とりがら時事放談『コラム新喜劇』

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ミャンマー大冒険(5)

2005年10月21日 21時31分44秒 | 旅(海外・国内)
「明日の朝は何時にしますか?」
と、昨夜、食事の後、ガイドのTさんが出発時間を訊いた。
旅行に出発する前の一週間は目一杯働いていたのでかなり疲れがたまっていた。
そこで、初日はゆっくりさせていただこうと思い、午前8時30分にロビーへ迎えに来てもらうことに決めた。
あまり遅い時間にするとヤンゴン市内を観光する時間が無くなってしまい勿体ないし、逆に早く起きて行動を開始するのは、疲れを残したまま旅行を進めることになるので、あまり好ましくない。
そう、私は体力を温存しておく必要を感じていたのだ。
今日、つまり旅行第2日目の夕方3時に私は列車の旅に出発する予定だったのだ。
列車は旧都マンダレーまでの700km弱の行程を14時間で走り抜ける長距離夜行列車だったのだ。

自慢にならないが、私は長距離列車というものは東海道・山陽新幹線にしか乗ったことがない。
とはいっても新幹線なら700kmぐらい3時間もあれば突っ走ってしまうので、長距離列車の感覚はまったくない。実に味気ない旅にもなってしまう。
「ただいま世界最速、時速300km走行をしております」
と姫路駅を通過中の500系のぞみ号に乗っているとそんなアナウンスがある。
しかし、007の忍者秘密訓練所があることや暴れん坊将軍の江戸城であることでも有名な、姫路のランドマーク姫路城は新幹線からわずか15秒ほどしか臨むことが出来ないのだ。
こんな車窓は大嫌いだ。

といことで、私はかねてから大阪発札幌行きのトワイライトエキスプレスや、上野発札幌行きのカシオペアなどの豪華寝台列車の旅を夢見ていたのだった。
それらほど豪華とは言えないだろうが、その長距離列車の旅を、ここミャンマーで実現できるのだ。
私はとても楽しみにしていたのだった.........過酷な運命が待ちかまえていることなどつゆとも知らずに。

朝、鳥たちのさえずる声で目が覚めた。
なんて健康的なんだ。
国道を走る暴走族のために目を覚まされる日本の都会とはえらい違いだ。
窓を開けると7階の私の部屋からは環状鉄道がゆっくりと走っているのが見える。
部屋ナンバーは709号室。奇しくも昨年と同じ部屋。
もしかすると再び訪れてくるかも知れない私のために一年間とっておいてくれたのかも知れない。
実際、昨年は最初711号室をあてがわれた。
711という数字を見た私は「セブンイレブン、いい気分」などと鼻歌を謡いながら部屋に入ったのだ。
クーラーのスイッチを入れて、ソファにどっかり腰を落ち着けてボンヤリとしていた。
そのうちボンヤリとしていたのが、さらに「ぼ~」となってきて、額から汗が滴り落ちてきた。
そう、クーラーが壊れていたために暑さのために「ぼ~」となってきていたのだった。
フロントに電話をして文句を言ったら、整備のオッチャンがやってきて修理を試みたが室外機のコンプレッサーは動く気配を見せない。
オッチャンは15分ほどクーラーと格闘したが結局修理を完了するとこは出来なかった。
この間、私は汗をたらたら流しながら、暑い部屋の中オッチャンと世間話をしながら作業を見守っていたのだが、よくよく考えてみると私は客である。
ゲストたる私がなんで汗を流しながら待たなければならないのか、あとで考えてみると非常に不条理であった。
で、結局直らないものだから709号室へ引っ越しということになったのだ。
引っ越しと決まると、いきなり数人のメイドさんやボーイが現れ、お祭りのごとく賑やかに、そんなに多くない私の荷物を運び出し、私を新しい部屋へ導いたのだった。
クーラーの故障という、ちょっとばかり珍しい体験で、ホテル内の「陽気な」引っ越しを体験することが出来たのだ。
ま、今回は昨年のように「引っ越し」というようなことはないだろうと思うのだった。

しばらくそんなことを思い出したりしていたが、午前7時になったので2階のレストランへ行って朝食をとり、そして部屋に戻ってから荷造りをしておいてロビーへ降りた。
ホテルの部屋はレイトチェックアウトになっており、列車に乗り込む前に一度ホテルへ戻り、シャワーなんぞを浴びたうえでリラックスした気分で、マンダレーへ出発しようと思っていたのだ。

ロビーへ降りると、ガイドのTさんはまだ来ていなかったので、籐のソファに座って待つことにした。
ロビー奥横にトイレが見えた。
「ははーん、あそこで爆弾が爆発したのか」
などと物騒なことを考えているところにTさんがやってきた。
彼女はすでに旅装を調えていた。
「おはようございます!」
明るく挨拶をしてくれるTさん。
「おはようございます」
と私。

さ、旅の小手調べ。いざヤンゴン市内への半日観光へ出発だ。

つづく