明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて( 34 )70ミリシーベルトで多発性骨髄腫に・・・

2011年04月11日 17時30分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110411 17:30)

このところ不穏な動きを感じています。
「放射能は怖くないキャンペーン」とでもいうべきものが強まってきているからです。
新聞やマスコミで、放射能は思ったより怖くないという言説が繰り返され、
100ミリシーベルト以内の被ばくは安全だと言うとんでもない言説までが
大きく新聞に掲載されています。

もちろんこれは間違いです。繰り返し述べてきたように、私たちの国の法律で
定められている年間被ばく許容量は1ミリシーベルトです。これとても安全な
値ではなく、10万人に5人~40人がガンを発病する値です。放射線被ばくに
安全な値はないのです。

にもかかわらずなぜ「安全」が繰り返されるのか。すでに福島原発1号機から、
放射能を含んだ水蒸気が漏れ出している事実を考える時、今後、不可避的に
起こる放射能汚染の高まりに備えるのではなく、放射能汚染への不安や怒りの
高まりにこそ備えているのではないかと思えてなりません。

そう思うのは、政府が、初期の段階で、深刻なメルトダウンの危機が起こって
いながら、人々にそれを伝えなかったからです。しかも大量の放射能が漏れだし、
スピーディーが作動して、人々に逃げ道を示していたのに、そのデータが
握りつぶされてしまった。

今、同じようなことが起こりつつあるのではないでしょうか。大量の放射能の
大気放出が迫っている中で、放射能は安全だ、過敏になってはいけないという
キャンペーンが行われているのではないか。そして人々が、無防備なままに
放射能汚染にさらされようとしているのではないか。

少なくとも政府は、これからの窒素封入で、放射能を大量に含んだ水蒸気が
漏れ出すこと、いやすでにそれが始まっていることを周辺住民に明らかに
すべきです。スピーディーを作動させ、その情報を公開すべきなのです。
しかし行われいるのは、放射能は安全だキャンペーンばかりです。

このことは同時に、被ばくによる損害賠償などに、政府が身構え出している
ことも含まれているように見えます。100ミリシーベルト以下では、安全だと
言う断言には、その値以下での病の発症に対して、因果関係を認めず、
被害認定もしない意志が見え隠れしています。

実際、原爆の被ばく者も、チェルノブイリの被ばく者も、多くが「因果関係が
認められない」として、被災者認定が受けられませんでした。水俣病でも
たくさんの被害者が切り捨てられ続けました。そのことで被害は実態よりも
小さく表現されてしまいました。

このように、これまで繰り返されてきたことが、「フクシマ」のその後にも
行われるのではないか、それがもう始まっているのではないかと僕には
思えます。

さらに福島原発の労働現場では、許容線量が100ミリシーベルトから250ミリ
シーベルトという非常に高い値にまでつりあげられています。また私たち
一般人の許容線量も、年間1ミリシーンベルトから20ミリシーンベルトに
変えることが検討されだしている。放射能が漏れれば漏れるだけ、規制が
緩和されつつあります。

この現実を前に、一体、どうしたらいいのだろう。何を伝えればいいの
だろう。そう焦りに駆られながら資料を探してるときに、非常に重要な記事を
見出すことができました。以下にタイトルとアドレスを紹介します。


多発性骨髄腫で労災請求 -原子力発電所での被曝が原因 
富岡労基署(福島県)(「関西労災職業病」2003年6月号より)
http://www.geocities.jp/koshc2000/accident/nagaorosai.html

これは福島第一原発2号機、3号機を含む、多数の原発で働いた経験のある
長尾光明さんによる労災請求を伝えた記事です。

長尾さんは1977年10月から1982年1月まで、原発の定期検査工事に
従事されました。そして定年8年後の1994年頃から、首の痛みが始まりだし、
1998年に頸椎骨折で手術を受けましたが、そのときに多発性骨髄種と
診断されました。

多発性骨髄腫は、骨髄の細胞の一種が腫瘍化するもので、ガンの一種です。
症状は人によって様々ですが、骨がもろくなり、骨折しやすくなるほか、非常に
苦しい病状を経る病です。しかも難治性で、いまだに完治した人がいません。

長尾さんも闘病されながら、労災認定を実現し、さらに東電を訴える訴訟を
起こされましたが、その最中の2007年に亡くなられています。
(その後、裁判所が訴えを却下。労災認定が下りながら、損害賠償が却下
された非常に珍しい例)

注目すべきことは、長尾さんの発病が、70ミリシーベルトの被ばくによって
起こっていることです。これは長尾さんの労働記録として記帳されたものです。
100ミリシーベルトに満たない被ばくで、多発性骨髄腫という深刻な病に
長尾さんはかかっている。

さらにこの記事には、白血病の労災認定が、5ミリシーンベルトの被ばくから
認められることが書いてあります。5ミリシーベルトで、白血病になる人が
いると認定されているわけです。これでどうして100ミリシーンベルトまでは
安全などと言えるのでしょうか。

さらに記事には、多発性骨髄腫の発病は、若い時の労働で被ばくした人よりも
45歳以上の労働で被ばくした方が発症率が高いことが記されています。
この点も重要です。

これまで僕自身、放射能に対しては若い人の方が危険性が高いことを
強調してきました。実際、放射性ヨウ素131による甲状腺ガン発生のリスクは
小さいほど高く、40歳以上で小さくなることが、医学的見地としても確認されて
います。しかしそれは多発性骨髄腫にはあてはまらないのです。


