大木昌の雑記帳

政治 経済 社会 文化 健康と医療に関する雑記帳

地球温暖化(1)―危機感と本気度が感じられない日本―

2021-11-09 11:09:04 | 自然・環境
地球温暖化(1)―危機感と本気度が感じられない日本―

現在、イギリスのグラスゴーでCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)が
10月31日~11月12日に期間で開催されています。

言うまでもなく、この会議は、温室効果をもつ炭酸ガスが排出されることによって地球の気温
が上昇する、温暖化をいかに防ぐか、を議論する場です。

この条約は1994年に結成された締約国会議(COP)で決定され、以来、今年は26回目
となります。1997年の第3回は、京都で開催され、日本がリーダーシップをとって、いわ
ゆる「京都議定書」が締結されたことは良く知られています。

今回、国の内外で注目されていたのは、新たに誕生した岸田首相が、温暖化にたいする日本の
対応をどのように世界に向かってどのような発信するのか、という点です。

というのも、日本を含む、温室効果ガス(Co2)を他の火力と比べても多く排出する石炭など
を燃料とする火力発電の廃止をグテーレス国連事務総長は求めていたからです。

さらに、Cop26の会議に出席する前に、主催国イギリスのジョンソン首相との電話会談で、岸
田首相は、日本が火力発電を止める方針を、ぜひ会議で打ち出して欲しい、と強く求められて
いたからです。

これに対して、岸田首相は、あれこれ口実をもうけて結局、ジョンソン首相の要請に応じなか
った経緯があります。

私は、今回のCop26で岸田首相が、世界の潮流である脱炭素への積極的な動きを打ち出すとは
思いませんでした。

これは岸田首相個人というより、自民党という政党がもっている根本的なエネルギー政策に関
わっています。

菅首相は2020年10月26日の所信表明時に、2050までに「カーボンニュートラル」
(炭素ゼロ)を達成する、と公言しました。

しかし、この時にはどんなプロセスでどのように達成してゆくのか、についての具体的なプラ
ンは示しませんでした。

それどころか、「安全最優先で原子力政策を進めることで安定的なエネルギー供給を確立する」
と述べ、28日の衆議院代表質問では「原子力を含むあらゆる選択肢を追求する」と述べてい
ます(『東京新聞』2020年10月30日)。

自民党は、あくまでも原子力発電を維持し、さらに増やしてゆこうとする方針をもっています。

それと同時に、石炭火力発電へのこだわりも強く、国際環境団体「グリーンピース・ジャパン」
エネルギー担当のハンナ・ハッコ氏は、温暖化対策の国際的な枠組みを定めた2015年の「パリ
協定」採択後も、日本では15基の石炭火力発電所が新たに稼働した、と指摘しています(『東
京新聞』2019年12月5日)

それどころか日本は現在、バングラデッシュのマトバリとインドネシアのインドラマユに、日本
では許可されないような巨大石炭発電所の輸出を推進し、建設中です。

このような自民党の姿勢は岸田首相も引き継いでいますから、岸田首相が脱炭素への積極的なメ
ッセージを発表するとは期待していませんでした。

しかも、若い世代の人たちも私と同じような不信感をもっていたようです。

10月24日の総裁選討論会で、オンラインから高校生の質問に対する岸田氏の回答が、彼の温暖化
にたいする認識不足、無関心さを物語っています。

この高校生は「このままでは、(総裁選)候補者の皆さんの子孫も気候変動によって殺されるか
もしれない」と将来へ強い危機感を抱いていることを訴え、「皆さんの気候変動についての対策
をお聞かせ下さい」と問いかけました。

これに対し、岸田氏は「国もエネルギーに関する政策をいろいろ考えていく」としたものの、具
体策は何も触れず、「国民の皆さん一人ひとりの行動によって、この問題ずいぶん変化がありま
す」と述べた。その行動として、岸田氏があげたのが、「電球であってもLED電球なら電力使用
量は4分の1」「シャワーとお風呂、比べてみると格段、お風呂の方がお湯の使用量は少ない」
というものでした。

この回答にツイッター上では、「唖然としてしまった」「気候変動対策を聞かれて、LEDの話を
する首相候補は割とヤバイと思うの」「岸田さんマジで無いわ。気候変動に対する危機感とか全
く分かってない」との声も聞かれました(注1)

この高校生が聞きたかったのは、LED電球やシャワーのお湯の使用量などのことではなく、将来、
自分たちが成長した時、果たして日本や世界は温暖化の影響で住みにくくなってしまう可能性が
あるので、それにどう対処してゆきますか、という全体の状況に対する回答だったのです。

岸田という人は、問題の本質にたいする認識も危機感もないようです。そして質問にたいする答
えのピントがずれています。

思った通り、Cop26での演説では、欧米各国が温暖化の危機と脱炭素を訴えていたのに、岸田首
相は、前もって要請された、石炭火力発電の削減どころか、石炭火力発電そのものへ言及さえ一
切、ありませんでした。

