A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

てっきりバリトンマッドネス企画と思っていたこのアルバムだが・・・

2014-10-13 | PEPPER ADAMS
Baritone Madness / The Nick Brignola Sextet Featuring Pepper Adams

今年は秋の訪れが早かったせいか、ゴルフにはベストシーズンが続く。生憎週末になると台風に見舞われるが平日はゴルフには絶好の天気に恵まれている。プライべイトのラウンドに加え、現役を退くとOBの仲間のコンペとか、学生時代の同級生のコンペがこの時期には集中するので、この所は連日のようにゴルフ場通い。昔は連荘ゴルフも楽しみのひとつであったが、流石に体力的にしんどくなってきた。それも、遠距離移動となると。

コンペともなると場所も色々、先週は河口湖から始まり、東松山、そして筑波、大洗と関東平野を横断。コースの違いを楽しめたが、一番悩ましかったのはグリーンのコンディションの違い。富士山の傾斜の芝目に悩まされたと思ったら、最近では珍しい高麗グリーンに面喰い、最後は11.5フィートという速いグリーンに戸惑う。これもゴルフの楽しみの一つなので文句は言えないが。

最近は良い時と悪い時の差が極端、今回も80台が出たと思ったら100叩きも。結果的にはコンペの時の方がいいスコアが出る。プライベートの時に気が緩んでいる訳ではないが、
コンペでは大叩きが少ない。やはりスコアメイクには緊張感が必要だと思うが、確かに最近緊張感を持ってラウンドをすることが少なくなってきていたように思う。
今月、来月としばらくラウンドの回数は多い。久々に少し緊張感を持ったラウンドを心掛けることにしてみよう。

という訳で、ジャズを聴くのはもっぱらゴルフの行き帰りの車の中、今日は台風で外出もできないので久々にしっくりジャズ三昧になりそうだ。

さて、このアルバムは以前紹介したことがある。
1977年サドメルを辞めたペッパーアダムスが、ソリストとして活動を始めた初めてのスタジオ録音となる。

その時は、サドメルを辞めて、ソリストとして独立してすぐのアルバムで、同じバリトンのニックブリグノラとのバリトンバトルで相変わらず豪快に飛ばしているという印象で書いたつもりであった。このアルバムのライナーノーツを見直しても、このアルバムのプロデューサーである、Jim Neumannが「バップスタイルのバリトン奏者2人の共演というのは珍しいが、輝かしい経歴を持つアダムスと、まだ無名でまだ評価を受けていないが実力あるブリグノラの共演は衝撃を与えるだろうと、このアルバムを自画自賛している。
しかし、このアルバムが生まれた経緯を知ると、実はとんでもない代物であったということらしい・・。

その部分だけでも加筆しようかとも思ったが、改めて書き直すことにする。

レコーディングというのはミュージシャンにとってはひとつの大きなイベント、それに参加するにはそれぞれ意義と何らかの想いを持って参加するのだと思う。単にスタジオワークのお金のためという事も含めて。特にレコーディングは後に残るもの、ライブよりも自分の位置づけと役割が大事になる。単に伴奏、サイドメンでの参加であれば、主役を盛り立てられれば役目は果たしたようなもの、アルバムの出来が良ければ自分の演奏に多少不満が残っても仕方がないものと割り切れるものだ。
しかし、自分のリーダーアルバムというとそういう訳にはいかない。自分の演奏だけでなくアルバム全体の出来が当然気に掛かる。いや、それ以前にアルバムの位置づけが果たしてどのような物になるかは、プロデューサーと綿密な擦り合わせが行われるのが当たり前だと思う。

まず、このアルバムを出したBee Hiveというレーベル。シカゴに昔あったジャズクラブの名前を頂戴して新たに生まれたそうだ。
当時そこではロリンズ、スティト、アモンズなどの有名プレーヤーがジャムっていた伝統を引き継ぎ、1977年メインストリームジャズの復活の流れに乗じて「ビバップの伝統に新たなイノベーションを」という心意気で立ち上げたと記されている。

実はこのアルバムがレーベルとして初めて出すファーストアルバムであった。
普通であれば誕生に相応しい記念すべきアルバムにするのが当たり前、バップスタイルのバリトンバトルは悪くない企画だと思ったが。

このアルバムが生まれたきっかけは、このレーベルの創設者Jim NeumannがNick Brignolaの元に突然「レコーディングをしたいのだけれど」と連絡が入った。それまで面識は無かったが、熱烈ファンなので是非リーダーアルバムを作りたいとわざわざニューヨークに乗り込んできたということらしい。

このジムノイマンなる人物、ジャズ関連のコレクターとしては有名らしく所有するアルバムは10万枚以上、コレクションはレコードだけでなく書籍やカタログ、プログラムにも及ぶ膨大な物なようだ。要は趣味が嵩じて、この時自分でアルバムを作りたいということになったようだ。

指名を受けたブリグノラは早速メンバー探しになったが、ベースのデイブホランドとは何度も一緒にやっていたし近くに住んでいたのでまずは決まった。ブリグノラはテッドカーソンのバンドで長くやっていたので、カーソンも入れようということになった。けっしてブリグノラが望んだわけではなかったようだ。

