守田です。(20110422 17:30)
なんとも情けなくなる記事がたったいま、舞いこんできました。
事故6日後の3月17日に行われたヘリによる放水が、アメリカに日本政府の
覚悟を示すためのパフォーマンスだったという記事です。
なんということでしょう。
記事は書いています。
「相次ぐ水素爆発と放射性物質の広域拡散……。原発暴走を制御でき
ない無力な日本という印象が世界に広がりつつあり、菅政権は「日本は
見捨てられる」と危機感を強めていた。「放水はアメリカ向けだった。
日本の本気度を伝えようとした」。政府高官は明かした」・・・。
ではどうしてこんなことが必要だったのか。記事は続けてこう書いています。
「『原発の状況が分からない』。米国のいら立ちは震災直後からあった。
NRC先遣隊が12日の1号機水素爆発直後に日本に派遣されたが、
複数の政府関係者によると、経済産業省原子力安全・保安院は『情報開示に
慎重だった』といい、米政府は原子炉の現状を推測するしかなかった。」
要するに保安院は、アメリカに対しても情報開示をしようとしなかった。
そのためにアメリカが焦燥感を深めたわけで、これは私たちがおかれた
状況と同じです。
しかし菅首相は、私たち、国民と住民が、深刻な放射能漏れ事故を前に
情報が開示されないことに、不安と焦りを募らせていることに目を向けず、
アメリカに見放されることを恐れ、自衛官に派手なパフォーマンスを
させたのです。
この記事の最後は、印象的にこう結ばれています。
「『今日が限度と判断をした』。北沢防衛相はヘリ放水後の会見で言った。
米政府は好感し、現実には冷却効果が期待できないヘリ放水は二度と
行われなかった。」・・・。
ヘリによる放水は大変、印象的でした。確かに1回目は多少、建屋にあたって
いたけれど、他のものはほとんど当たらなかった。
僕はあの時、もうこんな手段しか残されていないのか、これはもうダメなの
ではないか・・・と深く落胆したことを覚えています。
世界の報道でもこうした論調は多かった。ヘリの放水は、あまりに効果が
感じられず、失望感が大きかった。
もっともこのとき、僕は気を取り直しました。自衛隊がうまくできないのは
仕方がない。大変な任務だからというよりも、これは自衛隊が実戦経験が
ないことのあらわれだ。つまり自衛隊は戦争的な展開には弱いのであり、
それはこの国の平和の一つのバロメーターでもある。もともと僕は、軍隊の
弱い国ほど、いい国だと思ってきたので、そんな風に考えました。
もちろん、これは自衛隊がまったく無力だということを意味しているのでは
ありません。自衛隊は、あらゆる組織の中で、唯一、自分たちで食糧も
寝るところも、運べる組織であり、いざとなれば風呂もすぐに作って沸かせる。
そのため、被災地での捜索やがれきの撤去には凄い力を発揮しています。
だから早急にもっとレベルの高い、災害救助隊に変えることがのぞましい。
もちろん、現状では殺人部隊であることは間違いないので、隊員のリハビリと
再教育が必要ですが。
これに対して、消防隊は本当に凄かった。消防隊の人々は、いつも燃え盛る
炎の前に身をさらして消火活動をしているのですね。命がけの実践を
かなり重ねて来ている。消防隊は、すでに地震当日からのコンビナート火災
でも大活躍していた。コンビナート火災では、放水場所を間違えると爆発し
自分たちも巻き込まれてしまう可能性がある。そんなところでのピンポイントの
消火能力をこれらの人々は持っている。
この見事な技によって、私たちは最大の危機をとりあえずは一たび乗り越える
ことができました。もちろん消防車からの放水には自衛隊も参加しましたが、
自衛隊は、消防隊の力にひっぱられて頑張れたのではないかと思います。
しかし政府はその意義をきちんと国民にも住民にも伝えませんでした。
消防隊と自衛隊、原発サイトで働くすべての人々が、深刻な被ばくに直面しながら
時間を紡ぎだしていた時、政府は安全ばかりを強調し、人々に被ばくの備えすら
訴えなかった。
意図的なベントが行われ、ほとんどこの数日に、チェルノブイリ事故の10分の1、
あるいはそれ以上と言われる放射能が大気に飛び出し、レベル7の事態に
なっていたにもかかわらず、それを黙りとおした。スピーディーが作動して、
「こちらに逃げてください」という情報が出ていたのに、それも握りつぶして
しまった。およそ、この数日間、国民や住民との間で政府が行ったことは
それが全てでした。
アメリカには見放されることを恐れて、自衛隊に命がけの派手なパフォーマンス
をさせる一方、国民と住民は、危険地帯から逃げさせることもしない。このような
