明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日にむけて( 13 )人々を逃げさせない原子力災害法

2011年04月01日 17時41分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110401 17:30)

福島県内の被ばく総量がどんどん大きくなりつつあります。
昨日、国際原子力機関(IAEA)が独自の調査を行い、、同原発から
約40キロ離れた福島県飯舘村で測定された放射線レベルが、同機関の
避難基準の2倍を超えていたことを明らかにし、日本政府に再考を迫り
ました。

さらに3月31日10時20分に、福島市東方で伊達市との境に近い地点
(原発から55キロ)で測られた空間放射線値を見てみると、毎時4.1マイクロ
シーベルトと記録されています。24時間で98.4マイクロシーベルトですから、
約10日で年間被ばく許容量に達してしまう値です。
(首相官邸公開データより)
http://www.kantei.go.jp/saigai/monitoring/index.html

実際にはこれに空間に浮遊している放射性物質を吸い込むことによる
内部被ばくや、食べ物、飲み物を通した被ばくが加わります。またこの付近は
事故後に、放射線量がもっと高くなった時期もあるので、事故から3週間たった
今、年間許容量の1ミリシーンベルトを、上回る被ばくが起こっている
可能性が高いです。

これが人口密集地である福島市近郊の値であることを考えた時、これらの
地域での避難を早急に進めるべきこと、とくに乳児、子ども、妊婦さんを
遠ざける必要があることは明らかです。

ところが政府はIAEAの勧告すら無視してしまいました。IAEAの測定は信頼が
おけず、日本の測定の方が正確で、避難指示を見直す必要はないというの
です。IAEAの勧告は無視され、飯館村の住民は不安の中におかれています。

どうしてこんなことがまかり通ってしまうのか。
色々と調べているうちに、技術者のMさんから次のようなメールをもらいました。


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Eさんのメール

『正常性バイアス』の稿、読ませていただきました。
 
私に言わせれば、『正常性バイアス』に囚われた
政府や当局が事故の長期化をまだ深く認識していないために、
法的不整合をほったらかしにしていることが狂気を蔓延させている、
その結果だと思います。

もはや、30-45km 圏内まで管理区域の年間被ばく線量(1.3mSv)越えを
始めています。
IAEAからも「避難指示を出さないのはおかしい」と勧告されるしまつ。
しかし政府はなにもしようとしない。この不作為の原因は、原災法
(原子力災害特別措置法)の避難指示の規定が以下のように定められて
いるためです。

①外部被ばくによる予測線量が年間10mSv以上
②内部被ばくによる予測線量(以下の項目)が年間100mSv以上
・放射性ヨウ素による甲状腺の等価線量
・ウランによる骨表面又は肺の等価線量
・プルトニウムによる骨表面又は肺の等価線量

この条件を満たさなければ、
屋内避難指示も出せない仕組みになっているんですね。
http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data3022.html

飯館村の累積線量50mSvは、保安院によれば
「原子力安全委員会の避難基準の半分」
「日本の避難の基準は、大気や空中の浮遊物、飲食物の放射線量など、
人体への直接的な影響を判断できる数値で決めている。」
とのことなので、やっぱり、原子力災害法の規定(累積100mSv)に従って
いることになります。

東電が白旗上げて、長期化もやむを得ないと言っているのだから、
客観的にも主観的にも、時間の問題で100mSvレベルに達するのは目に
見えてる。
でも、それを始めると、ドミノ倒しに他の市町村まで対象にしないと
いけなくなる。それが怖くて、できないんでしょう。

本来ならば、政治主導で法の限界を越える措置を取るべき局面なんですがね。
少なくとも、乳幼児の避難を始めるとか、勧告するとか、乳牛を移送するとか、
住民の不安を取り除くためのきめ細かい措置は取れるはず。

それにしても、IAEAがせっかく梯子をかけたのを自分から外すとは、
日本の政治家のセンスの無さを内外にアピールする結果になってることに
気が付いてるのかしら。

枝野長官に政治的な感受性が全く感じられない・・・。
たぶん、そういうことをすること自体が、「不安を煽る」として、
バイアスをかけられてるんでしょうね。

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つまり、政府は今原子力対策特別措置法に基づく、「原子力緊急事態宣言」を
発令していて、特別基準の法律を盾に取っているのです。
この発表は11日午後7時40すぎからの記者会見で、行われていますが、
これを宣言すると、避難指示は、平時の年間許容量1ミリシーベルトよりも
極めて大きな値まで出さなくていいことになってしまう。

年間許容量1ミリシーベルトという値は、政府が国民を被ばくから守らなくては
いけない境界線なのですが、原子力災害法が適用されると、いきなりその
数値が上がってしまう。

「①外部被ばくによる予測線量が年間10mSv以上
②内部被ばくによる予測線量(以下の項目)が年間100mSv以上
・放射性ヨウ素による甲状腺の等価線量
・ウランによる骨表面又は肺の等価線量
・プルトニウムによる骨表面又は肺の等価線量」

