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とりがら時事放談『コラム新喜劇』



ちょうど先週の日曜日。
一週間のミャンマー大冒険でクタクタになっていた私はバンコクの定宿のベットで午前9時頃までひっくり返っていた。
しかしそのままひっくり返った状態ではますます疲れを増幅させるだけだと考え、プチ観光旅行に出かけることにした。
とは言ってもバンコク市内の観光地はほとんど行き尽くしているので、改めて行く場所など思い浮かばない。
そこで、タイに来たらいつもお土産に買っている「スルメ」を買いに行くことに決めたのだった。

なぜお土産にスルメなんぞを買うのかというと、それは安いからだ。
日本のスーパーマーケットで売られているスルメも大概ベトナム産かタイ産なので、産地で買うと安いのは当たり前。
日本で買う価格の10分の1以下で購入することが出来るのだ。
したがって安いスルメや干し海老を大量に購入し。帰国したら近所に配るとメチャクチャ喜ばれるのだ。
とりわけ酒飲みのいる家庭では物凄く歓迎される。
「高かったでしょう?」
という感謝の言葉まで頂戴するしまつなのだ。
なんせスーパーでの末端価格3000円ぐらいはするだろうスルメを束でお土産に貰うのだから、私に感謝する気持ちも分らないではない。
でも本当は200~300円ぐらいしかしてないんだが、そこは内緒である。

私がいつもスルメヤ干し海老を買い求めるのはチャオプラヤ川のティエン船着き場近くにある乾物市場である。
ここは観光ポイントとして知られている。
船着き場の対岸には三島由紀夫の暁の寺として有名なワットアルンが輝いており、綺麗な旅行装束に身を固めた観光客が乾物の匂いに鼻をつまみながら行き来する場所なのだ。
この乾物市場の道路を挟んだ向かいが、かの有名なワットポーである。
ワットポーは巨大な寝釈迦仏で有名だが、もう一つ、タイ古式マッサージ発祥の地としても有名なのである。

この日私は、大量のスルメを購入してから久しぶりにワットポーの中を歩いてみようと思ったのだった。
スルメの入った大きなビニール袋を下げてワットポーに入る観光客は珍しいのか、「アンタ誰?」てな表情を入り口に警備員のオッサンにされてしまった。でも私が拝観料の20バーツを払うのを見届けると私が外国人観光客(?)であることが理解できたのかニコニコしてくれた。
折しも日本の連休最終日なので大勢の外国人観光客に混じって、いつもよりかなり多くの日本人観光客がウロウロしていた。
わたしも久しぶりなのでウロウロしようと思ったのだが、ミャンマー大冒険の疲れがたまっているうえに、大阪の真夏のようなバンコクの高湿度高気温とスルメの重さにへたへたとなり、売店でアイスキャンディーを買って木陰にしゃがみ込んでしまったのだった。

「あ~、ここはタイマッサージの学校があります......」
へったた私の前を5人ほどの観光客を引き連れた日本の最大手旅行代理店のシャツを着た現地タイ人ガイドが立ち止まって流暢な日本語で説明を始めた。
「でもね。マッサージは注意してください。ちゃんと勉強していない人がマッサージをして『事故』を起こす場合があります」
ふむふむと日本人客は聞いている。
わたしも「事故」という言葉を聞いてヘタっていた頭脳がビビビと反応した。
「.....だからちゃんとしたところでマッサージしてください。」
「○○○○もだめなんですか」
客の一人が訊いた。
「○○○○で事故が起こって日本人が一人死んだことがあります。」
まさか!
このガイドさんはマッサージ店、それもかなり有名な店の名前を具体的に挙げて証言したのだ。
確かにヨガの要素を含む古式タイマッサージはあるいは危険ではないかと思うこともなかったが、やはり事故が発生していたのだ。
○○○○はガイドブックにも紹介されているような店で、ガイドさんの説明によると死亡した人はなんらかの持病を抱えていたとはいえ、未熟なマッサージ師の手にかかり事故死してしまうということは問題なのではないか。
しかもガイドブックにせよこのガイドさんの会社が日本で発行している旅行雑誌にも「タイマッサージは素晴らしけれども、事故に注意してくださいね」などとはまったく書かれていないのだ。

ともかく木陰でアイスキャンディーを噛りながらビックリした私であった。

なお、私は古式マッサージはちゃんと学校で専門の教育を受けたマッサージ師のいるところで受けることにしている。
場所はスカイトレイン「エカマイ」駅を下車。ソイ・エカマイという南北の通りを北へ入ってすぐのスーパー横にある視覚障害者によるマッサージ店だ。
観光客用のマッサージ店ではないがマッサージ師の皆さんが視覚障害者だけにプロの中のプロらしく、これまで下手な人に当たったことはない。
それに観光客用ではなくても、利用者のかなりが現地在住の日本人らしくマッサージに必要な片言の日本語を話すマッサージ師が多いので安心だ。

ちょっと有名だからで、命に関わることもある。
古式マッサージは健康にも良くて気持ちも良いが、十分に注意しなければならないことも、盗み聞きで知った次第であった。

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