『年を歴た鰐の話』

2020-05-01 22:24:07 | 読書
この本を購入したのは5年前です。



2014年9月1日の拙ブログ「狼魚、山椒魚、鰐」でこの本について触れました。
当時は絶版になっていると思っていました。
それに対して「最終回文庫」さんが復刻版のことを知らせてくださり、翌年の一時帰国時に購入しました。
それ以来、お礼を述べなくてはと思いながら、何と5年も経ってしまいました。
「最終回文庫」さんのおかげでこの素敵な本を手に入れることができました→本当にありがとうございます。

この本の作者はレオポール・ショヴォというフランス人です。
あまり世間に知られていないということと、山本夏彦さんの翻訳が素晴らしくて、元々日本語で記されているかのような文章なので
当初はレオポール・ショヴォは架空の人物で、これは山本さんの手による本ではないかと思われたこともあったようです。
でも徳岡孝夫さんがあとがきでショヴォは実在の人物だと記しています。

本には次の三つの物語がおさめられています。
ー 年を歴た鰐の話
ー のこぎり鮫とトンカチざめ
ー なめくぢ犬と天文学者

簡単にあらすじを記します。
「年を歴た鰐の話」
この鰐の孫娘は500歳以上にはなっていなかったということですから、いかに年老いた鰐であるかわかります。
年をとって餌をとるのが大儀になったため、曾孫の一匹を食べてしまい、そのため鰐ファミリーから追放されてしまいます。
大海を漂流している時、足が12本もある蛸に出会います。
彼女(蛸)のことを愛しているにもかかわらず誘惑にまけて毎晩1本ずつ彼女(蛸)の足を食べてしまいます。
そしてとうとう一人ぼっちになってナイル河にたどりつき、川辺で休んでいると、強い陽光で赤く変色した鰐を原住民が神としてあがめ、神殿に運ばれてしまいます。


「のこぎり鮫とトンカチさめ」
二匹ともみにくい意地のわるい魚です。
のこぎり鮫は鯨の赤ん坊がお母さん鯨の乳を飲んでいた時、そのお腹をのこぎりで真っ二つに切ってしまいます。
それ以来、お母さん鯨は復讐しようと二匹を追いかけます。
最後はアルカション湾で美味しい牡蠣を夢中で食べていた二匹はお母さん鯨の尻尾でたたかれ平目みたいに平べったくなって、気をうしない、目がさめた時は死んでいて、復讐を果たしたお母さん鯨は南の海に行くのです。

これを読むと昔、アルカション湾で食べた美味しい牡蠣のことを思い出してしまいます(笑)。

「なめくぢ犬と天文学者」
物語は盲目の天文学者につかえるなめくぢ犬がサーカスで働くチョコレート色の厖犬に出会うところから始まります。
さらにピタゴラスという学問のある蛙と首なし女も登場し、最後は天文学者が首なし女に「結婚しよう!」とプロポーズするのです。


私の拙いあらすじだけでは、何とも雲をつかむような物語になってしまいますが、
一度読むと定期的にまた目をとおしたくなるような不思議な魅力のある本です。
足を食べたり、腹を切ったり、首なし女が登場したりとホラー小説のジャンルにはいりそうですが、
読後は何故か穏やかな気持ちになります。

徳岡孝夫さん、久世光彦さん、吉行淳之介さんと当代の文筆家のあとがきもとても良かったです。

最後になりましたが、最終回文庫さんは何と初版本をお持ちなのだそうです!!

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ワインの買い出し ② | トップ | ベルリン・フィル「ヨーロッ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事