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勝負写真用の写真館

 コラムのライターが集まった、ある新聞社の会合で、私とほぼ同年代のさる分野のコンサルタントの女性が、顔写真入りの自己紹介のパンフレットを配った。20数人居合わせた出席者は、パンフレットの顔写真と実物の彼女を見較べて息を呑んだ。

 彼女はおもむろに話し出した。「みなさん、このパンフレットの顔写真と、実物の私を見て、似ても似つかないって、思っていらっしゃるんでしょう」。まさに図星だった。露骨に頷いた出席者が、二、三人いた。

「せっかくだから、いいことを教えて差し上げましょう。実は、千駄木に、いくらでも望むだけ綺麗に写真を撮ってくれる写真屋さんがあるのです。このパンフレットの写真はそこで撮って貰いました。みなさんも、どうしても出来のいい写真が必要だっていうときがおありでしょうから、その時のために、覚えて置いておかれるといいですよ」。中年女のいい意味での度胸と落ち着きが功を奏して、彼女に向かっていた出席者達の批判的な関心は、腕のいい写真屋さんを教えてくれる彼女への感謝へと、すっかりすり替わってしまった。

 その写真館の名前を「スタジオ・ディーバ」という(http://www.studio-diva.net/index2.html。TEL/FAX (03)3827-3584)。そのスタジオ・ディーバに、3月31日、なんと、この私が、写真を撮って貰いに行くことになったのだ(そうなった事情は後で書く)。

 私は、鞄にシャツとネクタイを3組ほど入れてスタジオに向かった。スタジオは、地下鉄千代田線の出口を忍ばず通りに沿って少々根津方面に向かって移動し、小路を右に入ったところにある一軒家だった。一階と二階の両方がスタジオになっているようだ。「ようだ」というのは、私は一階のスタジオでメーク、着替えから撮影まで全て済ませたので、上階を見ていないのだ。

 撮影は、服装も含めた全体を指示するスタイリストの女性とメークの女性、それにカメラマンの男性の3人体制で進められた。
 メークは、テレビ局のメークよりもかなり手間を掛けて(時間の印象で3、4倍)行われた。当日は月曜日で、寝不足気味(ここのところ週末から週初にかけて原稿の〆切が集中している)のせいもあり、冴えない顔色だったが、これで復活した。また、私は化粧をする習慣がないので、詳しいことは分からないが、色の塗り方で、幾らか顔が小さく写るようにしているようだった。
 服装は3パターンで撮影し、それぞれヘアスタイルを変え、メークも少しずつ修正している。シャツとネクタイの組み合わせ、ポケットチーフの色と形など、何パターンも試して、検討してくれる。ちなみに、私はポケットチーフなどという洒落たものを日頃使っていない(「使えていない」というのがより正しいが)ので、私をよく知る人が出来上がりの写真を見ると、第三者の助けを借りたことが明らかに分かる。
 所要時間は合計一時間半程度だった。せっかく撮りに行くなら、時間はたっぷり確保して行く方がいい。

 メークと着替えなど、準備には時間が掛かるが、カメラマンによる撮影自体は短時間で済み、非常に手際がいい。私のような素人の被写体は、表情を維持することが難しいし、表情を変えようとするとだんだん硬くなるので、これはありがたい。私は取材を受ける際にカメラマンに写真を撮られることが月に3、4回程度あるので、割合写真を撮られることに慣れている方だと思うが、それでも、ワンポーズを長々撮られるのは苦手だ。
 ライトボックスで柔らかくしたストロボ光を使っていて、目の前下方には白の自家製レフ板がかなり凝った角度で数枚配置されている。デジタル一眼レフで撮影するので、光の回り具合を液晶画面で確認している。
 撮影データを見ると(出来上がりはデジタル・ファイルで渡してくれる)、カメラはニコンのD80(その他の機種もごろごろあるがニコンが中心のようだ)で、レンズは28-70ミリF2.8のズームレンズ一本だった(撮影データには28-75ミリでF2.8と出るが、75ミリ迄というズームの製品は記憶がない)。レンズ交換が入らないので、テンポがいい。撮影に使う焦点距離は50ミリから70ミリの範囲を使っているようで、35ミリ・フルサイズの換算では75ミリから105ミリくらいのポートレート撮影でよく使われる焦点距離だ。何れも、ISOの設定は100、絞りがF11で、シャッタースピードは1/100だ。シャッターはカメラを三脚(クイック・セットのハスキーか)に載せて切っている。

