明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(80)放射線安全学教授が政府に抗議し内閣官房参与を辞任

2011年04月29日 23時30分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110429 23:30)

福島の子どもたちのことを考える上で、とても大切な記事が毎日新聞に
掲載されました。

「東日本大震災発生後の3月16日に内閣官房参与に任命された小佐古敏荘・
東京大教授(放射線安全学)が29日、菅直人首相あての辞表を首相官邸に
出した。」というものです。
小佐古さんは、放射線からの防護の研究の専門家です。

記事は小佐古さんが、
「小中学校などの屋外活動を制限する限界放射線量を年間20ミリシーベルトに
決めたことに『容認すれば学者生命は終わり。自分の子どもをそういう目に
遭わせたくない』と異論を唱えた。」
と述べたことを紹介しています。

「年間20ミリシーベルト近い被ばくをする人は放射線業務従事者でも極めて
少ない。この数値を小学生らに求めることは、私のヒューマニズムからしても
受け入れがたい」と語られたことも紹介されています。

毎日新聞のサイトには、記者会見で涙ぐみ、絶句する小佐古さんの写真も
掲載されています。ぜひご覧いただきたいと思います。
なお以下のサイトでも会見の様子を動画でみれます。
http://www.youtube.com/watch?v=t1tHrGS9nkU

放射線安全学の専門家が、「容認すれば学者生命は終わり」と唱えている
ことは極めて重いと思います。僕はこの内容について、すべての科学者の
方々、とくに放射線を扱ったことのある方々に考えて欲しいと思います。

今や、20ミリシーベルトの被ばくが子どもたちになされることを容認するのか
否か、放射線について少しでも知識のあるすべての人々が責任を負っている
と僕は思います。

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福島第1原発:内閣官房参与、抗議の辞任

2011年4月29日 21時8分 更新:4月29日 23時1分 毎日新聞
 東日本大震災発生後の3月16日に内閣官房参与に任命された小佐古敏荘・
東京大教授(放射線安全学)が29日、菅直人首相あての辞表を首相官邸に
出した。小佐古氏は国会内で記者会見し、東京電力福島第1原発事故の政府
対応を「場当たり的」と批判。特に小中学校などの屋外活動を制限する限界
放射線量を年間20ミリシーベルトに決めたことに「容認すれば学者生命は
終わり。自分の子どもをそういう目に遭わせたくない」と異論を唱えた。

 小佐古氏は、政府の原子力防災指針で「緊急事態の発生直後から速やかに
開始されるべきもの」とされた「緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)」
による影響予測がすぐに運用・公表されなかったことなどを指摘。「法律を
軽視してその場限りの対応を行い、事態収束を遅らせている」と批判した。

 小佐古氏はまた、学校の放射線基準を年間1ミリシーベルトとするよう主張した
のに採用されなかったことを明かし、「年間20ミリシーベルト近い被ばくをする人は
放射線業務従事者でも極めて少ない。この数値を小学生らに求めることは、
私のヒューマニズムからしても受け入れがたい」と述べた。【吉永康朗】
http://mainichi.jp/select/today/news/20110430k0000m010073000c.html
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明日に向けて(79)現状が見えない・・・水棺化の進行の中で

2011年04月29日 14時00分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110429 14:00)

水棺作業が続いてます。しかし何がどう進んでいるのか、何が進められて
いないのか、東電の発表や報道を見ていても相変わらずよく分かりません。
少し前の方が、報道で伝わってくるデータから、現状を推測しやすかった
ように思えます。

今さらではあっても、政府から情報公開を徹底することが語られているにも
かかわらず、より現状が見えない状態にあるように思えるのはなぜなのでしょうか。
あるいは僕のリサーチの仕方に問題があるのかもしれません。ともあれ今は
精いっぱいの考察を続けたいと思います。

それで4月28日に発表された東電の資料から、今、行われていることを
再度捉えてみたいと思います。
東電は事故収束にむけたロードマップのステップ1で1号機から3号機への
対処を次のように行うと述べています。

ステップ1
(1・3号機)目標:安定的に冷却できている
􀂾 燃料域上部まで格納容器を水で満たす
􀂾 格納容器ベント(放射性物質を含む蒸気を大気放出)が必要
となった場合は放射性物質低減策を実施
􀂾 格納容器への窒素充填により、水素爆発の防止
􀂾 流入抑制策(タービン建屋内の滞留水を貯蔵、水処理した後
に圧力容器に押し戻し(循環させる)等)の検討・実施
􀂾 原子炉の熱交換機能の回復(熱交換器の設置)も検討

(2号機)目標:格納容器が密閉できるまでは滞留水の増加を抑制しつつ冷却する
􀂾 最小限の注水による冷却
􀂾 格納容器への窒素充填により、水素爆発の防止
􀂾 損傷箇所の密閉策を検討.実施
􀂾 損傷箇所密閉後は1・3号機と同様の冷却策を実施


このうち現在進められているのは、1号機の格納容器を水で満たすこと
のみです。朝日新聞の報道では、この作業が難航し、原子炉圧力が低下が
懸念されるので、流量を予定の14立法メートルにあげられずに、10立法
メートルで推移を見ているとかかれている。