非人道的なことを繰り返している政府、国民と住民ではなく、アメリカの目を
怖がり、アメリカを満足させるために作戦を練っていた政府を、私たちは
このままにしておいていいわけがありません。
ちなみにある友人が次の情報を伝えてくれました。
【地震】東電、英語版サイトと日本語サイトに極端な資料差の不思議
http://www.rbbtoday.com/article/2011/04/19/76286.html
東電のサイトも、日本語版より英語版の方が圧倒的に充実していると言うのです。
英語版でしかみられない情報がたくさん載っている。要するに東電も、国民や
住民ではなく、英語圏の人々、おそらくは投資家のことばかりを考えている・・・。
もはや何をかいわんやです。
私たちの前には、なすべきたくさんのことが横たわっています・・・。
*************************
検証・大震災:不信洗った、ヘリ放水 原発から白煙…
政権「世界に見放される」
◇自衛隊が前面、米に覚悟示す
晴れ渡る空に陸上自衛隊の大型輸送ヘリCH47が2機、巨大なバケツ
(容量7・5トン)をつり下げて仙台市の陸自霞目(かすみのめ)駐屯地を
飛び立ったのは、東日本大震災6日後の3月17日朝だった。東京電力
福島第1原発3号機からは白煙が上がる。使用済み核燃料プールの水が
沸騰した放射性水蒸気だ。海水をくんで放水し、プールを冷やす前代未聞の
作戦だった。
「炉心溶融が進行していれば、放水によって水蒸気爆発を起こすおそれ
もある」。菅直人首相らは「最悪のシナリオ」を危惧し、防衛省は搭乗隊員
向けにできる限りの防護策をとった。放射線を極力遮断するため戦闘用
防護衣の下に鉛製ベストを着込み、床部にはタングステン板を敷き詰めた。
原発上空に停止せず、横切りながら放水する方式とした。
「ヘリ放水開始」。午前9時48分、テレビ画像のテロップとともに映像は
世界に生中継された。計4回(計約30トン)の放水で1回目が目標に
命中したが、爆発は起きなかった。日本政府が命がけの作戦を
開始した--。ニュースが伝わった東京株式市場では全面安の展開
だった日経平均株価の下げ幅が緩んだ。
「自衛隊などが原子炉冷却に全力を挙げている」。作業終了から約10分後、
菅首相はオバマ米大統領に電話で伝えた。その後、米国防総省は藤崎
一郎駐米大使にこう伝えた。「自衛隊の英雄的な行為に感謝する」
翌18日、米原子力規制委員会(NRC)代表団や在日米軍幹部と、防衛、
外務当局や東電など日本側関係者が防衛省でひそかに会合を持った。
米側の一人はヘリ放水を称賛した。「よくやりましたね」
相次ぐ水素爆発と放射性物質の広域拡散……。原発暴走を制御でき
ない無力な日本という印象が世界に広がりつつあり、菅政権は「日本は
見捨てられる」と危機感を強めていた。「放水はアメリカ向けだった。
日本の本気度を伝えようとした」。政府高官は明かした。
◆
「原発の状況が分からない」。米国のいら立ちは震災直後からあった。
NRC先遣隊が12日の1号機水素爆発直後に日本に派遣されたが、
複数の政府関係者によると、経済産業省原子力安全・保安院は「情報開示に
慎重だった」といい、米政府は原子炉の現状を推測するしかなかった。
14日には「トモダチ作戦」に参加していた米原子力空母ロナルド・レーガンが
乗員から放射性物質が検出されたとして三陸沖を離れ、16日にはNRCの
ヤツコ委員長が下院公聴会で「4号機の使用済み核燃料プールには
水がない」と証言。17日未明にルース駐日米大使が日本の避難指示より
広範な原発から半径50マイル(約80キロ)以内の米国人に圏外避難を
勧告した。一連の言動は日本への不信と強い危機感の表れと映った。
日米がかみ合わない中、打開に動いたのは防衛省だった。15日に
東電側と相談して「3号機は上空、4号機は地上から」という放水作戦を立案。
水蒸気爆発を懸念した菅首相は防衛省に「地上の前にまず上空から」と
指示した。隊員から戸惑いの声も漏れたが、「やるしかない」と陸自幹部は
覚悟を決めた。
16日の夜には北沢俊美防衛相と制服組トップの折木良一統合幕僚長が
「放射線量の数値が高くても踏み切る」と「17日決行」を決める。「隊員の
命にかかわる作戦だ」。17日朝、折木統幕長が東電から「安全」を確認
すると北沢防衛相に最終的なゴーサインを告げた。
「今日が限度と判断をした」。北沢防衛相はヘリ放水後の会見で言った。
米政府は好感し、現実には冷却効果が期待できないヘリ放水は二度と
行われなかった。【震災検証取材班】
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110422ddm001040072000c