 ポーズは、20度くらい右か左に身体を向けて、顔だけ正面を向く形が多い。こうすると、ウエストの部分が幾らか絞られた感じになり、真正面から撮るよりも幾分痩せて見える。出来上がりの写真を2、3枚見て、家人は「5キロ痩せて見える」と言って笑っていた。
 一つのポーズにつき、5カットくらいテンポ良く撮るが、最後の2、3枚は「口を大きく開けて笑って!」「そう、いいねぇ」「はい、口を軽く閉じて」というパターンで締めることが多かった。私個人は、口を開けて笑っている自分の顔があまり好きではないのだが、思い切って口を開けて笑った後に口を閉じると、なるほど柔らかい印象の表情が出来る。素人被写体は、「笑顔で」などと言われても、注文を聞いて表情を調整しているうちに、みるみる顔がこわばってくる。顔の筋肉を動かしてから、目的の表情に着地させる方がスムーズだ。この撮影パターンは、日常の写真撮影にも応用が利きそうだ。

 撮影結果は、CD-Rに焼いてその場で渡してくれる。私の手元には、数十枚の画像がある(JPEGファイルで一枚が700~800KBくらいのサイズだ)。料金や写真の使い方に関しては、スタジオ・ディーバに直接確認して欲しいが、写真使用の自由度は高いようだ(出版物などに使う場合は相談してほしいと言っていた。クレジットを入れることを求める場合があるらしいが、概ね自由に使えるようだ)。

 時間は掛かったが、撮影は終始快適だったし、出来上がりには大いに満足だ。冒頭に紹介した女性コンサルタントの場合ほどの差はないと思うが(事後的に修正はしていないし)、実物よりも明らかに感じがいいと、本人が思う(たぶん、他人はもっとそう思う)。読者も、何らかの目的で「勝負写真」が必要な場合には、この写真館を使ってみるといい。

 ただ、ポケットチーフも、ヘアスタイルも、目下のところ、自分では再現不可能なのが残念だ。「出張メークのサービス(有料)もありますよ」と言っていたが、私の場合、そこまで凝る必要性はない。

 さて、撮影の目的だが、実は、4月から株式会社オーケープロダクション(大橋巨泉さんの「O」と「K」だ。http://www.okpro.jp/)に講演、イベント、テレビ、ラジオなどの「出演もの」に関するマネジメントをお願いすることになり(著述、コンサルティングなどの活動は除く)、同社で使うパンフレット用の写真が必要になった。そのオーケープロダクションが連れて行ってくれたのが、スタジオ・ディーバだったのだ。
 「オーケープロダクション所属」という形になって、何がどう変わるのかは、まだよく分からないが、小倉智昭氏のマネジャーをしている宇野さんという方が声を掛けてくれたので、頼んでみることにした。小倉智昭氏(同社の取締役である)とは「とくダネ!」で何度もご一緒しているし、大橋巨泉氏(日本にはあまりいらっしゃらないが)にも何かと親近感があるが(将棋、競馬。政治的にハト派など)、若いマネジャーさんが私に興味を持って誘ってくれたことが、同社と契約することにした一番の理由だ。

 写真は、数十枚の中のベストカットではないと思うが、写されてている様子がよく分かるもので、「はい、口を開けて笑って」の次に写したものだ。
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