オーナーはさらに暴走する。後の、ロイ・ヘインズとデレクスミスもとりあえず名が通っているからという理由で選ばれた。
それに、アダムスがゲストで加わった訳だが、ブリグノラのセクステットも急ごしらえ、挙句の果てには録音当日になって、オーナーはブリグノラに「みんな集まってくれたので君のリーダーアルバムは辞めにして、オールスターアルバムするから」といって、録音が始まる。

皆で「何をやる?」と顔を見合わせて、デレクスミスがまずはトリオで、そしてブリグノラが加わってボディーアンドソウルを、そしてやっとアダムスも加わってドナリー、ビリーズバウンスと続き、最後はアダムスがもう一曲マーマデュークはどうだと。
このアルバムには入っていないが、ブリグノラがアルトを吹く曲も。バリトン対決は一体何処へといった感じのお楽しみアルバムで5時間足らずで録音はお開きに。

そして、一か月後オーナーからブリグノラの元に連絡が入った。「やっぱりオールスターアルバムは辞めて、君をリーダーにしたアルバムにするから」と。その結果、リリースされたのがこのアルバムという訳になる。

この結論に唖然としたのはブリグノラ自身だが、怒り心頭に達したのはアダムス。バリトンバトルに参加してくれと頼まれて参加したら、単なるジャムセッション。リリースされたアルバムの写真やタイトルはアダムスが準リーダー格となっているのに茫然。自分がリーダーならはこんな仕切りはしなかった。もちろん相応のギャラも貰っていないし、このレーベルとは2度と付き合わないことになる。どうもアダムスにはこの手のレコーディングが多い。

それまでの録音でもアダムスはこのようないい加減なレコーディングには、色々苦言とも愚痴ともいえないコメントを多く残しているが、ここでも不満たらたら。まずは、レコーディングではリズム隊のセッティングの場所が実にいい加減で。お互い何も見えない。音を聴けというのであれば、ヘッドフォーンのセッティングがまたいい加減でピアノの音しか聞こえなかったとか。

さらに、このアルバムへのアダムスの参加には更に裏事情があって、最初の企画段階では、予定していたのはチェットベイカーとズートシムスだった。結局、ベイカーとは連絡が取れず、シムスはノーマングランツと契約をしたばかりで自由が利かずにこの企画は没に。
エンカウンターでシムスといいプレーをしていたアダムスが代役になったということらしい。となると、アルバムの看板バリトンマッドネスも後付ということになってしまう。
この事情を知ると、確かにアルバムの構成もピアノトリオがあったり、不思議だった謎が解ける。

このアルバムは「バリトンマッドネス」を謳い乍ら、結局それはドナリー一曲かもしれない。この超最速のドナリーのバリトンバトルは他ではなかなか聴けないバトルであるのは事実だ。

アダムスが自分の参加したアルバムでリーダーアルバムに拘る理由が良く分かる。
自分も現役時代、自分が開催する会議はメンバーの選定、議題の設定など事前にかなり準備をしたものだが、突然招集がかかる会議には、「これは一体何の打ち合わせなのか?」ということが良くあった。何の世界でもいいアウトプットを出すには誰かのリーダーシップと、事前の段取りが重要ということだろう。

世の中にこのジムノイマンのようなコレクターという人物はよくいる。多くは色々な事を微に入り細に入り知っているが、いざその知識を生かして何かクリエイティブな事をやりたいといっても何もできなかったということだ。右脳型、左脳型とよく言われるが、優秀といわれる人材にも2パターンある典型だろう。

このBee Hiveレーベルは20枚足らずのアルバムを出したが、これという作品を残さずに終わりを告げる。一方のコレクションは完成度を高め、つい最近まで続いていたようだ。

1. Donna Lee
2. Billie’s Bounce
3. Marmeduke
4. Body and Soul
5. Alone Together

Pepper Adams (bs)
Nick Brignola (bs)
Ted Curson (flh,tp)
Derek Smith (p)
Dave Holland (b)
Roy Haynes (ds)

Produced by Jim Neumann
Recorded on December 22, 1977 at Blue Rock Studio, N.Y.C


コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ベイシー仕込みのスイングを... | トップ | 色々な分野で「相互乗り入れ... »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Bee Hive (ルネ)
2014-10-13 15:40:15
Bee Hiveには、確かジョニー・ハートマンのレコードがありましね。ジャズにとっては混迷の時代ともいうべき時期に純ジャズのレーベルを主宰するのは難しかったのかもしれません。でも、個人的には嫌いではないレーベルです。垢抜けないけど正直な雰囲気があったような記憶があります。アダムスとブリグノラは似たタイプなので、どんな演奏になっているのかとても興味があります。頑張って中古を探してみようと思います。
返信する
低音の魅力 (YAN)
2014-10-13 20:54:35
ルネさんこんばんは。
コメントありがとうございます。
このようなマイナーレーベルはおっしゃるように、変に取り繕った所がない「正直」さが売りかもしれません。
このアルバムも、きちんと主旨をプロデュースすればもっといいアルバムになったかもしれません。

ジョニーハートマン持っていました。
Once In Every Lifeですね。
Bee Hiveのアルバムとは、忘れていました。

久しぶりに聴き返しましたが、低音で迫るジョビンのWaveが印象的です。
バックのジョーワイルダーのトランペットも何とも言えずピッタリきます。
このアルバムもジョニーハートマンの晩年のアルバムとしては良い感じです。

まさに歌もバックも普段着のまま「正直」そのもので。
返信する
Unknown (OGERMAN)
2014-10-14 01:08:41
読者登録ありがとうございます
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。