ところが読売新聞の報道では
「漏水もなく、格納容器の圧力低下や原子炉内の温度が低下するなど
一定の効果があったため」10立法メートルの注入を維持するとあります。

同じことをネガティブに言うと朝日のようになり、ポジティブに言うと読売の
ようになるのかもしれませんが、いずれにせよ、思ったように水が入れる
ことはできていないようです。

もう一度工程表に戻ってみると、やはり大変気になるのは、「格納容器
ベントが必要となった場合」が明記されていることです。放射能を含んだ
水蒸気が意図的に出されることがありうることが書き込まれており、
周辺の住民にとっては、差し迫った危機になります。

しかしこの可能性や、どのような状態でそれがありうるかなど、肝心の
情報がまったく出ていない。マスコミもここを質問していない。だから
「ベント」の可能性が明記されているのに、そのことが問題視されていない。

さらに窒素注入については2号機、3号機についてもやることが明記
されています。繰り返し述べてきたように、これは水素爆発を抑える
ためのものだとされていますが、それがいっこうに行われていないのは
なぜかという点もフォーカスされていない。

・・・実は必要がないのではないかという疑念も沸いてきます。そう推論
しないと、反対に現状では、水素爆発の可能性が放置されていることに
なる。あるいは水素爆発の可能性は、水棺に踏み切ることでこそ、生じると
考えられているのかもしれないという推論も生まれます。

この点で、京大原子炉実験所の小出裕章さんは、窒素注入の必要性は
ないのではないか。だからこそ2号機、3号機はやられていないのではないか
と述べています。

しかしそうなると、なぜそんな必要のないことを言うのかという疑問が
沸きます。必要のないことを言う場合、何か他に必要のあることがあって、
それを隠している場合がほとんどだからです。つまり窒素注入は必要ないと
しても、それが必要だという何らかの要因があるはずだということです。

・・・正直、現状が良く分からない。何かが隠されているのではないでしょうか。
情報公開が進んでいるかのように言われていますが、むしろ反対なのでは
ないか。記者さんたちもなぜポイントをついた質問をしないのでしょう。
その点も良く分からない。

さらにたくさんの水をいれてしまって格納容器は持つのでしょうか。後藤政志さんは、
やはり水の重さが問題た、そもそもそんなことを想定して設計はされていない。
「想定外」なので心配だと述べておられました。

この点、東電や保安院は大丈夫だと述べていますが、なぜ、どのようにして
大丈夫だという結論が導き出されたのか。本当は論拠などないのではないか。
膨大な量の放射能が海に流れ込んでも、何の調査もしてない段階で
「ただちに健康に害はない」と語ったことなどからも、今回も、何らの根拠も
なしに大丈夫と断定されているように思えてなりません。

水棺化は、非常に危険な綱渡りなのではないか。
何か重要なポイントがぼかされているのではないか。

・・・疑惑を晴らすべく、さらに事態の解析を進めたいと思います。


*******************************

1号機、「水棺」作戦難航 気になる原子炉圧力の低下

2011年4月28日11時58分 朝日新聞
 東京電力福島第一原発1号機の格納容器を水で浸す「水棺」が難航している。
東電は原子炉への注水量を2.5倍にして内部の温度や圧力の変化を見る
予定で27日に作業を始めたが、まず毎時6立方メートルから10立法メートル
にしたところで温度や圧力の低下が長引いた。27日中に予定していた
14立方メートルにできずにいる。

 東電が特に気にしているのが、格納容器の圧力が低いことだ。冷たい水が
増えたことで、水蒸気が水になっているとみられる。もし1気圧を下回れば
外部から空気が入り込みかねない。水素爆発を避けるために窒素を注入して
いるが、酸素濃度が高まると、水素と混合して爆発する危険が高まる。
東電は28日、さらに24時間、10立方メートルのまま様子を見ると発表した。

 一方、原子炉圧力容器の温度は、27日朝に132度だったのが、24時間で
107度になった。まだ下がり続ける傾向にある。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104280170.html
1号機の注水、毎時10トンで一定効果・継続へ

2011年4月28日20時55分 読売新聞
 東京電力は28日、福島第一原子力発電所1号機で、格納容器を水で
満たす本格的な「水棺」に向け、毎時10トンまで増量した原子炉への注水量を
継続すると発表した。

 毎時6トンから増量し、最大14トンまで引き上げる予定だったが、東電は、
漏水もなく、格納容器の圧力低下や原子炉内の温度が低下するなど一定の
効果があったためとしている。

 東電によると、格納容器内の圧力は0・35気圧減少し、約1・2気圧。
燃料棒の冷却が進み水の蒸発量が減ったためとみられるが、1・1気圧までは
流量を維持する。大気圧の約1気圧より下がると、空気が流入し、水素
爆発を起こすおそれが高くなるためだ。原子炉圧力容器下部の温度は
96・8度と、10度以上低下した。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110428-OYT1T00976.htm
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