鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

八橋(杜若)図鐔 加賀金工

2010-05-31 | 
八橋(杜若)図鐔 加賀金工


八橋(杜若)図鐔 無銘加賀金工

 肥後の作品でも紹介したが、八橋図は広く好まれた図の一つでもある。それ故に様々に意匠されている。この鐔は、加賀金工の手になるもので、能楽として演じられた『杜若』図。表に橋と杜若を描き、裏は能を想わせる意匠としている。
 素銅地はやわらか味があり、古典的な緊張感の漂う赤銅地とは風合いを異にしている。水面は銀の線象嵌、杜若は金平象嵌による陰陽の表現、橋は朧銀高彫象嵌、金平象嵌、赤銅平象嵌と色金を違えている。
 自然の中の景色というより、雨の落ちてきそうな空の下、水辺に立って眺めたその風景の印象を解きほぐしながら図にしているような、素敵な構成の作品である。