A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

伝説のギタリストが、再び伝説の人に戻る時・・・・

2017-01-14 | CONCORD
The Legendary Tal Farlow

それなりに活躍していたミュージシャンンが第一線を退くと、それぞれ別の人生を歩む。
ジーンハリスはピアノを弾くことは止めなかったが、活動の場所は田舎町のホテルのラウンジであった。ピアノのホッドオブライエンは、コンピューター関係の仕事に就いた。

そして、ギターのタルファーローはニュジャージー州の海沿いの小さな町、Sea Brightでサインペインターとして日々を暮らしていた。ギターを弾くのも地元でセッションに出る位であった。
20歳を過ぎてから初めてギターを手にしたという。最近はスポーツであっても音楽であっても、10代の頃から世界的レベルのプレーヤーとして活躍する者が多い。遅咲きのファーローにとっては、この時代であってもプロとしてギターを生活の糧にすることは最初から念頭に無かったのかもしれない。

このように半ば引退状態であったタルファーローを再び第一線に呼び戻したのは、1976年のコンコルドジャズフェスティバルであった。コンコルドのハウスリズムセクションともいえる、レイブラウンやジェイクハナに加え、昔一緒にコンビを組んだレッドノーボをゲストに迎えてファーローの復帰を祝った

これをきっかけとして、伝説のギタリストは再び現役復帰し、コンコルドでアルバムを何枚か残した。
現役復帰するとレコーディングだけでなく、ライブやツアーも増える。80年代に入ると国内だけでなくヨーロッパツアーにも出向くようになる。しかし、そこでは自分の好きなように演奏するだけでなく、色々なセッションにゲスト参加する機会も増える。フランスに行くと、ホットクラブのグループにも招かれた。あのジャンゴラインハルトの演奏スタイルを伝承するグループだ。その演奏を聴いたファンは、必ずしもファーローの演奏している姿が楽しげには見えなかったという。

1984年も、自分のグループでヨーロッパツアーを行った。それを終えてすぐに今度は日本ツアーがあった。メインストリームからフュージョンまで毎日のように大きなコンサートが開かれていた当時の状況では、ファーローの来日と言っても大きな話題にならなかった。
実際に演奏する場も、アコースティックジャズフェスティバルとネーミングされ、ファーロー以外にローリンドアルメイダとデニーザイトリンと舞台をシェアした。しかし、メインはザイトリン。ファーローのステージは前座のような扱いであった。

コンコルドのオーナー、カールジェファーソンは、ツアーから戻ったファーローのグループに、ピアノのフランクストラゼリを加えてレコーディングを行った。
タルファーローのアルバムにはホーンが加わったアルバムは少ない。しかし、ツアーからこのレコーディングに至るグループには、サムモストが加わっていた。サムモストはフルートで有名だが、テナーはクールトーン、ウォーンマーシュのようなタイプだ。
他のメンバーとの調和を重んじていたファーローは、このようなタイプのホーンであれば、一緒にやってもいいと思ったのかもしれない。このアルバムでも、全曲に参加している訳でなく、実際の演奏もファーロー中心の演奏に表に出ることなく上手く溶け込んでいる感じだ。

このアルバムで参加したピアノのストラゼリも西海岸を拠点に活動していたベテラン。こちらも全曲に参加している訳でなく、そつない演奏を聴かせてくれる。

このアルバムを最後に、ファーローは再び表舞台から消えてしまう。やはりジャズ界の表舞台の活況の中で、「伝説のギタリスト」として加わることは、ある種の重荷になったのかもしれない。
ファーローにとってのジャズでありギターは、気の合った仲間と、それを聴いてくれるファンに囲まれ、気分よく演奏ができれば良く、無理にその世界を広げる必要が無かったのかもしれない。

結局、このアルバムが最後のアルバムとなり、タイトル通り再び伝説の人となってしまったが。
コンコルドではそれまでジェイムスウィリアムスと組ませたり、色々セッション毎に企画を凝らしたが、カールジェファーソンはその状況を察してか、最後は自分のグループで好きなように演奏させるように指示したように思える。

1. You Stepped Out Of A Dream        4:41
2. When Your Lover Has Gone         4:58
3. I Got It Bad And That Ain’t Good   5:14
4. When Light Are Low          6:45
5. Who Cares              4:16
6. Prelude To A Kiss           5:15
7. Everything Happenaas To Me        4:49

Tal Farlow (g)
Sam Most (ts,fl)
Frank Strazzeri (p)
Bob Maize (b)
Al “Tootie” Heath (ds)

Produced by Frank Dorritie
Engineer : Jim Mooney
Recorded at Sage and Sound, Hollywood, September 1984
Originally released on Concord CJ-266


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お祭り騒ぎのフェスティバルの演奏と違って、地元ニューヨークでのライブは真剣勝負・・・

2016-01-03 | CONCORD
New York Scene / Art Blakey and The Jazz Messengers

アート・ブレイキーの晩年のアルバムを見るとライブレコーディングが多い。というのは必然的に彼が率いるジャズメッセンジャーズはライブ活動を積極的に行っていたということに他ならない。
50年代、60年代前半までは有名プレーヤーを次々に生み出す名門バンとしてジャズ界を引っ張ってきた。70年代にかけてブレイキーの低迷期と言われているが、これはブレイキ―だけではなく多くの大物ジャズミュージシャン達の共通の置かれた状況であった。そのような状況でも昔と変わらず、若手の鍛錬の場としてジャズメッセンジャーズを率いてツアーを続けていた。そして、その中から次世代のヒーローが確実に生まれていった。

そのメッセンジャーズがコンコルドレーベルに登場したのは1978年。このアルバムはコンコルドの地元サンフランシスコの名門クラブキーストンコーナーズに、メッセンジャーズが訪れていた時のライブ録音であった。
このアルバムにはボビーワトソンがいた。更にはピアノのジェイムスウイリアムスの加入もあった。若手が多いせいかライブ録音独特の活気が一層力強く伝わってくる。メッセンジャーズは健在であった。
その後も、サンフランシスコに来る度に、そのライブアルバムは続いたが、次のアルバムの目玉はその頃言われ始めていた「新伝承派」のホープウイントンマルサリスの加入であった。

1983年に、オーレックスジャズフェスティバルでこのジャズメッセンジャーズが来日した。この時のメンバーにはカーチスフラーやベニーゴルソンなどOBメンバーも加わったオールスターメンバーであったが、トランペットだけはマルサリスに加えてテレンスブランチャードも加わる豪華版であった。ちょうどこの2人が交代した時期でもあった。

そして、このアルバムは翌年1984年5月の録音。ブランチャードに加えてピアノのマルグリューミラーも加わり、メンバーが一新されている。そして、以前と同様ライブ録音だがこのアルバムのタイトルからも分かるように今回の場所はニューヨークである。やはり本拠地でのライブとなると気合の入り方が違う。

今回、前年のオーレックスの演奏も聴き直してみた。2人のOBが加わったこともあるが、日本で演奏された曲は、モーニン、ウイスパーノット、アロングカムベティーなどいずれも昔のヒット曲ばかり。懐メロのステージを聴いている感じだ。マルサリスとブランチャードのアイリメンバークリフォードの共演は楽しめたものの、残念ながら普段の若手のメッセンジャーズの演奏とは程遠いものであった。
よく、日本のステージでは手抜きをしているのではという話を良く聴いたが、懐メロ好みのファン向けのステージを要求する日本側の責任もあったと思う。

このアルバムでは、若手メンバー達のオリジナル曲が並び、演奏だけでなくバンドカラーも若手の影響力が及ぶ。一方で、バラードメドレーでは各人の技も披露している。御大のブレイキーも安心して任せているといった感じでのびのびしたプレーぶりだ。

そして、このアルバムは1985年のグラミー賞のBest Jazz Instrumental Performance - Groupにノミネートされ、めでたくウィナーとなっている。
他にノミネートされた他のアルバムを見ても、当時多くのミュージシャンが来日していたがそこで聴けるような演奏ではなかった。バブルの真最中の日本では大手のスポンサーがついてジャズフェスティバルも数多く行われていたが、今考えると単なるお祭り騒ぎであった、そこでの演奏は彼らの普段の真剣勝負の演奏とは違ったものが多かったように思う。

