鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

大根図鐔 甚吾

2010-05-04 | 
大根図鐔 甚吾

 
大根図鐔 無銘甚吾

 甚吾の大胆な図柄構成は、猛禽や牛、龍などにとどまらない。異様な構成は菊花や桐だけではない。ここに紹介する鐔の魅力は、鍛え強靭な趣のある骨太な地鉄に薄肉に表現された大根と三日月の組み合わせになる、禅味を帯びた作風にある。月に大根の組み合わせは如何なる意味があるのか、あるいは意味を投げかけて悩む我々を横目に見て、甚吾は笑っているのであろうか。
 図柄の周囲をわずかに鋤き込み、主題は地面と同じ高さながら立体感溢れる図としている。大根の葉は金布目象嵌象嵌、根と月は銀の布目象嵌。銀の地に滲み出るような広がりは甚吾の好むところであったものか、この特徴からなる美観は多くの作品に活かされている。金の布目象嵌も摺り付けによる手法で、金の部分は厚手にならず、破れ紙のように、ほつれ糸のように、あるいは虫食い葉のようにごくごく自然の景色となっていて視覚の奥底を刺激する。