地底人の独り言

いつまでもみずみずしい感性を持ち続けて生きたいと願いつつ、日々の思いや暮らしを綴っていきます

深沢七郎「風流無譚」事件

2024年05月06日 | 読書


 朝日新聞に連載されている文芸評論家・斉藤美奈子さんの「旅する文学」、とても楽しい。5月4日の連載は「山梨編」で、その一文の最後に取り上げられているのは深沢七郎さん、そしてその作品としては『笛吹川』が取り上げられている。

深沢七郎は、ネットでくぐると「ギター奏者として日劇ミュージックホールに出演。『楢山節考』が正宗白鳥に激賞され、異色の新人として注目を集めた。「中央公論」に発表した『風流夢譚』に関わる右翼テロ事件(嶋中事件)後、筆を折った時期もあったが、土俗的な庶民のエネルギーを描いて独自の作品を発表し続けた。農場や今川焼屋を経営したり、ギター・リサイタルを開催したりと多くの話題を残した」とある。

 私は今川焼きを食べたいと思ったが、さすがにそれは叶わなかった。ただ、深沢七郎の夢屋書店から出版した『みちのくの人形たち』と『秘戯』の二冊がある。「秘戯」は1979年の奥付があり、その本には天紅が施されている。本の最後のページには、「天紅について」と言う解説があり、「江戸の遊女の恋文、巻紙の上段に口紅で、思いのたけをかみしめる。天紅はヌードの女王ヒロセ元美先生が『秘戯』のためにくちづけしてくださいました」と書かれている。

 この二つの作品は、1980年に出版された『みちのくの人形たち』(中央公論社刊)に収録されている。

 ところで、深沢七郎は、まさに戦後史で忘れられない事件となった小説「風流無譚」を発表している。ちなみに我が書棚には、深沢七郎の「風流無譚」を収録している『宇宙人の聖書』、そして「風流無譚」事件について書かれた、中村智子著『「風流無譚」事件以後 編集者の自分史』及び京谷秀夫著『1961年冬』(1983年、晩聲社刊)が並んでいる。

 中村智子著『「風流無譚」事件以後 編集者の自分史』(1976年、田端書店刊)の「はじめに」には、「深沢七郎氏の小説『風流無譚』を『中央公論』(1960年12月号)に移載したことから起こった二つ事件--右翼少年によるテロ『嶋中事件』(1961年2月)と、右翼の攻撃をおそれた中央公論社が『思想の科学』の天皇制特集号を廃棄処分にした『思想の科学事件(1961年12月号)』--は、戦後の日本の出版界を揺るがせた大事件であった」と書かれている。

 それにしても、デビー作『楢山節考』はなんともスゴイ作品。改めて読み返してみようと思う。



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