前回のジョージルイスの日本のライブアルバムで感じたのと同じような印象を持った。



1. Oh, By the Way         Terence Blanchard 10:06
2. Ballad Medley                    7;23
   My One and Only Love Robert Mellin
   It's Easy to Remember R.Rogers / L.Heart
   Who Cares George & Ira Gershwin  
3. Controversy            Donald Harrison 5:24
4. Tenderly       Walter Gross / Jack Lawrence 11:12
5. Falafel              Mulgrew Miller 9:54

Art Blakey & The Jazz Messengers
Art Blakey (ds)
Terence Blanchard (tp)
Donald Harrison (as)
Jean Toussaint (ts)
Mulgrew Miller (p)
Lonnie Plaxico (b)

Produced by Frank Dorritie
Engineer : Ed Trabanco
Remote Recording : Malcolm Addey
Recorded live st Mikell's, New York, May 1984

Concord CJ-256  (所有盤は日本版のCD)

New York Scene
クリエーター情報なし
Concord Records
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ソロプレーヤーが本領発揮するには、ワンホーンでスタンダード曲を・・・

2015-05-20 | CONCORD
Standards of Excellence / Al Cohn

サックスプレーヤーにとって自分のプレーを一番アピールできるのはワンホーンでの演奏であろう。他の管楽器に合わせる必要もなく、複雑なアレンジもいらず、自分のプレーを引き立たせることのできるリズム隊を選べれば尚更であろう。

アルコーンはテナー奏者としてもちろん有名だが、作編曲も得意で晩年はアレンジャーとして活動することも多かった。そのせいかプレーを聴いても何か枠から外れることなく、そつなくプレーをしている印象がある。プレーヤーとしてはズートシムスとのコンビが有名だが、一人吹っ切れた演奏をしているワンホーンアルバムというのはすぐには思い出せない。

そのアルコーンがConcordレーベルで最初に出したアルバムが1981年4月録音のNonpareil。ルーレビーのピアノトリオをバックにしたワンホーンアルバムであった。
その年の夏以降は。コンコルドオールスターズに加わってコンサートのステージにも多く参加した。そこでは一メンバーとしてのアルコーンに戻っていた。
翌年、今度は自分の息子との共演アルバム"Overtones"を作った。ここでの演奏はデビュー間もない息子と一緒となると、他のプレーヤーとの共演以上に気を遣ったかもしれない。

そして、今回は正真正銘のワンホーンでのリーダーアルバムとなった。さらにアルコーンには珍しく自作曲は使わずスタンダード曲を演奏。それも誰もが知っているスタンダード曲というのではなく、何か拘りを感じる選曲だ。
そして、バックにはピアノを使わずに、ベテランのハーブエリスを加えたギタートリオ。ベースには長年付き合いのあるモンティーバドウィック。ドラムは、この手のセッションにはお似合いのジミースミス。このセットを見ただけで、今回のアルバムの出来具合がイメージできる。

アルバムのタイトルはStandards of Excellence。常套句として何か意味があるのかもしれないが、直訳すれば「素晴らしさの様々な基準」。勝手に解釈すれば、良い物といわれるものには何でもそれなりの基準があり。それをクリアしたものが結果的に良いものとなるということだろう。

音楽の世界では、曲であり、メンバーであり、そして演奏する場であり、さらにはレコーディングとなればプロデューサーであり、エンジニアとなる。今回はアルコーンの最上のテナー演奏を引き出すための要素はすべて基準を超えていたと考えてもいいだろう。

アルコーンのテナーは流暢ではあるが少し硬い感じがする。しかし、このアルバムでの演奏はその硬さがとれて、音にも厚みを感じる。テナーとはこのような音で、このように吹くのだというような見本のようにも感じる。

スタンダード曲というのは、実力あるプレーヤーにとっては自分のイマジネーションと演奏技術を披露するひとつの素材でしかない。ロリンズもワンホーンでスタンダード曲を好んだ。極端な事をいえばメロディーにこだわらなくてもいいことになる。その昔はスタンダード曲のコード進行を生かしたオリジナル曲も沢山生まれた。
ここでのコーンの演奏は、メロディーを生かしつつもその表現の自由さを感じる。オリジナルだとそうもいかないだろう。

このアルバムのプロデューサーは、Frank Dorritie。オーナーのジェファーソンとは少し違った色付けで、これまでもいいアルバムを作っていたが、このアルバムもその一枚に加わった。
そして、エンジニアが西海岸での録音でありながら、いつものPhil EdwardsではなくAlan Sidesという新顔。コンコルドのアルバムは総じて録音のレベルが高いが、このアルバムの録音も秀逸だ。これもテナーの音の良さに影響しているのかもしれない。

このアルバムがアルコーンのコンコルドでのアルバムの最後になってしまった。このアルバムを録音してから5年後の1988年にアルコーンは亡くなる。この後も何枚かのアルバムはあるが、このアルバムがアルコーンの晩年のベストプレーのような気がする。



1. Russian Lullaby                 Irving Berlin 5:03
2. When Your Lover Has Gone             Einar A. Swan 4:30
3. O Grande Amor      Antonio Carlos Jobim / Vinícius de Moraes 4:19
4. You Say You Care              Leo Robin / Jule Styne 6:08
5. I Want to Be Happy        Irving Caesar / Vincent Youmans 4:10
6. Embraceable You          George Gershwin / Ira Gershwin 4:49
7. I Remember You        Johnny Mercer / Victor Schertzinger 5:40
8. When Day Is Done        Buddy DeSylva / Robert Katscher 6:00

Al Cohn (ts)
Herb Ellis (g)
Monty Budwig (b)
Jimmie Smith (ds)

Produced by Frank Dorritie
Engineer : Alan Sides
Recorded at Ocean Way Recording, Hollywood California, November 1983
Originally released on Concord CJ-241


スタンダーズ・オブ・エクスレンス
クリエーター情報なし
ユニバーサル ミュージック
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バーニーケッセルにとっては、長いキャリアの中で初のソロアルバムへの挑戦であったが・・・

2014-11-20 | CONCORD
Barney Kessel Solo

コンコルドレーベルは基本的にオーナーのカールジェファーソンがアルバムのプロデューサーを務めるが、Frank Dorritieがその任を務めるアルバムが多くなってきた。ニューヨーク録音が多く、新人の発掘もあれば、黒人プレーヤーも目立ち、ベテランにも少し違ったアプローチを求めるなど、ジェファーソンのプロデュースより一味違ったアプローチがいい結果を生んでいた。

このアルバムもそのドリティーのプロデュース。ケッセルの前作”Jellybeans”も久々にケッセルのトリオ演奏だったが、今回はソロアルバムを作った。ドリティー自身が「何故ソロがいいか」の持論をライナーノーツで語っているのだが・・・。

ビルエバンスのアルバムに“Alone”というソロアルバムがある。トリオでのインタープレーを信条としていたエバンスにとっては珍しい全編ソロで通したアルバムであった。スタンダードのHere’s That Rainy Dayをゆったりしたテンポで始めるが、徐々にテンポを上げる。いつも一緒に聴こえるバースやドラムとのコラボはなくともいつものエバンスワールドだ。最後はNever Let Me GoではB面全体を使って自分の思いの丈をたっぷり一人で披露している。

このアルバムの主役、バーニーケッセルというとどうしてもコンテンポラリーのポールウィナーズシリーズを思い浮かべてしまう。このピアノレスのギタートリオが自分にとってのバーニーケッセルのイメージだ。相方を務めたレイブラウン、シェリーマンとのコンビネーションも絶妙であった。
このケッセルは、コンコルドレーベルが誕生した時から看板プレーヤーの一人だった。初期のアルバムからケッセルが参加したアルバムは多くあるが、ギター3人のグレートギターズを含めて不思議とピアノレスの編成が多い

