一応築地にいると公的な統計と関係するようになる。お金にならないが安い市場使用料のため、数字を自動的に出るように売り上げソフトに組み込んでいる。新製品が出るたび、農林水産省の分類に合わせて分類する。
多くの行政上の統計は過去の統計を引き継いでいるので、時間が経つとなぜこの統計の必要性とか、数値の分類の根拠があいまいになる。ただ勤務時間を過ごすだけの公務員とそうでない公務員も例外的にいる。物価の統計で変動を比較するのに定期的に調べる商品の入れ替えをしている。株価も会社と業界の栄枯盛衰を表すべき入れ替えをしている。青果市場の商材の定期的変更と季節による変更もある。新聞紙面のスぺ-スが広い所は結構季節を感じる。もうじき青梅の相場が出る。群馬産は焼酎用で和歌山産は焼酎と梅仕事用である。この時期は新ラッキョウの季節でもある。
漬物の統計の分類も、一般には公表されない数字がある。これも項目の必要性を疑念に思った東京都の生鮮食品の統計を管理している職員から、項目のリストラ案があった。そこでリストラは良いのだがそもそもの分類の根拠を定めていないと数字が小さいからと言って、町村合併のように辻褄の合わない数字になるといった。例えば醤油漬と酢漬という項目があるがかっては季節にある商品が分類表示を変えていた。醤油漬のほうが保存料使用量が多く、酢漬は少ない。
また梅漬もスモモ漬があって、駄菓子店や縁日で売れていた。ちなみに梅漬は干していない梅の漬物で関西ではドブ漬と言っていた。由来は知らない。他の市場と統計数値が異なっていたので、都の職員から誤りではないかと指摘されたが、品目を点検していたところ、スモモの漬物が異常に売れていた時期で分類上では梅漬の数字に計上された。今は小梅需要も減って、絶滅危惧の危険がある。温泉旅館で昔は小梅が茶うけに出ていた。コンビニ弁当にも小梅があった。今は駅弁でも小梅漬は食べ残しの多い具材と嫌われた。ただ年寄りの多い地方の自家製弁当には小梅需要が残っている。日の丸弁当の名残でもある。
青果市場の中に卵の会社がある。なぜ青果市場にあるのだか聞いたことがあった。卵会社の社員に聞いたが詳しく知らないようだった。
ある時江東区の深川江戸資料館 へ行ったときはじめて納得のいく回答が見つかった。ここは江戸時代の深川佐賀町の街並みを復元した施設で、そこには江戸時代の八百屋があった。当時の八百屋は今より商材が少ない。そこには樽入りのたくわんがあった。多分練馬の農家から仕入れたと思われる。江戸は大火事が多く、移動できないタクワンは嫌われる。八百屋の中にコメを脱穀した後のもみ殻に鶏の卵を入れて販売していたようだ。割れやすい卵を保護する工夫があった。八百屋で江戸時代は卵を売っていた。その名残が豊洲まで引き継がれている。でも誰も気にしないようだ。卵の会社はホテル・ケーキ屋さん需要を賄っていて、今は大変だろう。