風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

星霜

2010年04月28日 | 詩集「星の時間」
Jikuu


星が降る
そんな時代がありました


いちどだけ
空から便りが届いたのです
遠い星からのとてもシンプルな手紙です
地球にいた頃はしあわせでした
たったそれだけでした


しあわせな星から
すぐに手紙を書きました
けれども
そのひとの星を探すうちに
おもわぬ歳月を費やしてしまいました


流星群が飛びかう夜は
せわしく宇宙の手紙が配達されるのでしょう
ときには
たった1通の手紙が届くのに
幾億光年もの時がたってしまうのでした


ですから私はまだ
そのひとに会ったことがありません


(2005)


流星群

2010年04月24日 | 詩集「星の時間」
Gangouji


おれんじ色の船にのって

ぼく砂漠へ行くの

降りしきる流星群に出会ったら

きみに長い長い手紙をかく


    *


そうしてそれから

真っ赤なポストを探して

3千年の旅をする


(2009)


星の命名

2010年04月24日 | 詩集「星の時間」
Etuke


始まりと終わりが
空のどこかにあるのだろうか
ぼくたちが
浮遊する影を見うしない
新しい影に気づくとき


草がもえる道で
ぼくたちは風になるだろう
蕾をおしひらく命の声を聞くだろう
影にみちびかれて迷子になるだろう
探しつづけて遠まわりするだろう


星と星は
しずかな音で響きあい
風は
風の始まりを告げている
かすかに花を揺らす
そんな言葉で


伝えたいことはまだ言葉にできない
名のない星が掌のなかで燃えている
指の先まで熱くなって
生まれでる合図を送っている


(2009)


星の時間

2010年04月24日 | 詩集「星の時間」
Aki


星と星をつなぐと
空を飛ぶ生き物になった


指と指をふれて
ひとがひとになった
言葉と言葉をつないで
ひとは恋をした


光と闇をつなぎながら
星の時間を回りつづける


やがて
空の生き物になるまで
ひとは星を恋した


(2008)


ぼくの星

2010年04月24日 | 詩集「星の時間」
Ne2


星をひとつもらった


夜空がすこし暗くなって
ぼくの夜が明るくなった


きみに手紙を書く
いくども書き直したので朝になった
星のことは書かない


ぼくの星をだれも知らない
夜明けに
きみの夢のなかへ
そっとかえす


(2007)