ジャズの場合、メロディー、リズム、そしてバックのハーモニーやアンサンブル、リフなどが大事だが、ギターはピアノ同様時に一人3役を演じる。もちろんベース、ドラムがいてリズム隊がいる場合でも、リズミカルなコードワークは聴いていても心地よい。管楽器ではできない芸当だ。しかし、完全にソロとなると3つの要素を組み合わせてプレーできる個人技の勝負となる。エバンスはピアノ一台でもこれを実現した。

バーニーケッセルにとっては、長いキャリアの中でこれが初めてのソロアルバムだった。ギターメインのピアノレスのトリオ以外にもビッグバンドの一員から歌伴まで広い演奏キャリアがある。どんなスタイルでもこなせる反面、ソロだと果たしてどんなプレーをするのか興味が湧く。

一曲目はブラジル。いきなりリズミカルなアップテンポの曲で始まるが、後はミディアムテンポやバラードが続く。結局ケッセルが得意とするアップテンポなジャジーな曲は無い。

エバンスはソロアルバムを作る前に、Conversation with Myselfというアルバムを作った。これもエバンス一人のアルバムであったが、実はこれはエバンスのピアノを多重録音したもの。要はコラボの相手に自分自身を選んだものであった。2人のエバンスのピアノが同時に聴こえるというアイディアは面白かったが、自分としてはあまり好きになれなかった。ソロの方がいい。

ケッセルのソロプレーを聴いて、ケッセルの場合は反対に一人よりも相手がいた方がいいように感じる。ジョーパスやローリンドアルメイダはソロでもいいアルバム作っているが、ケッセルのソロとなると今一つセールスポイントが欠けるように思う。得意とするアップテンポのシングルトーンでのソロワークには、それを引き立たせるリズムが必要なのかもしれない。ベースやドラムだけでなく、他のギターでもかまわない。もしかして、ケッセルの場合はビルエバンスが試みたのと同様、一人で多重録音して「一人グレートギターズ」アルバムを作った方が面白かったかもしれない。ドリティーのアイディアも今回はクリーンヒットとは言えなかったかも?

1.Brazil                    Ary Barroso / Bob Russell 2:36
2.What Are You Doing the Rest of Your Life?     Michel Legrand 2:56
3.Happy Little Song                 Barney Kessel 3:22
4.Everything Happens to Me         Tom Adair / Matt Dennis 3:25
5.You Are the Sunshine of My Life          Stevie Wonder 4:54
6.Manha de Carnaval          Luiz Bonfá / Antônio Maria 4:14
7.People                  Bob Merrill / Jule Styne 4:55
8.Jellybeans                      Barney Kessel 3:49
9.Alfie                  Burt Bacharach / Hal David 5:25

Barney Kessel (g)
Produced by Frank Dorritie
Recording Engineer : Phil Edwards
Recorded at Coast Recorders, Californis April 1981
Originally released on Concord CJ-221(所有盤はCD)


Solo
Barney Kessel
Concord Records
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ブレイキーのドラムはイメージとは違って実はダイナミックレンジが広い・・・

2014-03-21 | CONCORD
Keystone 3 / Art Blakey and The Jazz Messengers

昔からの自称ジャズファンは、好き嫌いを別にしてアートブレイキーを聴かなかった人はいないであろう。特にブレイキーの一連のブルーノートのアルバムはジャズ喫茶でも定番中の定番であった。小気味良さというよりは、ドタドタ感があるもののナイヤガラロールに代表されるドラミングはメリハリの効いた豪快さで有名であった。

自分は、天邪鬼な性格からか、昔は皆が好むファンキー節をあまり好まず、ウェストコースト系を好み、ドラムというとシェリーマンをマイフェイバリッツにしていた時期がある。アートブレイキーのドラムというとこのドタドタ感が先に立ち、好みのドラマーの仲間入りはとはならなかった。
その後、聴き返す内に、アートブレイキーのドラムには実は繊細な側面もあるのが分かり、鼻から無視するのではなく、それなりに気にしながら聴くようになった。

ブレイキー率いるジャズメッセンジャーズは昔から新人の登竜門であり、ここを卒業することで一流入りしたジャズメンは数知れず。歳をとると昔の仲間とおじさんバンドを組むプレーヤーが多いが、このアートブレイキーは常に新人の発掘を生き甲斐にしていた。

コンコルドレーベルに登場した時にも、ボビーワトソン、ジェイムスウィリアムスを擁した強力な布陣であった。最初のアルバムはサンフランシスコのキーストンコーナーでのライブ。晩年の演奏には衰えが目立つこともあったが、このコンコルドのアルバムはライブという事もあり、元気なプレーが聴ける。

その後トランペットにマルサリスが加わり第2作が出たがこれも同様なライブキーストンでのライブ。そして、今回がConcordでの3作目になるが、またしてもキーストンコーナーでのライブ。シスコに来た時の拠点になっているのかいつもレギュラーグループならではのリラックスした演奏だ。

今回もまたメンバーが変わる。まずは、ウィントンマルサリスの弟のブランフォードが加わる。まだデビュー間もない22歳の新人であった。そしてピアノもジャームスウィリアムスから同じメンフィス出身のドナルドブラウンに変わったが、よくもこれだけ素晴らしい新人を次々と発掘してくるものだ。

今でこそ、マルサリス兄弟は押しも押されぬ大スターだが、この当時はまだ駆け出しの売り出し中の期間。でも改めて聴き直しても並の新人とは思えない演奏だ。表現力豊かなメロディアスなプレー、そしてバカテクを駆使した縦横無尽なプレーでバンド全体をグイグイ引っ張っている。これでは御大も刺激を受けるだろう。

コンコルドの特徴でもあるがライブであっても録音が素晴らしい。前回記事に書いたペッパーアダムスの録音評が気に掛かっていたのでいつにも増して録音が気になっていたが、自分としては新たな発見があった。

ブレイキーのドラミングはいつもながらであったが、シンバルのレガートが実にセンシティブだ。いつもはダイナミックなぶっ叩きイメージの先入観念があるが、シンバルワークはその対比とし実に小気味よい。録音でもそれが実に良く再現されている。

そして最後の曲のお馴染みのA La Modeでは、いつにも増してバンド全体の強弱のメリハリが素晴らしい。もちろんフロントラインだけでなくブレイキーのドラミングも合わせであるが、波が打ち寄せるようなアンサンブルワークが印象的だ。
単にダイナミックというのではなく、ダイナミックレンジが広いというのはこのような演奏だろう。きっとMotor City Sceneでのペッパーアダムスもこのような仕上がりをイメージしていたのかもしれない。

コンコルド時代のジャズメッセンジャーズはメンバーにも恵まれ、この頃が晩年の黄金期だと思う。
そして、このアルバムは隠れた名盤だと思う。これはと思ったアルバムを聴いて、それなりにいいなと思っても「これはいける」と強烈なインパクトを受けるのはその中で10枚に1枚あるかないか。これは間違いなくその中に入る1枚だ。



1. In Walked Red          Thelonious Monk 8:25
2. In a Sentimental Mood      Duke Ellington / Manny Kurtz / Irving Mills 7:15
3. Fuller Love           Bobby Watson 8:49
4. Waterfalls           Wynton Marsalis 11:28
5. A La Mode            Curtis Fuller 10:36

Art Blakey (ds)
Wynton Marsalis (tp)
Branford Marsalis (as)
Bill Pierce (ts)
Donald Brown (p)
Charles Fambrough (b)

Produced by Frank Dorritie
Recorded at Keystone Korner, San Francisco, California in January 1982
Recording Engineer : Phil Edwards
Originally released on Concord CJ-196

Keystone 3
Art Blakey
Concord Records
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高いレベルの閾値を守り続けるということは・・・

2013-11-11 | CONCORD
High Standards / Jackie & Roy

毎日生活していると色々な刺激を受ける。
ところが刺激を受け続けているといつの間にかそれに慣れてしまい、新たな刺激を受けるにはその数倍の刺激が必要になってくる。それは単純に正比例するのではなく対数になる。

