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「新聞の通信簿」(経済記事担当)を振り返る

 筆者は、「週刊現代」で「新聞の通信簿」という新聞6紙の記事を較べ読みする連載を担当していた。魚住昭氏、佐藤優氏、青木理氏と私の4人でリレー連載していたものだが、現在発売中の「週刊現代」(11月14日号)をもって、筆者の担当回は最終回となる。最近編集長が交代したこともあって、連載の見直しをするようだ。「週刊現代」は、記事に読み応えが増えて、グルメ情報とオヤジ読者向けのグラビアが充実してきている。雑誌としては面白くなっているので、今後に期待したい。

 連載最終回の原稿は、連載担当期間中最大の事件であった金融危機を取り上げた「リーマンショック一周年」の記事の採点と、過去通算40回分の採点の発表を一緒にしたものだったが、過去の採点表を載せるスペースがなかったので、ここでご紹介する。

 連載メンバー4人の中で筆者は、いわば「経済部」であり、主に経済記事を取り上げて評価したが、過去に取り上げたテーマを一覧して眺めてみると懐かしい。

 あくまでも経済記事が中心で、それも全紙を均等に深く読んだのは連載担当の場合だけなのだが、個人的な印象としては、点差は大きくないが、「読売新聞」の取材がしっかりしているように思った。民主党のマニフェストや公的年金の損失額を手に入れるのが明らかに他紙よりも早かったし、経済記事の見せ方も気が利いていた(ただし、社説は切れ味が今一つだと思う)。他紙に対する評価は、「週刊現代」をご一読いただきたい。

 この連載を止めると、自宅購読に6紙は多すぎる(片付けだけでもかなり大変だ)。連載を始める前までは、自宅で「日本経済新聞」と「朝日新聞」を読んでいた。これからどうするかというと、もともと自宅で読んでいた2紙に「読売」を加えた3紙を読むことにした。仕事上「日経」は必要だとして、ここのところ「朝日」が頼りない印象だし、「朝日」とは別の意見を持ちやすい新聞をもう一紙読む方がいいと考えたので「読売」を加える(佐藤優さんによると、霞ヶ関の人々が気にしている新聞は圧倒的に「朝日」らしい。現段階で「朝日」は止めにくい)。

 私の場合は、「新聞の通信簿」が終了しても、その他の原稿書きなどを考えると、新聞を3紙購読しても十分にペイするが、仮に、私が近年就職したビジネスパーソンだとすると、新聞は自宅で購読しなくてもいいような気がする。

 ロイター、朝日、日経、時事通信くらいに2、3の海外メディアを加えてニュース・リーダーに登録しておいて、毎日チェックするとニュースに「遅れる」ということは先ずないし、いつどんなニュースがあったかが分かれば(つまりニュースを検索すれば)、事柄の詳しい内容を知りたい場合に十分な手掛かりとなる。自宅で紙の新聞を購読することは必ずしも必要ではない。アメリカなどで見られるように、紙ベースの新聞を中心とするメディアの経営は今後苦しいに違いない。

 今しばらくは(長くても数年の「しばらく」だろうが)、新聞社が記事の内容に責任を持っていて、記者も新聞社も名誉と法的なリスクを負って記事を発表していることで、新聞の記事に一定の権威がある。しかし、今後、書き手が実名のニュースが発表されるようになると、ネットの記事でも(たとえば一ジャーナリストのブログでも)、書き手にとってのいわば「賭け金」は変わらない意味を持つので、記事は同様の信憑性を持つようになるだろう。そうなると、紙の新聞そものには特別な権威や価値が残るわけではない。現在は過渡期だろう。

 複数の新聞社が現在のJALと似た経営問題を抱え、新聞記者OBの年金を削減できないかといった議論をするようになる時代が遠からず訪れるようになるのではないだろうか。ただし、この場合、新聞社は構造不況業種になるが、個々の記者の中にはジャーナリスト個人として大きな経済的価値を持つようになる人が現れるのではないか。経済価値が、新聞紙や新聞社ではなく、個々のジャーナリストなりニュース記事なりに対して発生するようになるなら、それはいいことだろう。

 そうした場合に、たとえば、ジャーナリスト個人が広告スポンサーの影響を受けずに客観的な記事を書くことが出来るかが問題になる。もちろん、記事の質に関する評価情報にもニーズもあるにちがいない。何らかの形で「ジャーナリストの通信簿」的な第三者による評価が行われることになるかもしれない。

 
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