A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

たった一枚のリーダーアルバムは、たまたま出会ったインディアン音楽がきっかけで・・・・

2015-05-31 | CONCORD
Symbols Of Hopi / Jill McManus

ライブがいいか、スタジオが良いかは一部の恵まれたミュージシャンだけの悩みかもしれない。少なくとも自分の音楽を人に聴いて貰える機会があるのだから。
最近でこそ、アルバム制作もミュージシャンの自主制作が多いようであるが、それも広く聴いて貰うのは大変だ。それでも、ネット時代になって昔より出会いのきっかけや機会は増えたが。

今も昔もメジャーなレーベルでアルバムを出せるのは一部の恵まれたミュージシャンだけ。アルバムを作ることなく活躍しているミュージシャンは、洋の東西を問わず星の数ほどいるのが現実である。
聴く方にしても、彼らの演奏に接する機会もなく、世に出たアルバムの中だけで「誰が良いの悪いの」と議論をしているのも、ある種滑稽な姿だ。最近はライブに出掛ける事が多く、予想以上に素晴らしいミュージシャンや演奏に接すると、余計に感じるようになった。

以前紹介したベースのリチャードデイビスのデュオアルバムAs Oneでピアノを弾いていたのはJill McManusという無名の女性ピアニストであった
ペッパーアダムスがソロ活動を始めた後、ワンホーンのリーダーアルバムを何枚か作ったが、その時のピアノはトミーフラナガンでありローランドハナであった。レコーディングという事もあり、そこでは昔馴染みの名の通ったピアノを起用したのであろう。
しかし、同じ時期にクラブ出演する時のペッパーアダムスカルテットのピアノはこのJill McManusと組むことが多かったという。しかし、アダムスとこのマクマナスが共演したアルバムは一枚も残されていない。当時一緒に演奏したことは一番多かったと思われるのだが。

彼女の経歴を見ると、自ら先頭に立ち、女性だけのグループを作りWomen’s Jazz festivalに参加することもあり、ニューヨークではそれなりに活躍をしていたようだ。ピアノの演奏だけでなく、作曲、教育、そしてジャズの研究家でもあったらしい。
しかし、レコーディングには全く恵まれなかった。リチャードデイビスとのアルバムも、2人で出ていたクラブのライブをたまたま録音したものであった。

その彼女がある時、ニューメキシコを旅しインディアンのホピ族の曲に出会い、魅了される。それをきっかけに生活パターンも大きく変り、毎年夏にはニューメキシコを訪れ、ジャズのワークショップを開催し、ホピの音楽にじっくり取り組みことになる。そのような事が彼女の物事に取り組む姿勢に積極性を感じさせる点だ
そして、その集大成ともいえるホピとジャズの融合したアルバムを作る事になった。売るためのアルバムというのではなく、ある種、研究成果の発表である。

これに協力を惜しまなかったのがコンコルドのオーナーであるカールジェファーソンであった。もちろん、プロデュース、作曲、演奏、そしてメンバーの選定はすべて彼女に任せた。コンコルドは単なるレーベル貸であり、ミュージシャンが自ら好きなようにプロデュースしたアルバムである。

メンバーを見ても、コンコルドのアルバムとは思えないようなメンバー達だ。フロントラインはトランペットのトムハレルに、サックスはデイブリーブマン。ベースにマークジョンソン、彼女が普段接していた仲間達が参加した。
ホピの音楽のリズム、そしてメロディーを彼女の意を汲んで彼らの感性でジャズ仕立てした訳だが、メンバーの人選も適切だったように思う。

Hopi音楽といっても自分は知見が無いが、単調な前ノリのドラム、リズムはラトル、そして自然を称える歌。これらはインディアンの音楽共通の特徴の様だ。
これとジャズとの融合だが、考えてみれば、アメリカの歴史の中で奴隷として連れて来られた黒人以上に迫害を受けたインディアン。彼らの伝統や文化と日常的に接する事は少なかったと思う。彼女はそこに新鮮さを感じたのかも。
そういえば、チャーリーミンガスもインディアンの血が流れていたという。単に黒人音楽とはいえないルーツを彼女も何か感じたのかもしれない。

この頃の、コンコルドのミュージシャンがプロデュースしたアルバムには、このようなアルバムもあった。
このアルバムのお蔭で、彼女も辛うじて今の時代に名を残すことができたが、実際は多方面で活躍していた実力者であったのだろう。

1. Corn Dance
2. Cloud Blessing
3. Symbols of Hopi
4. All The Earth To Bloom
5. From The Four Directions
6. Inner Spirit Dance
7. Acoma

Jill McManus (p)
Dave Liebman (ss,fl)
Tom Harrell (tp,flh)
Marc Johnson (b)
Billy Hart (ds)
Loius Mofsie (cottonwood drum, rattles)
Alan Star (bells, rattles)

Produced & Arranged by Jill McManus
Recorded at Vanguard Studios, New York City, March 1983
Recording Engineer : David Baker

Originally released on Concord CJ-242
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