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「忙しい」と「疲れた」をなるべく言わない

 さて、先日、これまでご縁の無かった、ある雑誌が、ビジネスのやり方(スケジュール管理や情報処理など)や心得を取材したいという用件で、取材に見えました。私は、ビジネスの世界で成功して大儲けしているわけではありませんし、私に取材しても仕方がないのではないか、とも思ったのですが、テーマや取材対象を決めるのは取材する側の責任ですし、自分としては、活動の範囲は広い方が面白いので、明らかに、話すべきことが無いテーマ(専門的なテーマで、全く知識の無い分野など)の場合は、お断りしますが、そうでない取材は、なるべく受けてみようと考えており、この取材も受けることにしました。
 
 はじめに、スケジュール管理は手帳(能率手帳)が中心のアナログが基本であり(4色ボールペンを使っています)、スケジュール情報を関係者で共有するためにYahoo!のカレンダーを使っているという話や、仕事のデータと環境は全て一台以上のノートパソコンにも持つようにしているので、転職しても、仕事の連続性が保てるとか、ニュースを拾うのは、主にGoogleのReaderを使っていて便利であるとか、メールのバックアップ用にGmailを使っている、といった話を一通り話しました。
 私は、将来実現できそうなことを、あらかじめ手帳に書いておいて、自分の目的達成能力に自ら感動する、というような、高度な芸を持っていないので、何れも平凡な話です。

 次に、「ビジネスマンとして、日頃から心掛けていることは何ですか。座右の銘的なものがあれば、それも教えて下さい」と質問されました。日頃から、「私は、ビジネスマンだ」という強い意識を持っているわけではなく、座右の銘的なものがあるわけではないので、しばらく考え込みました。
 敢えて言えば、自分の仕事について、できるだけ他人に依存しない、というようなことを意識しているのですが、これは、ビジネスの一般論からすると、必ずしも、好ましいことではありません。他人に任せるべき仕事は、思い切って任せる、という考え方が大切なことがしばしばあるでしょうし、特に、手掛ける仕事が大きくなると、そういうことでしょう。

 結局、もう少し、身近な話をすることにして、「『忙しい』と、『疲れた』を、なるべく言わないことです」と答えました。
 仕事で誰かと会うと、「お忙しいですか?」と訊かれることが多いのですが、「大いに忙しい、というほどではありません」というくらいに、答えることにしています。
 「お忙しいですか?」という質問は、相手を気遣いながら、相手に自慢話をさせるきっかけを与える、なかなか便利で親切な質問ですが(私も使うことがあります)、これに、100%乗って、如何に自分が忙しいかという話をするのは、間抜けというものでしょう。
 それに、私の場合、一日の時間の使い方が、朝9時から始まって、夜は残業、というような、普通の人と同じではないので、「忙しい」と言えるのか、どうか、時間に余裕がないときでも、自信がありません。また、フリー的な仕事をしている同士だと、「忙しい」は、ほぼ「稼いでいる」と同義に聞こえることがあるので、自分の忙しさを強調することは、マナー的にも得策ではありません。
 そして、何よりも、私は、自分の忙しさを強調するビジネスパーソン(男性ばかりとは限りません)が嫌いなのです。
 これまで私が勤めていたような会社の場合、本当に、余裕が無くなるくらい忙しいということは、実のところ、ほぼあり得ません。時間に全く余裕がないとすると、仕事の要領が悪いか、余計な仕事までしているか、好きで(或いは暇が不安で)仕事をしているか、ほぼこの何れかであり、どれも他人に自慢するような状態ではありません。
 加えて、自分が忙しいという話は、自分にとっては重要でも、相手にとっては、どうでもいい話である場合が殆どですから、これを長々するのは、愚かです。
 結局、「忙しい」、「忙しい」と言っている人は、他人に同情して欲しいか、自分(の仕事)は価値があると自分で思い込みたいか、何らかの自慢をしたいか、の何れかで、話の聞き手にとっては迷惑な存在です。
 尚、私自身は、なるべく(絶対とまでは言えないのですが)「忙しい」とは言わないように、していますが、相手が「忙しい」と言う場合は、時に相づちを打ちながら、にやにやしつつ、耳を傾けることにしています。これは、内心で軽蔑しながら、相手を観察している時間です。

