A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

たまには、パウエルを忍んでバップスタイルでやってみようか・・・

2015-01-18 | PEPPER ADAMS
Luminescence! / Barry Harris Sextet

サドジョーンズの鳩のアルバム、そしてリーモーガンのサイドワインダー。どちらも時代を代表する有名なアルバムだ。そのどちらにも参加していたのが、ピアノのバリーハリス。
バドパウエル直系と言われるピアノは、ハードバップの創成期から色々なグループで活躍してきた。ピアノトリオのアルバムもあるが、トリオが有名になったのは晩年になってからかもしれない。

このバリーハリスは今でも健在。ベニーゴルソンやフィルウッズなど50年代のジャズを自らの体験で語れる数少ない生き証人の一人だ。プレーだけでなく、このパウエルから引き継いだビバップの真髄をまだ後進に伝承し続けているとも聞く。

このアルバムは、そのバリーハリスのプレスティッジレーベルでの初のリーダーアルバム。
このようなジャズの本流といった感じのアルバムを、記事で紹介するのも久しぶりのような気がする。

というのも、最近ペッパーアダムスの参加したアルバムを紹介する事が多いが、アダムスがサドメルに加入した60年代の後半には、アダムス自身がこのようなアルバムの録音に参加する機会が無かった。直近では、先日紹介したジミーラッシングのバックであり、ボビーハケットのバックに参加したのがこの時期である。というより、当時のジャズ界全体がコルトレーン旋風の吹いた後で、バリバリのバップ直系、そしてハードバップの演奏自体が少なくなっていた頃なので仕方がないともいえる。

反対にそのような時代だからこそ、このバリーハリスのアルバムは価値がある。1967年からいきなり10年前にタイムスリップした感じのアルバムだとも言える。此の頃のプレスティッジは大物プレーヤーもいないので、地味なアルバムが多い。その中で時々光るアルバムがあるが、これもその一枚だと思う。

ハリスはここではトリオの演奏では無く、3管の分厚いサウンドを選びアレンジも担当した。それもトランペット無しの、テナーにバリトン、そしてトロンボーンと低音域ばかりの重いサウンドだ。
久々のバップオリエンテッドな演奏、メンバー全員が水を得た魚のように生き生きとプレーしている。曲はハリスのオリジナル曲が中心だが、パウエルの曲もあり曲調は似ている。
パウエルが亡くなったのは前の年1966年の7月。まだ41歳の若さだったが、後を引き継ぐハリスとしては、これはパウエルへの哀悼の意を込めたアルバムだったのかもしれない。

ペッパーアダムスのソロも軽快だ。ちょうど西海岸からニューヨークに戻った頃の演奏の感じがする。アダムスも良いが、ジュニアクックのテナーが実にいい感じだ。

50年代か続くジャズレーベルのもう一方の雄、ブルーノートがリバティーの傘下に入ったのが前の年。アルフレッドライオンは最後の頑張りを見せていたが、この年の7月には引退してしまう。それに合わせるようにブルーノートがファンキー路線からさらに変貌する中、このプレスティッジは世の中の流行には振り回されず、マイペースでアルバムを作っていた。

そんな背景もあったので、ハリスのアルバムも何も奇を衒うことなく平常心で作られたように思う。これもバップスタイルの演奏にその後も拘ったプロデューサーDon Schrittenの手腕という事になるが、演奏だけでなく録音に関しても、古き良き時代の音を残したとコメントしている。確かに、ジャズの香りがする録音だ。

アダムスは、このセッションにはリーダーのハリスから声を掛けられたと思うが、このハリスも実はデトロイト出身。サドジョーンズ達と同様、アダムスにとっては地元デトロイトで一緒にプレーをした同じ年代の仲間であった。

ハリスがニューヨークに出たのは、アダムスよりは一足遅れて60年になってから。色々なセッション、グループへの参加を経て、この時期になってリーダーアルバム作りが本格化する。ハリスは典型的な大器晩成型だ。このアルバムからそろそろ50年、そして今も現役生活が続く。それも、パウエル直系のバップの伝統を、何の迷いやブレも無く今に至るまで守っているからだろう。

1. Luminescence        Barry Harris 6:23
2. Like This          Barry Harris 2:58
3. Nicaragua         Barry Harris 8:36
4. Dance of the Infidels     Bud Powell 5:05
5. Webb City          Bud Powell 5:58
6. My Ideal Newell Chase / Leo Robin / Richard A. Whiting 2:47
7. Even Steven          Barry Harris 6:40

Junior Cook (ts)
Pepper Adams (bs)
Slide Hampton (tb)
Barry Harris (p.arr.)
Bob Cranshaw (b)
Lenny McBrowne (ds)

Produced by Don Schritten
Richard Alderson : Recording Engineer
Recorded in NYC, April 20, 1967

Luminescence
Barry Harris
Ojc

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ジュニア・クック (duke)
2015-01-19 19:42:01
YAN さん、こんばんは。

精力的にアップされておりますね。バップ・ピアニストでパウエルよりも先に聴いたのはバリー・ハリスでした。そう、あのジャズロック名盤です。初のリーダーアルバムがトリオでないのが不満ですが、内容はいいですね。ジュニア・クックはハバードのバンドで来日したときに聴きましたが、凄かったですね。とてもレコードと同じ人とは思えないほどハードでした。ライブの味付けは一味違うようです。
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ライブで実力が出るのが本物 (YAN)
2015-01-20 22:28:14
dukeさん

こんばんは。

ペッパーアダムス関連のピッチが上がっているのでペースが速まっています。何でも、アダムスはリーダーアルバムは20枚ですが、参加したアルバムは800枚とか・・・。
息切れしないようにほどほどにします。
他のアルバムもありますし。

ジュニアクックはホレスシルバーのアルバムでの印象が強く新しいアルバムをあまりじっくり聴いた事はありません。

レコーディングでは色々場に合わせた演奏をやっても、ライブで実力を発揮できるのが本物なんでしょうね。
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