飽食の時代といわれているが、人間は本来腹7分目が満たされれば食は足りていたのだろう。それがいつの間にか満腹まで食べないと満足できなくなり、ご馳走が食べきれないほどテーブルの上に無いと不満を感じ、食品が店の棚にも溢れていないと心地よさを感じない時代になってしまった。
量だけではなく「ちょっと味が濃いのが好き」がいつのまにか激辛しか食べなくなり、本来の繊細な味覚を味わう感覚を失っていく。
今話題の食品偽装表示も根本は同様。此のくらいであればという軽い気持ちでスタートしたものが、業界揃って嘘がまかり通るのを誰も不思議に思わなくなるように。慣れというのは恐ろしい。

この「ヴェーバー・フェヒナーの法則」は世の中の何にでもあてはまるのではないだろうか。
ある状態の変化が起こる点を閾値という。「しきいち」と当たり前に使っていたが、本当は「しきち」が正しい読み方のようだ。間違いも皆で使えば正しくなるということかも。
何事においても満足を得る閾値があるが、慣れてくると満足するバーが自然に高くなっていく。「初めての経験」というのは色々な意味で感動・感激をするものだが、その感動を再び得るのは難しいように。

ジャズを聴く時も同じで、ライブであってもレコードであっても、初めて聴いた時に「これは凄い」と感じる時がある。当然ジャズの右も左も分からずに聴き始めた時は何度も経験したものだ。その感動をまた得たいがために探求の旅が始まる。そして、自分の好きなミュージシャン、曲、レーベルなどが決まっていった。

好きなものばかりを聴いていると、その中からまた新たな感激を得るのはなかなか難しくなる。自然と閾値が上がっているのだろう。ミュージシャンよっては新たな領域にチャレンジしたり、新たなメンバーとプレーをしたり、ミュージシャン自身も新たな世界の挑戦に身を置く。これが新たな刺激になることも・・・。

一方で、頑なまでに自分のスタイルを守り通すミュージシャンもいる。
ボーカルのデュエットで有名なジャッキー&ロイ。このグループも時代の変遷とともに色々なチャレンジをした。テレビショーを持ったり、ラスベガスのショーに出たり、コマーシャルを多く手がけたり。しかし、デビュー当時のチャーリーベンチュラ時代から晩年まで基本は何も変わらない。もちろん、おしどり夫婦の2人はメンバーチェンジもなかった。

初めて2人の演奏を聴いた時に、そのフレーズ、スキャット、ハーモニーにジャズ魂を感じた。確かVerveのLove sickだったと思う。その後新旧のアルバムを何枚も聴いたが彼らの魅力はいつの時代も同じだ。新たな刺激を受ける閾値が高いからといって決して魅力が無いわけではない。

その彼らがコンコルドに来て3枚目のアルバム。素材としてスタンダード曲を選び、いつものアプローチで。奇をてらった企画、目新しさは無い。しかし、正面から閾値を超えることにチャレンジする心意気を感じるアルバムだ。

蛇足ながら、アナログディスクの上空をHigh Standards垂れ幕を引く飛行機が飛ぶデザインにはすごく意味がある。CD盤のジャケットデザインではその意味は通じない。

1. I Got Rhythm         George Gershwin / Ira Gershwin 2:16
2. Stardust         Hoagy Carmichael / Mitchell Parish 3:59
3. Loving You          Judy Holliday / Gerry Mulligan 2:26
4. I Watch You Sleep  Richard Rodney Bennett / Joel E. Siegel 4:16
5. Too Marvelous for Words  Johnny Mercer / Richard A. Whiting 2:43
6. Am I Blue Harry             Akst / Grant Clarke 2:35
7. Bidin' My Time        George Gershwin / Ira Gershwin 3:29
8. Joy Spring                  Clifford Brown 3:50
9. Nobody's Heart         Lorenz Hart / Richard Rodgers 3:30
10. Mine George             Gershwin / Ira Gershwin 2:14


Jackie Cain (vol)
Roy Kral (vol,p)
Paul Johnson (vib)
Dean Johnson (b)
Jeff Brillinger (ds)

Produced by Frank Dorritie
Engineer : Phil Edwards

Recorded at Coast Recorders, San Francisco, California, February 1982

Originally released on Concord CJ-186

High Standards
クリエーター情報なし
Concord Records
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生みの親、育ての親、そして世に出てからも良き先輩に恵まれて・・・

2013-10-23 | CONCORD
Skye Boat / Martin Taylor

コンコルドのステファン・グラッペリのアルバムに、趣味のよいギターを弾く若者が参加していた。イギリス生まれのマーティン・テイラーだ。
親が同じくギターやベースを弾くミュージシャンであったこともあり、物心ついた時には周りに音楽が溢れ、4歳の時からギターを弾き始めたそうだ。親のバンドに加わってプレーをしたのは8歳、15歳ですでにプロ活動を始めたという。

人間持って生まれた才能もあるが、育った環境もまた大事ということであろう。
最近の遺伝子の研究でも、一生不変といわれるDNAに対して、日々新しく生まれる細胞にDNAを転写していく過程で、遺伝子の発現状態も分かるようになってきたそうだ。
要は持って生まれた遺伝子もそれを生かさなければ単なる宝の持ち腐れということになる。親から授かった遺伝子を生かすには、親から引き継いだ生活習慣も引き継いで本物ということになる。良く親は立派なのに子供は・・・?とい話を聞くが、これは親の教育、家庭環境の問題が大きいということだろう。

コンコルドレーベルはベテラン勢の復活の場として大いに機能したが、数は少ないが新人の発掘も確実に行っていた。初期の新人代表といえばスコット・ハミルトンだが、このマーティン・テイラーも、このアルバムがリーダーとしてのデビュー作だ。
一般的に新人で大成することは決して多くはないが、コンコルドでデビューした新人は皆、大物として育っているような気がする。ハミルトンを始めとして、ウォーレン・バッシェ、テッドナッシュ、クレイトンブラザースなど・・・・。

このマーティン・テイラーもステファン・グラッペリのグループで演奏していたのをリクルートされたのだろうが、さすがにプロデューサーの眼力はある。
生みの親の影響に加え、ステファン・グラッペリという育ての親に鍛えられた演奏は、デビュー作といえ完璧だ。

A・B面とも最初の曲が自分のオリジナルだが、後はお馴染みのジャズスタンダード。
ロリンズやパーカーの曲を見事にこなしている。ジョー・パスやバニー・ケッセルといったコンコルド創成期のベテランの演奏スタイルを見事に引き継いでいる。
タイトルになっているSkye Boat Songはセッションが終わってから、プロデューサーのドリティーからソロを勧められて収められた一曲。スコットランドのトラディショナルだそうだが美しい演奏だ。

ベースのピーター・インドは同じイギリスの出身、長年一緒に演奏してきたそうだが、ドラムのジミースミスはこのセッションが初共演。お初とは思えないほどコンビネーションが良い。


グラッペリとの共演 30年前の演奏


1956年生まれのテイラーもいつのまにかもうすぐ還暦を迎える。多くの先輩から学んだ物を今度は後進の指導に精を出しているようだ。


1. Mouse's Spinney           Martin Taylor 5:45
2. St. Thomas               Sonny Rollins 4:53
3. Sky Boat song                P.D. 4:05
4. Falling in Love with Love  Lorenz Hart / Richard Rodgers 4:32
5. Check It Out              Martin Taylor 4:11
6. Body and Soul    Johnny Green / Edward Heyman / Robert Sour 5:57
7..Billie's Bounce              Charlie Parker 4:36
8. Stompin' at the Savoy          Benny Goodman 5:33

Martin Taylor (g)
Peter Ind (b)
Jimmy Smith (ds)

Produced by Frank Dorritie
Engineer : Phil Edwards
Recorded at PER, San Francisco, California, July 1981

Originally released on Concord CJ-184

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おなじミックスでも相性のいい物と悪いものが・・・

2013-06-07 | CONCORD
Herb Mix / The Herb Ellis Trio

道の駅に寄ると地元の産直品を売っている。最近は、旅行客だけでなく地元の人が集まる場所として賑わっている。公共施設多くはせっかくインフラを作ったものの、利用目的が定まらず閑古鳥が鳴いている物が多い。その中では成功している施設のひとつだろう。産直品の中でも地元の採れたての野菜や果物はスーパーに並んでいるものより旬なものが多く魅力的だ。

ある日、ゴルフ帰りに寄った時に、ハーブミックスなるサラダ菜の袋があった。何種類ものリーフがミックスされたもので思わず手が出た。残念ながら葉の種類を見分ける知見が無く、何が入っていたのかは分からないがハーブミックスというだけあって香草もあり美味しく食した。
スーパーの野菜売り場でもカット野菜にミックス物が増えているが、これは殺菌処理が問題だ。自然な採れたてのミックス野菜はこのような場所でしか手に入らない。
また機会があったら探してみよう。

このアルバムのタイトルもハーブミックス。リーダーのハーブエリスの名前を捩ったネーミングは洒落ているが、果たして何のミックスだろうか?