 また、「疲れた」も「忙しい」と同様の意味を持つことがありますし、「疲れた」の場合は、自分の疲労を他人に染すような、気分的な不景気を伝染させるような、嫌な効果があります。もちろん、人間は疲れることがありますが、その場合は、自分で勝手に休めばいいし、他人に向かって「疲れた」を連発するのは、迷惑だと思います。
 また、「疲れた」と自ら口にすることによる、ネガティブな自己暗示効果も、馬鹿にならないので、これは、他人に迷惑なばかりでなく、自分にもマイナスでしょう。
 一本に、集まって話をする際のメンバーの平均年齢が高くなると、病気の話題や、体調の話が多くなりがちですが、これも、あまり気持ちのいいものではありません。
 
 何れにせよ、少々忙しくても、疲れていても、「面白いことがあれば、参加する気はありますよ!」という前向きな余裕を見せながら話をする方が、お互いに楽しいし、話が有意義になりやすいのではないかと思います。
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コメント
 
 
 
Unknown (バブル社員)
2007-08-08 23:23:34
小生の口癖は、おもしろくねーな、なんです。口にすると気分も運命もよくない方向に流れてしまうかな、とは思いつつ言ってます。

以前ある企業トップから、思想家、中村天風氏の本を毎晩読んでいると聴いたことがあります。ご存じでしょうが、絶対的に積極的な言葉を口にしろ、というようなことが書いています。

最近読んだヤメ検の田中森一氏の本、反転にも中村氏を愛読しているという記述がありました。田中氏のほどの方も自己啓発本を手にしているのですね。

山崎さんのお考えは誰かの影響ですか、それとも何かの経験からでしょうか。
 
 
 
「忙しい」と「疲れた」が有効に使える場合 (三匹のこぶた)
2007-08-08 23:47:46
私は接客業ですが、お客様が多ければ儲かる…と言った仕事ではありません。

お客様があまりにも多くてトイレに立つ時間すら取れない慌ただしい一日を終えた後、同僚と「(今日は仕事が多くて)忙しかったね」「疲れた(けどお互いよく頑張ったよね)」と言った会話は、私たちにとって大切なコミュニケーションになっています。女性だからかもしれませんが。

要は、身内同士の会話であれば自慢にもならないし、相手に対する思いやりや労いの気持ちがあれば不快感も与えない、使いようで温かい言葉にもなるものだと思います。

 
 
 
Unknown (山崎元)
2007-08-09 00:48:45
>バブル社員さま

口癖は、「おもしろくねーな」ですか。新入社員時代の私の口癖は「何か面白いことはないものか」でした。昔の同期名簿を見ると、この台詞が載っています。

しかし、上司には不評でしたね。何となく、前向きでない印象を持たれたようです。本人は、面白いことを探しているのだから、十分前向きだ、と思っていたのですが。

中村天風氏は読んだことがありませんが、思想家というに足る方なのでしょうか?哲学の本は、昔から時々読みますが、自己啓発本では、特に、好きな著者はいません。

>三匹のこぶた様

同僚同士が、「今日は忙しかったねえ」というのは、お互いの働きを認め合う、美しい会話というべきでしょう。

しかし、これで、家に帰って、家族に向かって、今日はどんなに忙しかったか、と言い出すと、家族には迷惑ですね。もちろん、「疲れた」場合は、自分の疲れを家族に伝染させずに、さっさと寝るべきです。

「忙しい」も「疲れた」も、相手や状況によるということですね。
 
 
 