なんとも情けなくなる記事がたったいま、舞いこんできました。
事故6日後の3月17日に行われたヘリによる放水が、アメリカに日本政府の
覚悟を示すためのパフォーマンスだったという記事です。
なんということでしょう。
記事は書いています。
「相次ぐ水素爆発と放射性物質の広域拡散……。原発暴走を制御でき
ない無力な日本という印象が世界に広がりつつあり、菅政権は「日本は
見捨てられる」と危機感を強めていた。「放水はアメリカ向けだった。
日本の本気度を伝えようとした」。政府高官は明かした」・・・。
ではどうしてこんなことが必要だったのか。記事は続けてこう書いています。
「『原発の状況が分からない』。米国のいら立ちは震災直後からあった。
NRC先遣隊が12日の1号機水素爆発直後に日本に派遣されたが、
複数の政府関係者によると、経済産業省原子力安全・保安院は『情報開示に
慎重だった』といい、米政府は原子炉の現状を推測するしかなかった。」
要するに保安院は、アメリカに対しても情報開示をしようとしなかった。
そのためにアメリカが焦燥感を深めたわけで、これは私たちがおかれた
状況と同じです。
しかし菅首相は、私たち、国民と住民が、深刻な放射能漏れ事故を前に
情報が開示されないことに、不安と焦りを募らせていることに目を向けず、
アメリカに見放されることを恐れ、自衛官に派手なパフォーマンスを
させたのです。
この記事の最後は、印象的にこう結ばれています。
「『今日が限度と判断をした』。北沢防衛相はヘリ放水後の会見で言った。
米政府は好感し、現実には冷却効果が期待できないヘリ放水は二度と
行われなかった。」・・・。
ヘリによる放水は大変、印象的でした。確かに1回目は多少、建屋にあたって
いたけれど、他のものはほとんど当たらなかった。
僕はあの時、もうこんな手段しか残されていないのか、これはもうダメなの
ではないか・・・と深く落胆したことを覚えています。
世界の報道でもこうした論調は多かった。ヘリの放水は、あまりに効果が
感じられず、失望感が大きかった。
もっともこのとき、僕は気を取り直しました。自衛隊がうまくできないのは
仕方がない。大変な任務だからというよりも、これは自衛隊が実戦経験が
ないことのあらわれだ。つまり自衛隊は戦争的な展開には弱いのであり、
それはこの国の平和の一つのバロメーターでもある。もともと僕は、軍隊の
弱い国ほど、いい国だと思ってきたので、そんな風に考えました。
もちろん、これは自衛隊がまったく無力だということを意味しているのでは
ありません。自衛隊は、あらゆる組織の中で、唯一、自分たちで食糧も
寝るところも、運べる組織であり、いざとなれば風呂もすぐに作って沸かせる。
そのため、被災地での捜索やがれきの撤去には凄い力を発揮しています。
だから早急にもっとレベルの高い、災害救助隊に変えることがのぞましい。
もちろん、現状では殺人部隊であることは間違いないので、隊員のリハビリと
再教育が必要ですが。
これに対して、消防隊は本当に凄かった。消防隊の人々は、いつも燃え盛る
炎の前に身をさらして消火活動をしているのですね。命がけの実践を
かなり重ねて来ている。消防隊は、すでに地震当日からのコンビナート火災
でも大活躍していた。コンビナート火災では、放水場所を間違えると爆発し
自分たちも巻き込まれてしまう可能性がある。そんなところでのピンポイントの
消火能力をこれらの人々は持っている。
この見事な技によって、私たちは最大の危機をとりあえずは一たび乗り越える
ことができました。もちろん消防車からの放水には自衛隊も参加しましたが、
自衛隊は、消防隊の力にひっぱられて頑張れたのではないかと思います。
しかし政府はその意義をきちんと国民にも住民にも伝えませんでした。
消防隊と自衛隊、原発サイトで働くすべての人々が、深刻な被ばくに直面しながら
時間を紡ぎだしていた時、政府は安全ばかりを強調し、人々に被ばくの備えすら
訴えなかった。
意図的なベントが行われ、ほとんどこの数日に、チェルノブイリ事故の10分の1、
あるいはそれ以上と言われる放射能が大気に飛び出し、レベル7の事態に
なっていたにもかかわらず、それを黙りとおした。スピーディーが作動して、
「こちらに逃げてください」という情報が出ていたのに、それも握りつぶして
しまった。およそ、この数日間、国民や住民との間で政府が行ったことは
それが全てでした。
アメリカには見放されることを恐れて、自衛隊に命がけの派手なパフォーマンス
をさせる一方、国民と住民は、危険地帯から逃げさせることもしない。このような
非人道的なことを繰り返している政府、国民と住民ではなく、アメリカの目を
