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プレゼント、或いは靴下としてのマニフェスト

 ダイヤモンド・オンラインに先週は民主党、今週は自民のマニフェストについて書いた(http://diamond.jp/series/yamazaki/bn.html)。お暇な方はご一読下さい。

 それにしても自民党のマニフェストは、はっきりいって勝負を投げたような雑な作りで、図やデータが乏しく、しかも具体的な約束がほとんど無い、意見の羅列的な文書だ。たとえば、無年金、定年金の方に対して3年以内に措置を講じる、というような書き方の項目が多く、これでは、どんな措置をするのかが書かれていないから、「約束」としては評価のしようがない。また、民主党マニフェストは個々の政策の実施に幾ら掛かるかが明示されているが、自民党マニフェストはこの点が詳しくない。よく話題になる「財源」については、自民党マニフェストの方が曖昧だといえるだろう。この点を忘れて、民主党マニフェストの財源の現実性ばかり論うのは如何なものだろうか。

 他方、民主党のマニフェストが「お金のばらまき」に力点があることに関しては、評価が分かれるようだ。私は、たとえば景気対策やデフレ対策で財政赤字が必要な場合、官僚(の裁量)を通じてばらまく自民党マニフェストよりも、お金を直接国民に配って使い方は国民に任せる民主党マニフェストの方がいいと思うが、必ずしもそう思う人ばかりではないようだ。
 定額給付金の際にもあった批判だが、「税金でわざわざ集めたお金を、また現金で配るというのは全くバカバカしい」という意見を聞くことがある。

 この辺りの評価は、たぶん、論理よりも好き嫌いや慣れで評価が分かれるのではないか。たとえば、仮に読者が一定の金額の誕生日のプレゼントを貰える場合、モノで貰うのが嬉しいだろうか、それとも現金を貰う方がいいだろうか。

 相手が妻(夫)や恋人からのプレゼントなら、現金よりも、何か意味を込めて選んだモノがいい人が多いかも知れない。しかし、これが、市役所や区役所の名前も顔も知らないオジサンから貰う場合だと、現金の方がいいという人が多いのではなかろうか。
 民主党マニフェストでは、子供がいるかいないかで随分条件がちがう点が、特に現状と比較すると不公平かも知れないが、子供を育てるにはお金がかかるので、官僚の裁量が働かない形でお金を配ってしまう方法としては、まあまあではないかと思う。
 デフレの現状を考えるに、定額給付金に加えて15兆円の補正予算があった今年度から、いきなり緊縮財政に舵を切る訳にもいかない。何らかの意図的財政赤字の継続はむしろ必要だ。

 しかし、民主党のマニフェストにも、期待の年金制度改革へのスケジュールに妙に余裕を持たせていることや、農家への戸別所得補償、最低賃金アップに製造業派遣の原則禁止など、「これはフェアなのか?」、「これで大丈夫なのか?」といった疑問が多々ある。

 結局のところ、両党のマニフェストは、何れも穴の開いた靴下のようなものだ。ただ、自民党の靴下はもう随分臭うので、何はともあれ、一度取り替えてみよう、という辺りが、今回の選挙の平均的な民意ではないだろうか。

 自民党、民主党のものに限らず、次期総選挙に向けたマニフェストについて、ご意見を頂戴したいと思います。

(注: 選挙にあってインターネットのホームページは「図版の掲示」に近いものとして解釈されることが多いらしく、選挙が公示されると、特定(政党)候補者の当選を意図する文書を掲示し続けることに対して、法的な問題が生ずる可能性があるようです。
 当ブログ程度の影響力に対して問題が生じるとは思えませんが、場合によっては(どこかから指摘があれば)、選挙期間中だけ、エントリーとコメントを非表示にする可能性があるので(投票終了後には元に戻します)、この点をお含み置き下さい。)
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