評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」
山崎元が原稿やTVでは伝えきれないホンネをタイムリーに書く、「王様の耳はロバの耳!」と叫ぶ穴のようなストレス解消ブログ。
【現代ビジネス】「地方の消滅」にどう対処すべきか
現代ビジネス「ニュースの深層」(隔週連載)に記事を書きました。
※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。
「「消滅する市町村523」増田寛也論考が示す衝撃の人口減少予測。名指しされた自治体はどう対処すべきか?」
雑誌『中央公論』の6月号に載った「消滅する市町村523 ~壊死する地方都市~ 」という記事が話題です。東京大学客員教授の増田寛也氏と日本創世会議・人口問題検討分科会の提言という形で掲載されています。
本論考は出生の約95%を占める20歳~39歳の女性人口に着目し、現状の出生率(合計特殊出生率は1.41)と社会的移動を前提とした場合に、2040年時点で人口が1万人を切る自治体が523自治体にのぼると試算していて、具体的な自治体名を掲載しています。
若者、特に若い女性をつなぎ止めることが出来ない地域は、人口が減少し、自治体が維持出来ないレベルに追い込まれていくという将来予測には、十分なリアリティと説得力があります(データと論理の詳細に関しては、前掲記事をご覧ください)。
名指しされた自治体の、現在の住民や故郷とする人々はもちろんですが、何よりも、その自治体に就職した人々にとっては衝撃でしょう。「将来にわたって安定した就職先」だと思っていた自治体が、徐々に寂れていって、自分が職を必要とする時期にはなくなると言われているのですから。
自治体職員にしてこの有様ですから、「安定した職」というものはないものだ、という現実を認識せざるを得ません。
論文では他にも、首都圏の大地震のリスクを理由に、東京一極集中を止めることを提言していますが、こちらは、経済合理性を欠いているように感じます。
人の生活にも、マーケットとしての経済圏にも、様々なレベルで「規模の利益」が働き、人口の減少はこの逆効果を通じて非効率をもたらします。つまり、日本全体として人口が減るのであれば、各地域で平均的に人口を減らして、広く非効率を負担するよりも、人口が集積する地域に集まって暮らす方が効率的ではないでしょうか。
また、首都圏に限らず、地方に於いて、人口が集まる地域を作ることはよいことでしょう。
首都圏よりも安い土地代や、インターネット及び物流の発達を考えると、東京でなくとも出来るビジネスは数多くあるはずです。
北海道で例えるなら、現存する全ての市を残そうといったことを考えるより、札幌市及びその周辺を快適にするように公的投資を行い、経済的に強靱なエリアを作るべきでしょう。そうなれば、周囲の地域にもメリットは及びます。
その場合でも、人口集積地域から過疎地への経済的支援を拡大して、いわば人口集積地の税金で過疎地の公務員を養うようなことはすべきではありません。
中央公論の論考は、日本の人口問題について、子供を産み育てやすくするための対策や、外国人の移民受け入れについても言及しています。
人口減少による全体的な国勢低下はやむを得ないでしょう。ですが、我々も、個々の国民の生活レベルを合理的に守りながら、しぶとく賢く退却して行きたいものです。
※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。
「「消滅する市町村523」増田寛也論考が示す衝撃の人口減少予測。名指しされた自治体はどう対処すべきか?」
雑誌『中央公論』の6月号に載った「消滅する市町村523 ~壊死する地方都市~ 」という記事が話題です。東京大学客員教授の増田寛也氏と日本創世会議・人口問題検討分科会の提言という形で掲載されています。
本論考は出生の約95%を占める20歳~39歳の女性人口に着目し、現状の出生率(合計特殊出生率は1.41)と社会的移動を前提とした場合に、2040年時点で人口が1万人を切る自治体が523自治体にのぼると試算していて、具体的な自治体名を掲載しています。