これは首相に就任したはじめでの実質的な外交デビューでしたが、参加国は大きな失望を感じた
に違いありません。

石炭火力発電と並んで、岸田首相が日本の電機エネルギーに関して頼ろうとしているのは原子力
発電です。

建前としては、資源が乏しい日本で、電力需要を満たすには、原子力は必要、という理屈と、原
発はCo2を出さない、クリーンなエネルギーであるという理屈です。

9月18日、記者クラブで行われた自民党の総裁選の討論会で、かねてより原発反対の立場を表明し
ていた河野太郎氏が核燃料サイクルについて、「再処理してもプルとニウムの使い道がなかなか
ない」から中止すべきだ、と訴えました。

これには。ちょっと補足説明が必要です。原発を稼働して生成される使用済核燃料からプルトニ
ウムやウランを取り出し、混合酸化物(MOX)燃料に加工して原発や高速増殖炉で再利用する仕
組みを、核燃料サイクルと言います。

河野氏が指摘したのは、こうして取り出したプルとニウムは使い道がないから、核燃料サイクル
を注視すべきだ、ということでした。

実際、こうしてできた混合酸化物燃料を使って再利用する高速増殖炉は、いずれも失敗し、破綻
しています。それでも、自民党政権が、これにこだわってきたのは、もし、このサイクルを中止
すると原発を稼働させる根拠がなくなってしまうからです。

というのも、プルトニウムは核兵器(原爆など)に使用される非常に危険な物質であるため、あ
る国がプルトニウムを一定以上溜め込むことには国際的に厳しい監視が行われています。

日本はすでに数千発の原爆を製造することができるプルトニウムを保有していますが、これまで
は、それを再処理してプルトニウムを燃料として利用するから、という口実で原発を動かし続け
てきました。

したがって、核燃料サイクルを中止するとさらにプルトニウムが増え、原発を動かす根拠を失っ
てしまうのです。

ところが、驚いたことに岸田首相は、「核燃料サイクルを止めるとプルトニウムがどんどん積み
あがってしまう」と発言し、これは「外交問題にも発展する」と中止に対する懸念を示しました。

これは、話が逆立ちしており、何も敢えてプルトニウムを取り出さなければ、プルトニウムが積
みあがることはないのです。まさに『東京新聞』(2021年11月7日)が指摘するように、はから
ずも「認識不足を露呈」してしまいました。

自民党が、もはや破綻している核燃料サイクルにまだこだわっている背景には、以上の他に、日
本もプルトニウムを持っていることで、潜在的な核兵器の保有国としての立場を保持していたい、
という意図も隠されている考えられます。

岸田首相だけでなく、麻生前財務相・現自民党副総裁も温暖化に対する根本的な認識が欠けてい
ます。今年の10月25日北海度小樽での街頭演説で

    北海道はあたたかくなった。平均気温が2度上がったおかげで、北海道のお米は美味し
    くなった。昔は北海道のお米は厄介道米(やっかいどうまい)という程、売れない米
    だった。今はその北海道がやたら美味い米をつくるようになった。
    農家のおかげですか?農協の力ですか?違います。温度が上がったからです。
    温暖化が悪い話じゃなくて、ここはいい方に向くものも、農産物に限らず、いろんな
    ものが良くなりつつあるんじゃないの。

この発言に対し、北海道農民連盟は、今月26日付で声明を発表。「自民党の重要ポストにある
副総裁の発言としては有るまじき由々しき事態」「地球温暖化防止対策に取組んでいる企業や
国民にとっても耳を疑うような発言」と批判。

さらに「全国でも北海道米が高い評価を得ているのは、全道挙げて米の品種改良を重ね、官・
民・農が一体となって協力し、“北海道ブランド米”としての地位を確立した結果であり、今ま
での北海道米を作る生産者の努力と技術を蔑ろにするような発言は断じて許されない、強く抗
議する」と憤りをあらわにしました(注2)。

こういう人たちに、温暖化対策を委ねなければならない、というところに日本の悲劇がありま
す。リーダーがそうであっても国民はしっかり監視してゆく必要があります。

次回は、では日本と世界の温暖化対策はどうなっているのかをもう少し具体的に検討します。

(注1)Yahoo ニュース https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20211005-00261640 『東京新聞』
(2021.9.29 21:02)https://www.tokyo-np.co.jp/article/133858
(注2)(Yahoo ニュース https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20211027-00265132
10/27(水) 11:50; BuzzFeed.News (2021.10.27) https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/yume-pirika

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 新規感染者激減のナゾ―ウイル... | トップ | 地球温暖化(2)―COP26... »
最新の画像もっと見る

自然・環境」カテゴリの最新記事