ここまでが法律によって許容されてしまうのです。

この点で、僕は少し、前の通信に書いた内容を修正しなければなりません。
僕は政府の側には、深刻な事故時のシミュレーションがないだろうと
書きました。実際、政府や東電に対応のための構えがなかったことは明らかです。

ところがこの原子力災害法を作った人々は、ある意味でシミュレーションを
行っていたのですま。それはどういうものか。災害が起こったら、放射能漏れが
発生する。そうすると年間1ミリという許容値はすぐに突破されてしまい、
広範囲の人を避難させなくてはならなくなる。ならば、災害が起こると同時に、
許容量を大幅に緩和する仕組みを作ろう。そうすれば深刻な放射能漏れが
起こっても、すぐに人を避難させなくて良いことになる。

・・・どう読んでみても、ここでシミュレートされているのは、そうしたことがら
でしかありません。事故が起こったときに、人々をいかに逃がすのかの
シミュレーションではなく、事故が起こると同時に、逃がさなくてもいいように
スイッチが切り替わる仕組み、それが原子力災害法に組み込まれて
いるのです。

しかもその基準は相当に緩い。このため原子力を強力に推進している
国際機関IAEAの基準の2倍を超えてすら、避難させなくてよいとなってしまう。
これが事故に備えてこの国が準備していたことだったというわけです。


まさにこの法律のために、飯館村の人々は、IAEAから「お逃げなさい」と
言われながら、役場の人々になだめられて、動けない状態になっている。
もちろん役場の人々も何が何だか分からないまま、住民の説得に
追われています。

私たちは、「逃げてください。とても危険です」と言いましょう。
飯館村、または近辺の市町村に知り合いがおられる方は、ぜひこれを
お伝えください。


***************************

放射性物質:飯舘村、避難基準超す 日本にIAEA勧告

東日本大震災に伴う福島第1原発事故で、同原発から
約40キロ離れた福島県飯舘村で測定された放射線レベルが、国際原子力
機関(IAEA)の避難基準を超えていたことが30日、分かった。IAEAはウィーン
での記者会見で、同原発から20キロ以内を避難指示圏に設定している
日本政府に対し、状況を「注意深く」評価するよう勧告したことも明らかにした。

 IAEAのフローリー事務次長は会見で、飯舘村での放射線レベルの測定値が
「IAEAの作業上の避難基準のひとつを上回った」と述べた。その上で「我々は
(日本政府に)状況を注意深く評価するよう勧告し、日本は既に評価中である
ことを示唆している」とも述べた。日本に対し事実上、地元住民への避難指示圏の
見直しを促したものとみられる。

 IAEAのこうした見解は、福島第1原発からどこまでの範囲の住民に
避難指示を出すべきかを巡り、新たな議論を呼びそうだ。

 IAEAによると、今月18~26日に同原発から25~58キロ圏で土壌の
ヨウ素131とセシウム137の量を調べた。その結果、飯舘村は土壌1平方
メートル当たり約200万ベクレルだった。IAEAの避難基準の約2倍に相当
するという。ヨウ素131かセシウム137かは明確にしていない。同村の
測定値は1カ所のみで測られた散発的なデータで、あくまで初期的な評価
だという。

 飯舘村は、避難指示圏の外側に設けられた屋内退避指示圏(福島第1
原発から20~30キロ)のさらに外側にある。福島第1原発から遠く離れた
場所で放射線レベルが突出していることについて、日本の文部科学省は
「地形や風向きの影響と考えられる」としていた。

 一方、天野之弥事務局長は30日の会見で、原発の安全対策などに
関する初めての高官級会議を6月20~24日にウィーンで開催すると
発表した。IAEA加盟国の首相や外相などに招待状を送るという。

(【ウィーン樋口直樹】2011年3月31日 11時8分 更新:3月31日 18時19分)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110331k0000e040023000c.html


IAEA勧告要請、安全委「国内判断問題なし」

 国際原子力機関(IAEA)が、高濃度の放射性物質が土壌から検出された
福島県飯舘村の住民に対し、避難勧告を検討するよう日本政府に促したこと
について内閣府の原子力安全委員会は31日、「国内では総合的に判断して
おり、現状の判断に問題ない」という見解を示した。

 同委員会によると、日本では、空気中や摂取する飲食物に含まれる放射性
物質の濃度などを測定し、人への影響を考慮しているという。
 代谷誠治委員は「我々は、人体に直接的に影響を与える所を評価している
ので、より正確である」と説明した。

 一方、経済産業省原子力安全・保安院も31日、飯舘村での累積放射線量を
試算した結果、「いま避難する必要性はない」との見解を示した。

(2011年3月31日20時25分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110331-OYT1T00858.htm


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