若者、特に若い女性をつなぎ止めることが出来ない地域は、人口が減少し、自治体が維持出来ないレベルに追い込まれていくという将来予測には、十分なリアリティと説得力があります(データと論理の詳細に関しては、前掲記事をご覧ください)。
名指しされた自治体の、現在の住民や故郷とする人々はもちろんですが、何よりも、その自治体に就職した人々にとっては衝撃でしょう。「将来にわたって安定した就職先」だと思っていた自治体が、徐々に寂れていって、自分が職を必要とする時期にはなくなると言われているのですから。
自治体職員にしてこの有様ですから、「安定した職」というものはないものだ、という現実を認識せざるを得ません。
論文では他にも、首都圏の大地震のリスクを理由に、東京一極集中を止めることを提言していますが、こちらは、経済合理性を欠いているように感じます。
人の生活にも、マーケットとしての経済圏にも、様々なレベルで「規模の利益」が働き、人口の減少はこの逆効果を通じて非効率をもたらします。つまり、日本全体として人口が減るのであれば、各地域で平均的に人口を減らして、広く非効率を負担するよりも、人口が集積する地域に集まって暮らす方が効率的ではないでしょうか。
また、首都圏に限らず、地方に於いて、人口が集まる地域を作ることはよいことでしょう。
首都圏よりも安い土地代や、インターネット及び物流の発達を考えると、東京でなくとも出来るビジネスは数多くあるはずです。
北海道で例えるなら、現存する全ての市を残そうといったことを考えるより、札幌市及びその周辺を快適にするように公的投資を行い、経済的に強靱なエリアを作るべきでしょう。そうなれば、周囲の地域にもメリットは及びます。
その場合でも、人口集積地域から過疎地への経済的支援を拡大して、いわば人口集積地の税金で過疎地の公務員を養うようなことはすべきではありません。
中央公論の論考は、日本の人口問題について、子供を産み育てやすくするための対策や、外国人の移民受け入れについても言及しています。
人口減少による全体的な国勢低下はやむを得ないでしょう。ですが、我々も、個々の国民の生活レベルを合理的に守りながら、しぶとく賢く退却して行きたいものです。
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
【ダイヤモンドオンライン】日本の銀行業に未来はあるか
ダイヤモンド・オンラインの「山崎元のマルチスコープ」に「 絶好調決算は一過性? 日本の銀行業に未来はあるか 」と題する記事を書きました。(※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。)
<メガバンク3行は史上最高益だが>
2014年3月期の銀行決算は、3大メガバンクを筆頭に「史上最高益」を叩き出すなど、絶好調の結果となりました。
それでは、今年度も「史上最高益」の更新が期待できるか、となると、率直に言うなら、今回の絶好調決算は「一過性」の印象がつきまといます。
消費税増税の景気への影響を見極めるにはもう少し時間が要りますが、景気がこれまでの延長線上でまあまあ順調だとして、既存の貸出債権の改善傾向は続くとしても、昨年よりはペースが鈍化するでしょう。
また、昨年ほどの株価の上昇は期待できそうにないし、現在は日銀が長期国債を購入しており長期金利の低位安定が続いていますが、アベノミクスがこのまま順調に推移して物価の上昇傾向がはっきりすると、長期金利が上昇する可能性がある、といったところです。
<「半沢直樹」の英語吹き替え版が必要だ>
国内最大手の三菱東京UFJの粗利に占める海外比率は、既に4割を超えています。収益的に二番手の三井住友銀行でも、前期の粗利益は海外部門が29%を占める状況であり、メガバンクのビジネスの重心は、着々と海外に向かいつつあります。
そもそも、彼らの既存顧客が続々と海外に出て行く現状では、銀行も外に出ないわけにはいきません。海外ビジネスのウェイトは今後も拡大することが予想されますが、メガバンクは、各行とも海外ビジネス向けの人材が不足しています。
そこで、昨年話題になった「半沢直樹」は銀行が舞台ですので、たとえば、この英語吹き替え版を作って、銀行員の語学研修に役立ててみてはどうでしょうか。