ハーブエリスとConcordレーベルの関係は設立以来の長い付き合い。エリスの参加したアルバムはこの時点で数十枚あったであろう。初期の”Seven Come Eleven”などは愛聴盤だ。エリスのリーダーアルバムも何枚かあったがピアノが加わった編成で、トリオ編成はこれが始めてだろう。

エリスは初期のオスカーピーターソントリオのメンバーとして有名。このトリオはトリオでもエリスを加えたドラムレストリオ。レイブラウンを加えたピーターソンとのコラボが最高だ。
そう思って、Concordになってからのアルバムを振り返ってみても、Concordが得意だったバニーケッセルやジョーパスとのギターのコラボプレーが記憶に残る。ソロをとってもバックに回っても相手との掛け合いが魅力的だ。

このアルバムはベースとドラムを加えたトリオ編成。ボブメイズ、ジミースミスのプレーは堅実だが、レイブラウンのように丁々発止と渡り合うようなタイプというわけではない。とすると完全にエリスのソロプレーにスポットライトを当てたアルバムということになる。

エリスのプレーは相変わらずだが、いつものコラボが無いのが物足りない。バリエーションを持たせたのは選曲、スタンダード中心に、エリスのオリジナルもあれば、ボサノバ、ホレスシルバーの曲もあり、そこでは余興ともいえるクラークテリー張りのスキャットも披露してくれてはいるのだが。

人にはタイプがある。絶対的な影響力を持ってリーダーシップを持って引っ張っていくタイプ。リーダーに忠実に従ってチームをまとめる副官タイプ。参謀役としてリーダーを支える知恵物・・・・など。
このエリスも良きカウンターパートナーがいて、お互いの良いところを引き出していくタイプだろう。その意味でエリスの、Herb Mixとは他のプレーヤーとのコラボプレーが一番だ。

1. It's a Small World After All        Harry Von Tilzer 2:37
2. Tenderly                  Walter Gross/Jack Lawrence 5:47
3. Girl from Ipanema               Norman Gimbel 4:21
4. It Could Happen to You           James Van Heusen 6:07
5. Deep                        Herb Ellis 3:38
6. Moonlight in Vermont       John Blackburn / Karl Suessdorf 2:56
7. Give My Regards to Broadway        George M. Cohan 3:10
8. The Way We Were             Marvin Harmisch 5:36
9. The Preacher                Horace Silver 3:21

Herb Ellis (g)
Bob Maize (b)
Jimmie Smith (ds)

Produced by Carl Jefferson & Frank Dorritie
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, June 1981
Recording Engineer : Phil Edwards

Originally released on Concord CJ-181
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アートブレイキーが今度はマルサリスを引連れて登場・・・

2012-05-13 | CONCORD
Straight Ahead / Art Blakey and The Jazz Messengers

昔は、仕事のやり方は先輩から直々に教わったものだ。職人の世界はこの徒弟制度が当然だったし、ホワイトカラーの仕事も我々が会社勤めを始めた頃はまだ当たり前の世界だった。ところがいつのまにか、会社の運営方法が人材の育成中心にした自由度の高い仕事のやり方から、マニュアル化、プログラム化された組織運営になり、個性を生かす場がどんどん少なくなってきた。当然組織の中では職人芸を生かすことも難しくなり、特にルールに反した仕事のやり方はコンプライアンス上からもご法度となってしまった。結果は、人材が育たないつまらない会社になり、今の時代を迎えてしまった。

ジャズの世界もある種の職人技の研鑽によって人材は育っていくのであろう。その場を作れる人物がある種の親分格になる。ウェストコースト出身のプレーヤーの多くはハーマン、ケントンオーケストラの出身。このオーケストラはどちらも新人育成の場であった。
では、ハードバップに始まるメインストリーム派の、研鑽の場というとやはりジャズメッセンジャーズであろう。アートブレイキーの発掘した新人の見立ては間違いがない。特に、トランペットは初代のクリフォードブラウンに始まり、メッセンジャーズの経験が代々一流トランペッターになるための登竜門になっていた。これは晩年まで続く。

Concordレーベルにアートブレイキーが登場したのは1978年。ブレイキーは還暦を迎えようとしていたがまだまだ意気軒昂、若者を引き連れて相変わらずホットな演奏を続けていた。
80年代に入り、そのジャズメッセンジャーズにまたまた大物新人が加わった。トランペットのウィントンマルサリス。加わったときは弱冠18歳であった。
そのメッセンジャーズが、コンコルドの本拠サンフランシスコに再びやってきて、前回同様地元のクラブ「キーストンコーナーズ」で演奏したときのライブがこのアルバムだ。

ピアノのジェームズウィリアムス、アルトのボビーワトソンなどは前回のアルバムにも参加していたので在籍期間も3年を超えてすっかりメッセンジャーズの看板となっていた。そこにマルサリスが加わったわけだが、他のメンバーと比べて全くひけをとらない演奏振りで、とても19歳の新人とは思えない。“How deep is the ocean”では大きくフィーチャーされているが、テーマの演奏のちょっとしたプレーズでもすでにグループを引っ張っているような貫禄だ。
この録音から30年経ち、マルサリスも50歳になり、今やマルサリスが新人を育てる役割を果たす年になっているが、マルサリスはジャズの伝統を受け継ぎ後世に残す役回りの重鎮の一人にまで育った。ブレイキーも天国で自分の教えを守った弟子の立派に育った姿を見てさぞかし喜んでいるだろう。俺の目に狂いはなかったと。



1. Falling in Love With Love    Hart, Rodgers 7:53
2. My Romance            Hart, Rodgers 3:42
3. Webb City             Powell 10:00
4. How Deep Is the Ocean?      Berlin 9:45
5. E.T.A.              Watson, Watson 6:10
6. The Theme             Blakey, Davis, Dorham 3:07

Wynton Marsalis (tp)
Bill Pierce (ts)
Bobby Watson (as)
James Williams (p)
Charles Fambrough (b)
Art Blakey (ds)

Produced by Frank Dorritie
Phil Edwards : Engineer

Recorded live at Keystone Corner、San Francisco, California, June 1981

Originally released on Concord CJ-168


Straight Ahead
Art Blakey
Concord Records
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マルチリードの達人ディックジョンソンは、地元に帰るとマルチタレントのスパーマンだった

2012-05-10 | CONCORD
Swing Shift / Dick Johnson

名義貸しというのは合法であろうと違法であろうと色々な世界で行われている。先日のバス事故での「名義貸し」は問答無用だが、最近大手のスーパーに行くとPBの商品が溢れている。PBとは結局、流通の「名義貸し」だ。
昔は同じ商品でもどこのメーカーの物にするか悩んだし、それを選ぶ楽しみもあった。選んでもらうためにはメーカーも自ら広告費をかけてブランドの浸透に力を入れていたが、このPBが広まるとメーカーは作り手に徹し、生活者からは遠い存在になってしまう。作り手と流通の役割分担といえばそれまでだが、流通が強い社会はある意味で便利ではあるが、何か選択の自由が無くなって寂しい感じがする。
その反対に、ネット社会の到来で地方の超マイナーブランドが一躍グローバルに打って出ることも可能になった。利用者側も選択眼を養うことが益々重要になってきた。自分で努力すれば良い物が手に入るが、楽をすると当たり前の物しか接触できない時代だ。

コンコルドレーベルも、設立当初はローカルのマイナーレーベルであったが、カタログ枚数が200枚近くになるともはやマイナーレーベルとはいえない中堅レーベルに育っていた。オーナーのカールジェファーソンの個性もあり、ブランドイメージも確立してきた。コンコルドレーベルということで、「あるジャンルのファン」は中身を聴かなくとも安心して新譜を買うことができたのだ。
一方で、毎月のように多くのアルバムを出すようになると、ジェファーソンだけでのプロデュースでは量、質とも限界に達していた。そこで、次なる策はNo.2のプロデューサーを起用すること。Frank Dorritieがその任を果たすようになった。ジェファーソンとは少し違ったアプローチで、主役の意向をかなり重視するアルバムが作られるようになってきた。結果的に幅が広がったことで、コンコルドレーベルとしてのステータスはより確固たる物になっていった。

マルチリードプレーヤーのディックジョンソンも、そのコンコルドレーベルに参加したミュージシャンだ。ジェファーソンのプロデュースの元、何枚かのアルバムに登場して、マルチで楽器を操る器用な腕達者振りを披露してくれた。
しかし、「彼の本質は今まで聴いたアルバムでの演奏なのか?」というとひょっとしたら違うかもしれない。あくまでもジェファーソンの眼鏡にかなった演奏であり、彼の本質は自分の納得がいく別の演奏にあるのでは?と思った。

今度のアルバムは誰との共演か?と思ったら、今回のアルバムはディックジョンソンのグループSwing Shiftの登場だ。
プロデューサーは?というとディックジョンソン自らが加わっている。
録音場所も、地元ボストンのお隣のロードアイランドだ。
完全にディックジョンソンの自主制作アルバムでコンコルドレーベルは「名義貸し」のようなものだ。これまでの、過去に自主制作したアルバムをコンコルドから世に出した例はあったが、今回は新録音。これが、初めてだったかもしれない。

ジョンソンが自らプロデュースしただけあって、このアルバムは色々なことが考えら、盛り込まれている。
地元に戻って地元のメンバーと一緒の演奏、それだけで生き生きしている。
編成は管を5本入れたオクテット。ウェストコーストジャズの全盛期はよくあったがその頃は珍しい。
アレンジは基本的にジョンソンが自ら行っているが、2曲だけ別のアレンジャーを起用。その2曲が、最初と最後に配置され、どちらもリズミックでご機嫌。
一方で、ジョンソンのアレンジは自分だけでなく管全員に持ち替えをさせる懲りよう。単にスインギーなだけでなく、オープンハーモニーなモダンなアプローチも取り入れている。
実際に、エリントンナンバーのサテンドールでは、演奏を終えてプレーバックを聴いて7人のハーモニーが14人のアンサンブルのように聞えるとご満悦だったとか。
さらには、バリトンとテナーで参加しているJimmy Derbaのラストレコーディン。
というより、他にもう一枚しかレコーディングが無い程無名だったDerbeが、実は地元の名士ハーブポメロイに、ボストンが生んだ偉大なバリトン奏者3人と言えば、ハーリーカーネイ、サージシャロフ、そしてこのJimmy Derbaだと言わしめる名手であったとか・・
おまけに、自分が好きなサドジョーンズのチャイルドイズボーンも入っているし。
話題に事欠かないアルバムである。

ディックジョンソンはマルチリードの達人ではなく、実はプロデュース、アレンジにも長けたマルチタレントであったということが分かるアルバムだ。
このアルバムが世に出たのも、ジョンソンにジェファーソンが余計なことを言わないでコンコルドが名義貸しを始めたからかも?
であれば、カルコリンズのシンシナティーに戻ってからのアルバムも出せばよかったのに・・・・。

1. Jones
2. It Never Entered My Mind
3. The Night Has A Thousand Eyes
4. Perdido
5. Satin Doll
6. A Child Is Born
7. How Are Things In Arborea

Dick Johnson (as,ts,ss,cl,fl)
Jimmy Derba (bs,ts,,cl,fl)
Rick Hammett (tp,flh)
Ken Wenzel (tb,flh)
John DeMasi (tb)
Paul Schmeling (p)
Paul Del Nero (b)
Gary Johnson (ds)

Arranged by Dick Johnson & Hal Crook
Produced by Dick Johnson & Ron Gamache
Recorded at Normandy Sound, Warren, Rhode Island, march 1981
Engineer ; Bob Winsor

Originally released on Concord CJ-167

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有名になることがいつも幸せとは限らない・・・・・

2012-05-06 | CONCORD
Cross Country / Cal Collins

古めかしい蒸気機関車をバックに、ギターを片手のカルコリンズ。彼にはお似合いの絵柄だ。

シンシナティーでローカルな活動をしていたコリンズがベニーグッドマンに見出されたのが’76年。翌年にはジェファーソンの目(耳)に留まりConcordへ登場して4年目になっていた。デビュー作を含めて、最初はコリンズのギターを生かすトリオの演奏であったが、いつのまにかコンコルドのオールスターズに加わり世界を股に駆けて活動するようになっていた。ギター一本に賭けて長年ローカルで生活をしていたコリンズにとって、オールスターズでの活動はきっと嬉しくもあり反対にストレスの溜まるものであったのかもしれない。

それを察してかどうかは定かではないが、お祭り好きのジェファーソン親分とは別に、コンコルドのもう一人のプロデューサーであるフランクドリティーはコリンズのギターを存分に味わえるソロアルバム、”By Myself”を制作した。ジェファーソンのあっと驚く組み合わせにこだわるプロデュースと異なり、ドリティーのプロデュースはこれまでの他のアルバムでも、そのミュージシャンの本質により迫るアプローチをしていたように思う。ドリティーは今回はソロアルバムを選択した。
自己のプレーをある程度犠牲にしてでもジェファーソンのコンセプトに従わざるを得なかったミュージシャンにとっては、ドリティーの存在は救いだっただろう。

ミュージシャンにとって究極の自己のプレゼンテーションをする場はソロだ。リズムの良し悪しも、相方の良し悪しも、あるいはアレンジの良し悪しも関係ない、ソロはすべて自己責任の場である。
聴く方にとってもソロというのは、どんどん引き込まれてしまうものと、反対にすぐに飽きが来て眠くなってしまうものの両極端が多い。コリンズのギターは、最初のソロアルバムを聴いた時も惹き込まれてしまったが、このアルバムも同じである。ソロプレーになると彼のギターの素晴らしさがより浮き彫りになるがコリンズのスタイルというと・・・。

彼の音楽への取り組みは、最初はブルーグラスのマンドリンで始まった。その後いつのまにかアートテイタムやナットキングコールのピアノをギターでコピーするようになったそうだ。カントリーの盛んな中西部で生まれ育ったコリンズのギタースタイルは、知らず知らずのうちにジャズとカントリーのハイブリッドスタイルになっていったのだろう。コンコルドのモダンスイングの響きにそのギターはうまくマッチした。しかし、オールスターズの中では、彼のギターの良さがだんだん影が薄くなっていったのも事実だ。
小さい店を任されていた料理人が、たまたま大きなレストランの料理長を任され、それぞれはそれで嬉しいが、自分の本当の腕を試す機会が減ったと嘆くのと同じ心境かもしれない。

このコンコルドに残された2枚のソロアルバムは何故かCD化されていない。本人の意思であったのか、レコード会社の意思なのかは分からないが、今の時代に伝えられていないのは残念に思う。
ギターの演奏を知らない自分もこのコリンズのソロは絶品と思うので、気になって少しネットを調べてみた。このアルバムに収められている、オータムインニューヨークの演奏は多くのミュージシャンやギタリストにとっての宝物だとのコメントがあった。皆の想いは同じようだ。

