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風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

2010年04月27日 | 詩集「家族の風景」
Robo


父のポケットに
ときどき手を入れてみたくなる
そんな子どもだった


なにもないのに
なにかを探してしまう
背のびしても届かない
指の先がやっと届きそうになって
もう父はいなかった


はじめて父のタンスを開けた
背中のかたちを残した上衣の
胸のポケットから
枯れたもみじの葉っぱが出てきた
置きわすれていた
小さな手だった


なにかを
掴もうとする手が
ふと父の手になっている
手は
落ち葉をひろい
風におよぎ
草の手になって
秋の
ポケットをさがしている


(2008)


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