忙しい、つかれた、は言いますね。 (ミラ)
2007-08-09 06:07:44
頭使ってそんな体使わないタイプだと。多分。自分の会社以外の社員をしてたら、会社は使う所であり、私は人に依存されたくないからです。帰ってサイドビジネスプランのシュミレーションしなきゃいけないし。家族も個性派だから孤立した世界観で。そういう事が世の中OKで、心労を防ぐと思いますね。話も水かけ論にならず纏まり易くもなって居ますよ。人と会って行くのも大事ですが、現代で刺激的な考えを言い、は?と、その場聞いてびっくりしても、後から思い出すのはやはり中国留学してて、事業やるつもりの青年だったりしますね。革の小物入れに入れて、白で素敵な四色ボールペンは私も持ってますよ。名刺以外の、お洒落だというメモも。同じ活用で。私にとってスケジュールは無駄のない事を人が管理するもの。私より遥かにインテリジェンスがある(無駄ない)人が。そういうの自分はけして得意じゃないから心労はしないのです。(風林火山)(鼠頭牛首)と、あたまの、上に、二つ置いてれば、自分の役割はまぁ達成出来ますし。そう。さいきん、ニュースは自殺願望を覚えたとか、自殺とか、トピックスが、国民の不安をかりますよね。デスクワークに近い事を12時間やったら、眠くなる神経衰弱などにかかった事がありますが、そういう人はネットで買い物より、店に靴を新調しに行ったり、店員に一つ質問したり、若者でも俳句のかっきりとしたイメージトレーニングとかにかかってますよ。
 
 
 
Unknown (ノー天気)
2007-08-09 08:43:54
会社で「忙しい」「つまんない」「疲れた」という言葉を聞くとうんざりします。それに「お疲れ様です」という挨拶も大嫌いです。

「忙しい」・・・たいした仕事してないじゃん君
「つまんない」・・・さっさと会社やめれば?
「お疲れ様!」・・・僕は全然疲れてません!
と同僚や上司に心の中で突っ込みいれてます。(さすがに口にだすと嫌われるのはわかっているので)

会社員10年生(転職2回)ですが一度も手帳、電子手帳もったことがありません。適当にメモ用紙かポストイットに殴り書きしてるぐらいです。だいたい本当に重要なことは人間忘れませんからねえ。

 
 
 
Unknown (山崎元)
2007-08-09 09:08:13
ノー天気さま

こんにちは。ほぼ我が意を得たりのコメントですね。

>「忙しい」・・・たいした仕事してないじゃん君
>「つまんない」・・・さっさと会社やめれば?
>「お疲れ様!」・・・僕は全然疲れてません!

私も、似たことを考えながら、これらの台詞を聞いてきました。

「忙しい」→要領悪いだけでしょ
「つまんない」→転職なら、いつでも紹介するよ
「お疲れ様!」→「疲れてる」と言われても嬉しくないねぇ

といった感じでしょうか。「お疲れ様」は、世間的には、目上にも部下にも使える丁寧な挨拶として推奨されているようで、方々で言われて辟易します。
 
 
 
忙しいという言葉は (天然ポリフェノール)
2007-08-09 09:23:05
おはようございます、山崎 元様

私も「忙しいですか?」と言われた時、「いえ全然!」とか「あんまり忙しくないです」とか答えた場合に相手が困ったような顔をする事が多いので、(感触として)半数以上の人が「忙しい」-本人が本当はそう思っていなくてもー答えているように感じます。

宋 文州さんでしたかのコラムに「忙しい、の忙という字は心を無くすという意味です」と書いてあったように思いますが、ずーっと忙しいといい続けていると自分自身が余裕が無くなってくるような気はしています。
多少忙しくても「全然忙しくない!」と思い込んだほうが(ある程度までは)気楽に質の高い仕事が出来るような気がします。。。
単なる自己満足かもしれませんけれども。

 
 
