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世界タイトルマッチ2戦

 幸運なことに6月12日の世界タイトルマッチ2戦のチケットが手に入った。WBAのスーパー・フェザー級、エドウィン・バレロ対嶋田雄大、WBCバンタム級の長谷川穂積対クリスチャン・ファシオの2カードだ。席は眼下にアリーナを見下ろす武道館的には1階席だが、感覚的には2階席の最前列だった。私のような素人には、リングサイドよりも試合の全体がよく見えて有り難い。
 目当ては、何と言ってもバレロ選手だった。試合前の時点で23戦全勝全KOの戦績だし、WOWOWで何度か見た試合も強かった。ねらい澄ましたクリーンヒットが当たって相手が倒れるというよりも、普通に当たるとそのうちに相手が傷んで倒れるというような、勝ち方をする怖い選手だ。今、生で試合を見たい選手として、間違いなく世界の上位5人に入る。
 10歳年上で世界初挑戦という嶋田雄大選手の試合は、これまで2度ほど見たことがあって(かなりの格下相手であまり参考にならなかったが)、上手い選手だとは思っていたが、今回は相手が悪い。私はバレロ選手を応援して(帝拳ジムは近所にあるから地元選手の応援でもある)見ていたのだが、同時に、嶋田選手に事故がないかを心配しながら観戦していた。
 バレロ選手はサウスポーだ。左を引いて斜めに立って構えるのだが、右足の先が相手に向いていて、左足はそれに対して90度左向きの独特の構えから、パンチを繰り出す。この構えのせいか、左のパンチが遠くまで届く。日頃は眼鏡をかけていて優しい顔をしているが、試合中の表情は人間というよりも、肉食の哺乳類が獲物を狙う顔だ。パンチは殆どがストレートだが、綺麗に真っ直ぐではなく、振り回すようなストレートで、軌道が何種類かあり、手がよく伸びて遠くに届く。そして、たぶん当てる時の手先の力が並はずれて強いのだろうが、パンチが異様に効く。
 嶋田選手はよく頑張ったと思う。バレロ選手のパンチを避けてから、軽くパンチを合わせて、直ぐに体を沈めてクリンチに行く作戦だったが、3Rくらいまで、バレロ選手の左をよくかわして、試合を作った。確か3Rだったが、右のパンチが当たってバレロ選手の顔が上を向いた。
 しかし、嶋田選手から攻撃できるような展開にはほど遠い。掌を相手側に向けて招き猫風に構えて必死でパンチをかわして、クリンチに行くのが精一杯に見えた。バレロ選手にパンチが当たっているように見えて会場が沸いた時が何度かあったが、そのうちの半分はパンチ自体はかわされていて、嶋田選手の腕がバレロ選手の首に交差しただけだ。バレロ選手はパンチの当て勘だけでなく、逃げ勘もなかなかいい。しかも、過去の試合で、フルラウンド戦えるスタミナがあることも分かっているので、嶋田選手側から見ると、楽しみが殆ど無い。
 5R以降、バレロ選手の攻撃が嶋田選手を捉え始める。徐々にクリンチがふりほどかれるようになった。8Rにパンチをまとめてダウンを奪い、そのままTKO勝ちした。終わってみると、嶋田選手の顔は左半分がつぶれるように歪んでいた。
 翌13日の新聞によると、バレロ選手は、減量苦を理由にライト級への転向を表明したようだ。スーパー・フェザー級にはWBCチャンピオンで今や大スターのマニー・パッキャオが居るので、統一選を見たかったところだが、仕方がない。1階級上で壁に当たるとは思えないので、次に誰とやってもバレロ選手が勝つだろうと予想しておく。
 長谷川選手の試合は、相手のファッシオ選手が不出来だったのかも知れない。1Rの様子見の後、2R目に左のショート・パンチが綺麗に入って、ファッシオ選手が右手を身体の下に折りたたむような奇妙な倒れ方をしたところで殆ど勝負がついた。その後も的確に詰めて(←新聞によると、「詰め」が進歩したらしい)、危なげなくTKO勝ちした。
 長谷川選手は、殆どパンチを食っていない。リングサイドに、奥様とお子さん二人が居て、心配そうに見ていたが、毎回今日のような試合ならいい。この強さ、上手さなら、アメリカでビッグ・マネー・ファイトが出来るのではないだろうか。
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