一時はアメリカ大陸を、そして世界を飛行機で飛び回ったカルコリンズ、彼にとって気が休まるCross Countryとは蒸気機関車に乗ってのんびり出かけられる範囲だったのかもしれない。

1. On The Atchison, Topeka, and The Santa Fe
2. Poor Butterfly
3. Corina,Corina
4. But Beautiful
5. My Gal Sal
6. I Can’t Help It (if I’m Still In Love With You)
7. Suzie Q
8. When Sunny Gets Blue
9. Among My Souvenirs
10. Autumn In New York

Cal Collin (g)

Produced By Frank Dorritie
Engineer : Phil Edwars
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, California, April 1981

Originally Released on Concord CJ-166


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第一印象が強すぎると、それを越えるインパクトはなかなか得にくいものだ・・・

2012-05-02 | CONCORD
Jellybeans / The Barney Kessel Trio

ゼリービーンズといえばアメリカの代表的な砂糖菓子、何でもレーガン大統領が好物だったとか。きっとアメリカ人にとってゼリービーンズというと、それぞれ百人百様の思い出があるのだろう。色とりどりのカラフルな菓子といえば自分の世界ではマーブルチョコレート。遠足の時のお菓子の定番でもあった。
歳をとると感受性が鈍くなるのか、物事の興味が無くなってくるのか、様々な物や人に接する機会は増えているのに第一印象の記憶がすぐに薄れてきてしまう。ところが若い頃のそれはいつまで経っても忘れない。不思議なものだ。

バーニーケッセルといえば、自分の第一印象はPoll winnersシリーズのケッセルだ。ケッセルのギタープレーもひとつの要素だが、このアルバムは何と言ってもレイブラウンとシェリーマンとのコラボが最高だった。このアルバムがきっかけで、レイブラウン、シェリーマンもファンとなったので。
しばらくして、当時スタジオワークが多かったケッセルが久々に出したリーダーアルバムということで早速買ったのが”Feeling Free“だった。あのケッセルがどうなっているのか興味津々だった。ドラムがエルビンだったりして新鮮ではあったが、今ではあまり印象には残っていない。自分の中ではケッセルといえばやはりポールウィナーズである。

コンコルドで再び復帰したケッセルであったが、ハーブエリスやチャーリーバードと一緒のグレートギターズの一員としての演奏が中心だった。スインギーなプレーは復活したが、自分の中ではポールウィナーズのケッセルとはやはり別物であった。その後トリオのアルバムも一枚あったのだが・・・・。
一目惚れして付き合った女性と長い間付き合うと、色々な良い面、悪い面が分かってくる。付き合いは深まっても、それに反して最初の印象の再現がなかなか出来ないのと同じかもしれない。何事も進歩、進化しているので、昔の物をそのまま追い求めるのは懐古趣味かもしれないが、第一印象が素晴らしいとそれに引きずられる。

このアルバムは久々のトリオの演奏。ケッセルファンはこのアルバムをどう感じるのか興味が沸く。自分は特にファンということも無く、色々なアルバムを聴いたわけでもないので、どうしてもまたポールウィナーズとの比較になってしまう。
このアルバムはプロデューサーが御大のジェファーソンではなくドリティーのせいか、のびのびした演奏で昔のトリオでのケッセルらしさを感じさせて悪くはないのだが、やはり、ポールウィナーズは当時の人気投票の一位同士が集ったオールスターという重みがある。ジャズというのは生き物だ。形を整えれば再現できるというのではない。同じ構成・メンバーでも月日が経てば中身が変わるのが当たり前、人が変われば同じ構成でも別物になるのがまた楽しみの一つにはなるのだが、新たなポールウィナーズの再現とはいかなかった。とりあえず、自分のジャズ入門時代のファイバリッツであったトリオ演奏を腕達者な3人のプレーでまた聴けたということでよしとしよう。

1. Jellybeans            Kessel 4:08
2. Stella by Starlight        Washington, Young 5:46
3. Mermaid              Kessel 4:27
4. My Foolish Heart         Washington, Young 4:34
5. Juarez After Dark         Kessel 4:26
6. I've Never Been in Love Before  Loesser 5:19
7. St. Thomas            Rollins 4:45
8. Shiny Stockings          Foster 5:14

Barney Kessel (g)
Bob Maize (b)
Jimmie Smith (ds)

Produced by Frank Dorritie
Engineer, Remixing : Phil Edwards

Recorded at Coast Recorders, San Francisco, California, April 1981
Originally released on Concord CJ-164



Jellybeans
Barney Kessel
Concord Records
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昔の自分達の持ち歌も主役を替えて時代に合わせてみると・・・

2012-02-14 | CONCORD
East of Suez / Jackie and Roy

Concordレーベルは設立以来、オーナーのカールジェファーソンが大部分のアルバムをプロデュースしてきた。オーナーカンパニーのワンマン社長の常として、基本的には社長の好き嫌いですべては物事が進む。ジェファーソンのプロデュースしたアルバムもその通りであった。基本はモダンスイング系のプレーヤーで、ベテランで一線を退くか、活動はしていても裏方に徹していて表舞台にあまり立たないプレーヤーを地道に発掘していた。もちろんスコットハミルトンのような新人のスターも生まれたが、これもジェファーソンイメージする昔ながらのスタイルを見事に再現しているからであって、新しい試みやスタイルの新人を積極的に追い求めた訳ではなかった。しかし、これだけアルバムも増えてくると、よく言えば良き伝統へのこだわりを守っていたことになるが、悪くするとマンネリ化した懐メロ集の連発になる恐れが十分にあった。

そこで、一つの対応がラテン系に軸足を置いたサブブランドのPicanteシリーズを作ったことだ。もう一つが、No.2のプロデューサーFrank Dorritie起用して、ミュージシャンの選定や演奏内容の幅を広げていった。ドリティーのアプローチもジェファーソンの基本路線は外さないものの、内容的にはスイング派だけではなく、主流派の範疇までかなり拡大していった。ケニーバレルやジェイムスウィリアムスのアルバムなどはその一例である。中でもジョージシアリングのブライアントーフとのコンビは大成功だったと思う。

このジャッキー&ロイもこのドリティーのプロデュースの作品。単に昔を懐かしむのであれば、チャーリーベンチュラ時代のバップスキャット集をやってもいいのだが。このジャッキー&ロイ自体が、これまでも古いスタイルを踏襲するのではなく、新しい曲や時代の流れを上手く採り入れてアルバム作りをしてきた。とはいうものの、彼らのデュエットのスタイルは基本的な枠組みを大きく崩すことはなく、いつもある種の優等生的な収まりを持っていた。ベンチュラのバンド時代の十八番であった、バップスキャットは彼らの売りのひとつだが、一方で、ジャッキーのディクションのはっきりした歌い方、良く通る声のボーカルも魅力だ。それに加えて、ロイの歌やピアノも良く計算されたバックも彼らの特徴であり、変らぬスタイルだった。そもそも風貌も美男・美女のコンビで見かけもスマートなので、演奏自体も枠を外せなかったのかもしれない。
となると、プロデューサーも変化を持たせるためにどのようなアルバム作りをするかが頭の痛いところだ。