 
Unknown ()
2007-08-09 15:17:07
自分で自分の状態を「大変なんです」と言う人がいますが、その手の人を私は信用しません。

相手を思いやって「大変ですねぇ」とは使いますが。

自分を「大変だ」と言ったり思ったりする人は

自分で能力無し力量なしを広言しているのに等しいのでは、

と考えています。
 
 
 
同じでビックリ (nekochannome)
2007-08-09 20:09:46
山崎元さま

いつも楽しくかつ有益に拝読しています。
「忙しい」と「疲れた」をなるべく言わない、という考え方は私も賛成で、無理の無い程度に(余り無理するのもいけないと思うのでたまには愚痴ってしまいます)実行しています。

ただ、文中の「スケジュール管理は手帳(能率手帳)が中心のアナログが基本であり(4色ボールペンを使っています」にビックリ。実は私も能率手帳(小型版)に予定を4色ボールペンで書き込んでいるからです。そういう人、多いのかなー??

ちなみに、

 赤=交際事(友人と会う・食事等)
 緑=文化的(?)な事(美術館、コンサート等)
   と旅
 青=仕事関係
 黒=その他

暇な時は、更に色鉛筆で、内容に応じて様々な色で囲んで「楽しみな予定」になるようにしています(笑)。

駄文、すみません。ちょっと嬉しくて書き込んでしまいました。
 
 
 
4色ペンの使い方 (山崎元)
2007-08-09 21:30:18
「疲れた」、「忙しい」を”なるべく”避ける、という点に関しては、同意見の方が多いようで、何となく、安心します。

私の4色ボールペンの使い分けは、
1)赤:〆切(一番大切!)
2)緑:仮の予定や注釈
3)青、黒:本予定。使い分けは適当に。二色あると、見やすい
という大まかな原則になっています。

緑は目立たないので、例えば10日の金曜日と13日の月曜日の予定を両方仮押さえすべき時などに、緑で書き込んで、後から決まった方を青か黒でオーバーライトして確定させて、使わなかった方を緑で消します。緑は、青や黒で上から書いてもよく見えるので、仮の予定に便利です。

また、4色ボールペンは、文章の構成を考える時のメモ書き用にも、便利ですね。中央にテーマを書いて、周囲に関連事項を書いて、関係性によって線でつなげて(「マインド・マップ」みたいな形になります)、色を変えて番号を振ると、短文の構成から、単行本の構成まで、割合簡単にできます。

かつては、文章の構成用に、MacのActaというソフトを使っていたのですが、どうも手書きの方が見通しがいいので、この頃は、A4~A3の紙(A4の方眼罫線の入ったノートをよく使います)と4色ボールペンの組み合わせをよく使います。

4色ボールペンは、LAMY2000(作りがいいし、暇つぶしの際の「手の友達」にもいい)という少々高級な(といっても1万円くらいの)ペンと、パイロットの4色ボールペン(こちらは350円)を使っています。

とはいえ、文章を書くには、PCが必須なので、やっぱりPCが常に近くにないと、仕事にはなりませんね。
 
 
 
逆に言われて嬉しいこと (toyshop)
2007-08-09 23:54:38
職場で一緒になった人の言葉、
「○○さん、仕事やっているとき、楽しそうですね。」
私にとっては、自分が意識していないときにこの言葉をかけられると最高の褒め言葉です。

メールでも、帰宅の際の挨拶でも、個人的に「お疲れさま」廃絶キャンペーンを実施したいのですが、これがなかなかどうして難しいですね。

以前、何かのテレビ番組で森末慎二はどんなに暑くても、口に出して「暑い!!暑い!!」ということはない、ということを聞いたのですが、ここ最近の猛暑ではハードルが高いです。


 
 
 
感想 (国際電話)
2007-09-02 16:38:58
大変勉強になります。
 
 
 
Unknown (山崎元)
2007-09-02 23:14:23
国際電話さま

ご来訪恐縮です。
 
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