佐藤愛子のベストセラーエッセイ集『九十歳。何がめでたい』の実写映画化。数々の文学賞を受賞してきた佐藤愛子が、作家生活を引退して来客もなくなり鬱々と過ごしていたところに、冴えない中年の 編集者・吉川がエッセイの依頼を持ち込む。「いちいちうるせえ!」と世の中への怒りを赤裸々に書いたエッセイは意図せず大好評となり、愛子の人生は90歳にして大きく変わっていく。 |
草笛光子さんの佐藤愛子
唐沢寿明さんの編集者・吉川
時代からずれた2人を中心にものがたりが進む。面白くなる確信があった。
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ある意味無敵の佐藤愛子
作家人生最後の作品と位置付けた長編小説を刊行。断筆状態になる。その佐藤の元に吉川がエッセイの執筆を依頼しに来る。何度断っても訪問をくり返す吉川に、根負けした佐藤が引き受けたエッセイ。それが「九十歳。何がめでたい」である。
日々の生活を通して不満に思うこと、理不尽を感じることを佐藤がエッセイに書いていく。ものがたりは佐藤と編集者のやりとり、掛け合いを中心に進んでいく。大爆笑ではないが、小さなおかしさが続いていく。そんな作品だと思う。
吉川は仕事バカ
妻・麻里子(木村多江)からは離婚を求められ、一人娘・美優(中島瑠菜)の気持ちも理解できていない。担当する佐藤は脚光を浴び、元気いっぱいだが、担当の彼にハッピーエンドは訪れない。世の中は思い通りには行かないのだ。
これくらいの負の要素がないと、佐藤とは釣り合わない。唐沢寿明があそこまでカッコ悪い人を演じるのはある意味すごい。
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出番は少ないが、中島瑠菜が出演している。「次はこの人たちの誰かだろう」で取りあげたのは、昨年6月。やっと大きなスクリーンで見ることができた。 やはり注目すべき役者さんだろう。
あらためてすごいと感じたのは草笛光子と唐沢寿明の二人。
草笛さん若い!ホントにすごい。ものがたりが進むにつて、どんどん輝き、若くなる。
唐沢さんは過去にないイメージのキャラクターである。TVは「愛という名のもとに」(1992年)主演・高月健吾役、「利家とまつ〜加賀百万石物語」(’02年)主演・前田利家役、「白い巨塔」(’03年)主演・財前五郎役。映画は「杉原千畝 スギハラチウネ」(’15年)の杉原千畝役等が印象に残る。吉川はステレオタイプだが、ふりきっている。(文中一部敬称略)