2人は、この録音に先立ち‘80年のコンコルドジャズフェスティバルに登場した。大舞台でのコンサートなると、彼らを有名にした1949年のジーンノーマンのパサディナコンサートをどうしても思い浮かべてしまうが、その舞台で彼らを有名にした当時の演奏から“East of Suez”、“Anthropology”が再演された。しかし、演奏は昔のスタイルを踏襲するのではなく、今回はアレンジ自体も彼らを主役に、そしてバックの編成の違いもあり今風に変えて再演した。このアルバムでの編成はクラールのピアノに、ジェフハミルトンのドラムとブライアントーフのベースというコンコルドでは実績のある2人を配置し、ヴァイブとパーカッションを入れてリズミカルなバック仕立てになっている。
選曲もマイケルフランクスの曲やエリッククロスから贈られた曲から、デビュー当時のバップスキャットが生きるタイトル曲やパーカーのアンソロポロジーまで新旧取り混ぜている。
2人のデュエットはいつもどおりの優等生だが、昔ながらの伝統あるワインを新しいボトルに入れたように新鮮に聞こえる。このグループが長続きしたもの、時代を超えてどんな曲でもあるいはバックでも彼らの持ち味を活かした普遍の正統派ボーカルデュオを貫いたからであろう。





1. Don't Be Blue          Franks, Guerin 4:01
2. D Light             Kral 4:53
3. Close Enough for Love      Mandel, Williams 5:18
4. East of Suez           Stein 5:09
5. Wings of Love          Kloss 5:17
6. Travelin'            Cain, Johnson 4:53
7. It's So Peaceful in the Country Wilder 5:44
8. Anthropology           Bishop, Gillespie, Parker 3:47

Jackie Cain (vol)
Roy Kral (p,vol)
Brian Torff (b)
Paul Johnson (vib)
Jeff Hamilton (ds)
Ralph Hardimon (per)

Produced by Frank Dorritie
Engineer Phil Edwards
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, California in November, 1980

Originally Released on Concord CJ-149



East of Suez
Jackie and Roy
Concord Records
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メッセンジャーズで鍛えられた成果を十分に発揮して・・・・

2012-01-02 | CONCORD
Images(Of Things To Come) / James Williams


2012年の新年は風邪気味で体調も不調で迎えたのですっかり寝正月になってしまった。
昨年復活したこのブログも、今年も中断しないように続けたいと思うのだが・・・・。
今年は何事にももう少し「こだわり」を持ってみたいと思うが、ジャズのアルバムの棚卸しも、Concordレーベルとサドメルへの拘りは引続きししばらく続けてみようと思う。
という訳で、新年の一枚目はConcordから。

何の仕事でも、年をとるとだんだん身近な仲間との気軽な付き合いが増えてきてしまい、若者のグループに自ら身を置くことが少なくなる。だが、きっと仕事に長けた人間は、自ら身に付けた技を少しでも後輩達に伝えようという努力を惜しむことはない。今、会社組織の中で、このような「年寄り」の使い方ができなくなっている、企業にとっても、また教えられる方、教える方にとっても不幸なことだ。このような「職人芸」の伝承が何事においても重要だと思うのだが。

よくスポーツの世界で名選手が必ずしも名コーチや名監督になるとは限らないという話を良く聞く。新人を育てて一流に仕上げるには、プレーが上手いだけでなく、技を教えるそれなりの才能とチームのマネジメント力の両方が必要だからだろう。アートプレーキー&ジャズメッセンジャーズには、グループの編成当初から新人の登竜門としての役割があったが、晩年までその位置付けが変らなかったのは、やはりブレーキーの人柄と拘り、そしてチームマネジメント力があったからかもしれない。ブレーキーのジャズメッセンジャーズというユニットは、きっとモダンジャズ創成期の何かエネルギーを脈々と引き継いでいたのであろう。メッセンジャーズ出身の若手には、演奏の上手い下手とは別にそこで「何かパワーの源」が注入されて巣立っていったように思う。

ピアノのジェームスウィリアムスもその一人だ。メッセンジャーズに在籍中のキーストンコーナーのライブ演奏がConcordのアルバムに残されているが、卒業後のリーダーアルバムもConcordからリリースされた。このアルバムはそれに続く第2作。テナーのビルピアースはウィリアムとはデビュー以来のコンビ、メッセンジャーズにも一緒に参加していた仲間同士なので呼吸もピッタリだ。

演奏の内容は、ハードバップの延長上の新主流派。実にエキサイトだ。Concordレーベル特有の枯れたスマートさではなく、若さを感じされるエネルギッシュな演奏だ。自作の曲はこのアルバムのための曲ではなく、何年か前に作られたとのことでこなれた演奏だし、スタンダード曲の解釈も新鮮だ。タイトル曲の”Images”は、76年に開かれた教会でのコンサート用に書かれた曲だそうだ。まだメッセンジャーズに加入する前だが、まさにその後彼の人生に起ることをその時想像できたのかもしれない。それを実際にこのアルバムの演奏で実現できたのは、もちろんウィリアムス自身のメッセンジャーズでの経験と、それを身に付けた潜在能力を引き出した、プロデューサー、フランクドリティーの手腕かもしれない。

1. I hear a rhapsody
2. You go to my head
3. You’re my everything
4. Wishful thinking
5. Beautiful love
6. Images (Of things to come)
7. My ideal
8. Focus

James Williams (p)
Bill Pierce (ts)
Charles Fambrough (b)
Carl Burnett (ds)

Produced by Frank Dorritie
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, California June 1980

Originally released on Concord CJ-140
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今ではBIG BANDを率いる2人だが・・・・

2011-12-21 | CONCORD
It’s All In The Family / The Clayton Brothers




Concordのアルバムのたな卸しも丁度「クレイトンブラザース」のアルバムの順番になったら、奇しくもこの2人はビッグバンドを率いて只今来日中。自分も今晩のブルーノートのライブに行く予定をしている。このアルバムの録音時にはまだ20代だった2人だが、月日の経つのは早いもの。今では兄のジョンクレイトンは60歳の還暦目前だ。円熟のプレーを聴かせてくれるであろう。



今年は、ビッグバンドは当たり年。ベイシー、エリントンに加えて、マシューズ、ゴードングッドウィン、VJOに加えて、このクレイトンのオーケストラで締めるとは嬉しい限りだ。日本のビッグバンドも定期的に結構多くのバンドが活動している。まだ聴けていないバンドも多く、これは来年に持ち越しだ。いずれにしても、これだけ多くのビッグバンドを聴ける環境にある東京は最高だ。田舎暮らしにも憧れるが、こればかりは東京にいないと楽しめない。

丁度このアルバムを最初に聴いていた頃は80年代に入ってすぐ。いわゆるコルトレーンの影響を受けたプレヤーが多く出てきて、一方でフュージョンも流行に。若手の図太い音を出すよくスイングするサックス奏者にはなかなか巡りあえず、最初のアルバムは印象に残る一枚であった。全体のサウンドはいわゆるコンコルドサウンドと較べると多少荒っぽく泥臭い感じがしたが、これもクレイトン兄弟の若気の至りといった印象であった。しかし、今聴き返してみるとなかなか緻密な演奏だ。特に、べースのジョンのプレーは、クラシックの演奏もしていたこともあり、アルコプレーも見事だ。ファーストアルバムではピアノはパトリースラッシェンであったが、このアルバムではロジャーキャラウェイに。彼のピアノも煌びやかなプレーを得意としているのでこのアルバムには花を添えている。そして、早死にした女性ギタリストのエミリーレムラがConcordに初登場している。弟のジェフも、テナーとアルトに加えてジャズには珍しいオーボエのプレーを披露して多芸振りをみせてくれる。前作に続いてプロデューサーは御大のカールフェファーソンではなくフランクドリティー。そのせいもあって、いつものコンコルドサウンドとは多少毛色の違うサウンドに磨きが掛かってきた。でも、よくスイングする演奏であることには違いがない。

今日のビッグバンドの演奏も、きっと基本はこの頃の路線の延長上。よくスイングする演奏が楽しめるだろう。



1. Broadway
2. Emily
3. Cannon
4. I’m afraid the masquerade is over
5. Remembering you (From “All in the family)
6. Estate
7. Things ain’t what they used to be
8. If were a rich man (From “fiddler on the Roof)

John Clayton (Double Bass)
Jeff Clayton (ts,as,oboe)
Jeff Hamilton (ds)
Roger Kellaway (p)
Emily Remler (g)

Produced by Frank Dorritie
Recorded at Spectrum Studios, Venice, California ,June, 1980

Originally released on Concord CJ-138


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