鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

唐草文図鐔 西垣

2010-05-27 | 
唐草文図鐔 西垣




唐草文図鐔 無銘西垣

 平田の技術を手本とし、独自の風合いを探り出した西垣の特色が良く現われている作。地金は真鍮地で、同心円を鋤き込んで円相を示しているところはまさに平田。さらに文様を腐らかしの手法で薄肉に表現する手法も実は平田にある。ただし、西垣の文様表現は、この作品のように、複雑で緻密な唐草がもつ古典への回帰と新趣との調和を成功させているところにある。文様の低い部分には漆を潜ませたのであろうか黒っぽく沈んでおり、古寂な風合いのある真鍮地の魅力をさらに強くしている。これを拡大すると、石目地処理されていることがわかり、手の込んだ描法であることが再認識させられる。
 配されている文様は抱杏葉紋で、鍋島氏、大友氏など九州の武将が用いた家紋である。左右の櫃穴を餌畚形の大透として、その縁には鋤き込んだ鏨の痕跡を意図的に残して装飾としている。素敵な、そして美しい鐔である。□