まとめます。
原発で働いていた長尾さんは、4年3カ月で70ミリシーベルトを被ばくして
多発性骨髄腫になり、発病から10数年で亡くなられました。
このことだけからでも、100ミリシーベルトまでの被ばくは安全だなどとは
とても言えないことが明らかです。

そもそも白血病の労災認定は5ミリシーベルトから認められているのです。
実際には、1ミリシーンベルト以下でも可能性が生じるわけで、この値でも
ある人々が切り捨ててられてしまいますが、少なくともそれからすると、
250ミリシーベルトまでの被ばくを認めた現在の原発サイトが、どれほど
過酷なものになっているかが見えてきます。

これらから、1人でも多くの人を被ばくから守るためには、被ばく者の
人権を守り続けることも意識しなければならないことが見えてきます。
そのために、私たちは今、放射能だけでなく、放射能は安全だキャンペーン
にも、立ち向かっていかなければならないと思います。


かつて私たちは、原発は安全だキャンペーンに包まれていました。
そのときも、原発震災がもっとも危険だという声は、政府によって、学者たちに
よってマスコミによって押しつぶされてきました。

しかしもうここでこの声をつぶされてしまうわけにはいきません。
これから長い時間を、この問題と向き合わざるをえなくなってしまった若い人たち、
子どもたち、そしてこれから生まれてくる未来の人々のためにも、私たちは
今、最大限の努力を払って、命を守っていく必要があります。

少々、長いものですが、紹介した記事をお読みください。
ここに紹介しきれなかった、重要な情報がたくさんつまっています。


なお多発性骨髄腫に関しては、再度、詳しく論じたいと思います。
他ならぬ僕の親友がこの病と闘病中だからです。それは僕が、1人でも多くの
人を被ばくから守りたいと思う動機の大きな柱になっています。
この友とともに、放射能に立ち向かい続けたいと僕は思うのです・・・。


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明日に向けて( 33 )1号機から蒸気と窒素が漏れ出した・・・

2011年04月11日 15時30分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110411 15:30)

福島第一原発1号機で、シリアスな状態が発生しています。
一つは、9日より放射線量が急上昇したことです。炉心内で何らかの大きな変化が
あった可能性があります。しかしなぜかその後のデータが開示されていません。
センサーが壊れている可能性もあります。

一つのありうる事態として、再臨界が起こっているのではないかという指摘が、
京大原子炉実験所の小出さんなどから出されています。根拠として塩素が
中性子をとりこんで発生するクロル38が検出されていることが挙げられていますが、
一方で、これは東電の分析間違いによるデータではないかという指摘もあり、
真相がみえない状況です。

一方で、1号機には水素爆発を阻止するための窒素封入が行われていますが、
2.5気圧を目指して注入を行ってきたものの、1・95気圧以上、入れても入れても
圧力があがらない状態が続いていることが明らかになりました。漏れ出して
しまってるのです。

「1000立方メートル前後の蒸気や窒素が外部に漏れ出した」ことが、読売
新聞によって伝えられています。この蒸気には、原子炉格納容器内にあった
放射能を大量に含んでおり、大気への放射能漏れが進行していることが
明らかだと思います。

窒素封入は、水素爆発を抑えるために必要なものであり、今後も継続される
可能性が極めて高く、2号機、3号機と移る中で、今後、継続的な大気の
放射能汚染が行われる可能性が高くあります。

原発周辺におられる方、また仙台市をはじめ、原発100キロ周辺の方、さらに
その周りの方々に、この情報をお伝えください。

政府は、再び大量の放射能の大気への放出が行われようとしていることを
最後まで、アナウンスしないと思われます。そのため、これらの地域の
人々が無防備なままに放射能に襲われてしまう危険性が高いです。

避難できないまでも、せめて徹底的な、放射線被ばくからの防護対策を
とることを、可能な限りたくさんの方にお伝えください。


***************************

窒素注入、圧力上がらず…放射性物質が漏出

 東京電力は11日、水素爆発を防ぐため窒素を注入している福島第一原子力
発電所1号機の格納容器で、圧力が1・95気圧から上昇しなくなり、放射性物質
を含む蒸気や窒素が外部に相当量漏れていると発表した。

 東電によれば、7日未明から毎時28立方メートルの窒素を注入している。
容器内の圧力は、7日の1・56気圧から9日の1・9気圧まで徐々に上昇が
続いたが、10日頃から圧力が1・95気圧のまま上がらなくなった。

 計算上は1000立方メートル前後の蒸気や窒素が外部に漏れ出したことに
なる。ただ、今のところ原発周辺の放射線量に大きな変化は見られない。

 1号機には、6日間で約6000立方メートルの窒素を注入し、1・5気圧を2・5
気圧にする予定だった。東電では「格納容器の密閉性が損なわれ、相当量が
漏れている」とみている。東電では、水素爆発を回避するため、当面、現在の
注入を継続、対応策を検討する。

(2011年4月11日13時37分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110411-OYT1T00546.htm
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