怖がり、アメリカを満足させるために作戦を練っていた政府を、私たちは
このままにしておいていいわけがありません。
ちなみにある友人が次の情報を伝えてくれました。
【地震】東電、英語版サイトと日本語サイトに極端な資料差の不思議
http://www.rbbtoday.com/article/2011/04/19/76286.html
東電のサイトも、日本語版より英語版の方が圧倒的に充実していると言うのです。
英語版でしかみられない情報がたくさん載っている。要するに東電も、国民や
住民ではなく、英語圏の人々、おそらくは投資家のことばかりを考えている・・・。
もはや何をかいわんやです。
私たちの前には、なすべきたくさんのことが横たわっています・・・。
*************************
検証・大震災:不信洗った、ヘリ放水 原発から白煙…
政権「世界に見放される」
◇自衛隊が前面、米に覚悟示す
晴れ渡る空に陸上自衛隊の大型輸送ヘリCH47が2機、巨大なバケツ
(容量7・5トン)をつり下げて仙台市の陸自霞目(かすみのめ)駐屯地を
飛び立ったのは、東日本大震災6日後の3月17日朝だった。東京電力
福島第1原発3号機からは白煙が上がる。使用済み核燃料プールの水が
沸騰した放射性水蒸気だ。海水をくんで放水し、プールを冷やす前代未聞の
作戦だった。
「炉心溶融が進行していれば、放水によって水蒸気爆発を起こすおそれ
もある」。菅直人首相らは「最悪のシナリオ」を危惧し、防衛省は搭乗隊員
向けにできる限りの防護策をとった。放射線を極力遮断するため戦闘用
防護衣の下に鉛製ベストを着込み、床部にはタングステン板を敷き詰めた。
原発上空に停止せず、横切りながら放水する方式とした。
「ヘリ放水開始」。午前9時48分、テレビ画像のテロップとともに映像は
世界に生中継された。計4回(計約30トン)の放水で1回目が目標に
命中したが、爆発は起きなかった。日本政府が命がけの作戦を
開始した--。ニュースが伝わった東京株式市場では全面安の展開
だった日経平均株価の下げ幅が緩んだ。
「自衛隊などが原子炉冷却に全力を挙げている」。作業終了から約10分後、
菅首相はオバマ米大統領に電話で伝えた。その後、米国防総省は藤崎
一郎駐米大使にこう伝えた。「自衛隊の英雄的な行為に感謝する」
翌18日、米原子力規制委員会(NRC)代表団や在日米軍幹部と、防衛、
外務当局や東電など日本側関係者が防衛省でひそかに会合を持った。
米側の一人はヘリ放水を称賛した。「よくやりましたね」
相次ぐ水素爆発と放射性物質の広域拡散……。原発暴走を制御でき
ない無力な日本という印象が世界に広がりつつあり、菅政権は「日本は
見捨てられる」と危機感を強めていた。「放水はアメリカ向けだった。
日本の本気度を伝えようとした」。政府高官は明かした。
◆
「原発の状況が分からない」。米国のいら立ちは震災直後からあった。
NRC先遣隊が12日の1号機水素爆発直後に日本に派遣されたが、
複数の政府関係者によると、経済産業省原子力安全・保安院は「情報開示に
慎重だった」といい、米政府は原子炉の現状を推測するしかなかった。
14日には「トモダチ作戦」に参加していた米原子力空母ロナルド・レーガンが
乗員から放射性物質が検出されたとして三陸沖を離れ、16日にはNRCの
ヤツコ委員長が下院公聴会で「4号機の使用済み核燃料プールには
水がない」と証言。17日未明にルース駐日米大使が日本の避難指示より
広範な原発から半径50マイル(約80キロ)以内の米国人に圏外避難を
勧告した。一連の言動は日本への不信と強い危機感の表れと映った。
日米がかみ合わない中、打開に動いたのは防衛省だった。15日に
東電側と相談して「3号機は上空、4号機は地上から」という放水作戦を立案。
水蒸気爆発を懸念した菅首相は防衛省に「地上の前にまず上空から」と
指示した。隊員から戸惑いの声も漏れたが、「やるしかない」と陸自幹部は
覚悟を決めた。
16日の夜には北沢俊美防衛相と制服組トップの折木良一統合幕僚長が
「放射線量の数値が高くても踏み切る」と「17日決行」を決める。「隊員の
命にかかわる作戦だ」。17日朝、折木統幕長が東電から「安全」を確認
すると北沢防衛相に最終的なゴーサインを告げた。
「今日が限度と判断をした」。北沢防衛相はヘリ放水後の会見で言った。
米政府は好感し、現実には冷却効果が期待できないヘリ放水は二度と
行われなかった。【震災検証取材班】
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110422ddm001040072000c