八橋透図鐔 林又七
八橋透図鐔 無銘林又七
又七に任せるとこうなるのか、といった意匠構成の作品である。『伊勢物語』の東降りに取材した八橋(やつはし)図には我が国の伝統美が隠されている。和歌を基礎とする文学世界は、絵画にあるいは文様にと様々な分野で表現されているのだが、又七はこの鐔を生み出したのである。杜若と八枚の橋板、これに流れる雲を加えて雲出八橋(くもいでやつはし)と呼んでいる。着物の文様としても創案されているが、鄙びた風情の中に華が感じられる肥後鐔独特の空間、殊に又七の求めた陰影の表現には誰もが脱帽しよう。
鉄地の美観も鑑賞の大きな要素。鉄色黒くねっとりとした光沢があり、表面には微妙に鎚の痕跡が残り、ここに素朴な毛彫が加えられている。透かしの切り口などには古寂な風合いが漂い、まさに計算された演出の結果があるように感じられる。掌中で楽しみたい作品である。
八橋透図鐔 無銘林又七
又七に任せるとこうなるのか、といった意匠構成の作品である。『伊勢物語』の東降りに取材した八橋(やつはし)図には我が国の伝統美が隠されている。和歌を基礎とする文学世界は、絵画にあるいは文様にと様々な分野で表現されているのだが、又七はこの鐔を生み出したのである。杜若と八枚の橋板、これに流れる雲を加えて雲出八橋(くもいでやつはし)と呼んでいる。着物の文様としても創案されているが、鄙びた風情の中に華が感じられる肥後鐔独特の空間、殊に又七の求めた陰影の表現には誰もが脱帽しよう。
鉄地の美観も鑑賞の大きな要素。鉄色黒くねっとりとした光沢があり、表面には微妙に鎚の痕跡が残り、ここに素朴な毛彫が加えられている。透かしの切り口などには古寂な風合いが漂い、まさに計算された演出の結果があるように感じられる。掌中で楽しみたい作品である。