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政府ファンド(SWF)についてTV番組で討論しました

 先日、朝日ニュースターの蟹瀬誠一氏が司会の「頂上決戦」という討論番組の収録に行って参りました。「3月1日(土)午後6:05 ~ 7時ほか」で放映される予定です。ゲスト出席者は、政府ファンド推進派の田村耕太郎参議院議員、国際ジャーナリストの中岡望氏、加えて私です。

 番組の内容に触れるとネタバラシになってしまうので、放映が終わるまでこの番組について当ブログに書くことは控えようかと思っていたのですが、既に田村議員のブログに収録の様子があれこれと書かれているので、番組の宣伝も兼ねて、討論本編以外の内容について、幾つか書いておきます。ただし、基本的には、討論内容そのものについては番組を見て下さるように、とお願いしておきます。
(田村議員のブログ:http://kotarotamura.net/b/blog/index.php?itemid=2088)
 実は、拙宅のテレビの契約の関係で、現在、私は朝日ニュースターを見ることが出来ないので、番組をご覧になった皆様のご感想に興味があります。ご批判も含めて、ご遠慮なくコメント下さい。

 注目の田村議員のファッションですが、収録当日は蝶ネクタイではありませんでしたが、それ以上にインパクトのあるネクタイ周り、及び全体のコーディネートでありました。話の(特に前半の)勢いも含めて、オリエンタル・ラジオの二人のどちらかにこれくらいの爆発力があれば「オリラジ経済白書」は続いていたかも知れない、と思わせるものがありました。彼は芸人型の政治家なのかも知れません。

 田村議員のブログには「今日の私の目標は激しい議論を仕掛けてこの問題の注目度を高めること。よって少々けんか腰のスタンスをとる。パフォーマンスでけんか腰を演じられるになった点が私の最近の唯一の進歩だが、皆さんを不快にさせたとしたら失礼しました・・・テレビでは仕掛け大事だと思うのでどうかご容赦ください」とあります。
 事情が本当にこの通りだったのか、あるいは後からこう説明せざるを得なかったのか、本人以外に断定できる人はいませんが、率直に言って、番組の前半に見せた彼の「進歩」には些か迷惑な面もありました。私に対する物言いはまあいいとして、中岡氏に対する物の言い方は、中岡氏の職業を考えるともう少し丁寧であっても良かったのではないかと思っています。田村氏のブログの文章にも同様のことを思いますが、中岡氏とは、よほど波長が合わなかったのでしょう。もっとも、その原因の半分は田村氏の「けんか腰」にあったように見えました。
 何れにせよ、田村議員が世界の国家ファンド関係者に直接会っているということや、自民党内で何度も国家ファンドについて検討していているということよりも、なぜ、どのように国家ファンドは上手く行くのかということの論理的な説明をしてくれた方が(私は当然反論するでしょうが)、論点が整理できて良かったのではないかと思いました。

 繰り返しになりますが、ご興味のある方は、是非、番組をご覧下さい。

 日本版国家ファンドに関する、現在の私の大まかな立論は以下の通りです。

(1)国民は国に本来自分達の資産を運用して貰う必要がない。国家ファンドの運用資金があれば国民に返すべきであり(「民間で出来ることは民間で」)、政府のバランスシート圧縮こそが必要だ。

(2)国家ファンドが正当化しうるのは、国家ファンドの形で運用すると民間が運用するよりも運用が上手く行くという確度の高い期待が持てる場合だけだが、実際には、国が国民に対して責任を負って運用するというスキームは、通常の運用よりも不利だ。
 たとえば、運用計画を策定し国民の承認を得なければならない手続き面は運用に不利だし(説明責任や情報管理は完全なクリアが難しい問題だ)、全体の運用計画を誰が作るか(パフォーマンスの太宗は資産配分段階で決まる)、運用者を誰がどうやって選ぶか(マネージャー・ストラクチャーの問題。素人がプロを評価し選択するという「飛躍」が必ず介在する)、という重要問題をどうクリアするかが難しいし、政府の民間への介入を避けることが運用の制約になるし(たとえば議決権を有効に使えない)、そもそも巨額の資金の運用は簡単ではない。

(3)上記にかかわらず国家ファンドを強行しても、運用業者を喜ばせるだけだろう。国家ファンドは大きなカモになる。加えて、不健全な利権の源にもなりかねない。(これは私の推測ですが、現実的な心配だと思います)

 番組を見て、ご心配される視聴者がいらっしゃるといけないので、番組に直接関係のない話を書いておきますが、収録終了後、田村議員とは、握手をして別れました。案外柔らかいしっとりとした手でありました。
 また、この時に彼が言った台詞が印象に残っています。
「山崎さん、あなた、変わっていますね。私が会った金融の人は、みんな『うちに商売を下さい』と言う人ばかりなのに、あなたは、そう言わない」
 たぶん褒めて下さったのだと思いますが、同時に別の心配が頭に浮かびました。彼が接触した金融マンの大半が商売目当ての人だとすると(確かに、他に「目当て」はなさそうですが)、国家ファンド推進派の議員諸氏は、質の悪い金融マン(商売の能力は優秀なわけですが)から運用業者に都合のいい情報をたくさんインプットされているのではないか、という懸念を持たずにはいられません。上記の私の論点の(3)には大いに現実味があります。

 なお、<ちゅう>さんからご教示がありましたが、国家ファンド推進派の旗頭である山本有二前金融担当相が国家ファンドについてインタビューに答えています。
(http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-30536120080227)
 <ちゅう>さんもご指摘の通り、突っ込み所が満載で、私の(1)~(3)の良い補強材料となる発言だと思います。運用のことをこれだけ知らない人が金融担当大臣に就くことがあるというのが、民主主義の妙味でもあり、恐ろしいところでもあります。しかし、大丈夫なのかなあ・・・。

 気分的には、自民党の国家ファンド推進派の会合に乗り込んでいって、技術的な問題も含めて、何がどう問題なのか説明しに行きたいくらいのところですが、彼らの「夢」や「熱意」は、「論理」では説得し切れそうにないので、遠慮しておきましょう。
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