<メガバンク「3行」は多い!>
ところで、「史上最高益」とは言え、日本のメガバンクの収益水準は、国際的な競争力の観点では、むしろ儲け足りないと言ってもいいくらいでしょう。
率直に日本の市場規模を考えると、日本を基盤とするメガバンクが3行というのは、1行多いかも知れません。
同じ競争圏にあっては、コスト構造が1位の銀行が、2位の銀行がちょうどぎりぎりやって行ける条件で競争すれば、1位の銀行は十分収益を獲得しながら、3位以下のマーケットを食うことで成長出来ます。
狭い国内で、3位以下が独自のマーケットを持ったり、サービスで差別化を行ったりすることは現実には難しいでしょう。
これは、メガバンクが3行では多い理由でもあるし、地方の経済圏で3行以上の銀行が安定的に存続することが難しい理由でもあります。
現在、我が国では、国内業務のみの銀行に対して、国際業務を行う銀行よりもハードルの低い自己資本比率規制を適用しています。しかし、業務が国内や特定地域に限定されることは、収益源が細いことに加えて、ビジネス上のリスクはむしろ大きいと考えることが妥当でしょう。
地銀への自己資本規制をメガバンクと同等の条件に引き上げて、適応が難しい銀行から集約を進めるべきと考えます。
<メガバンク3行は史上最高益だが>
2014年3月期の銀行決算は、3大メガバンクを筆頭に「史上最高益」を叩き出すなど、絶好調の結果となりました。
それでは、今年度も「史上最高益」の更新が期待できるか、となると、率直に言うなら、今回の絶好調決算は「一過性」の印象がつきまといます。
消費税増税の景気への影響を見極めるにはもう少し時間が要りますが、景気がこれまでの延長線上でまあまあ順調だとして、既存の貸出債権の改善傾向は続くとしても、昨年よりはペースが鈍化するでしょう。
また、昨年ほどの株価の上昇は期待できそうにないし、現在は日銀が長期国債を購入しており長期金利の低位安定が続いていますが、アベノミクスがこのまま順調に推移して物価の上昇傾向がはっきりすると、長期金利が上昇する可能性がある、といったところです。
<「半沢直樹」の英語吹き替え版が必要だ>
国内最大手の三菱東京UFJの粗利に占める海外比率は、既に4割を超えています。収益的に二番手の三井住友銀行でも、前期の粗利益は海外部門が29%を占める状況であり、メガバンクのビジネスの重心は、着々と海外に向かいつつあります。
そもそも、彼らの既存顧客が続々と海外に出て行く現状では、銀行も外に出ないわけにはいきません。海外ビジネスのウェイトは今後も拡大することが予想されますが、メガバンクは、各行とも海外ビジネス向けの人材が不足しています。
そこで、昨年話題になった「半沢直樹」は銀行が舞台ですので、たとえば、この英語吹き替え版を作って、銀行員の語学研修に役立ててみてはどうでしょうか。
<メガバンク「3行」は多い!>
ところで、「史上最高益」とは言え、日本のメガバンクの収益水準は、国際的な競争力の観点では、むしろ儲け足りないと言ってもいいくらいでしょう。
率直に日本の市場規模を考えると、日本を基盤とするメガバンクが3行というのは、1行多いかも知れません。
同じ競争圏にあっては、コスト構造が1位の銀行が、2位の銀行がちょうどぎりぎりやって行ける条件で競争すれば、1位の銀行は十分収益を獲得しながら、3位以下のマーケットを食うことで成長出来ます。
狭い国内で、3位以下が独自のマーケットを持ったり、サービスで差別化を行ったりすることは現実には難しいでしょう。
これは、メガバンクが3行では多い理由でもあるし、地方の経済圏で3行以上の銀行が安定的に存続することが難しい理由でもあります。
現在、我が国では、国内業務のみの銀行に対して、国際業務を行う銀行よりもハードルの低い自己資本比率規制を適用しています。しかし、業務が国内や特定地域に限定されることは、収益源が細いことに加えて、ビジネス上のリスクはむしろ大きいと考えることが妥当でしょう。
地銀への自己資本規制をメガバンクと同等の条件に引き上げて、適応が難しい銀行から集約を進めるべきと考えます。
コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )