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肉食の系譜
フジアンヴェナトルは脚が長い
(画像は転載できないので、Natureを見てね)
フジアンヴェナトルは、後期ジュラ紀チトニアン(Nanyuan Formation)に中国福建省南平市政和県に生息したアヴィアラエ鳥類で、2023年に記載された。頭と首を除いた胴体がほぼ完全に保存されている。これは、頭骨がなく食性の決め手がないのになぜヴェナトルにしたのかな。アヴィアラエなら、オルニスとかアヴィスでいいような気がする。
他のすべての原鳥類Paravesと区別されるフジアンヴェナトルの特徴は多数の形質の組み合わせからなる。手の第I指の末節骨が他の指の末節骨よりもずっと大きい(これはアンキオルニスやアルカエオプテリクスにもみられないが、白亜紀の鳥類にはみられる)、手の指骨II-1が II-2より長い、脛骨が長く大腿骨の2倍の長さである、中足骨IIが他の中足骨よりも幅広い、などからなる。
系統解析の結果、フジアンヴェナトルはアンキオルニス、シャオティンギア、アウロルニス、エオシノプテリクスとともにアンキオルニス科に含まれた。アヴィアラエの中で最初にアンキオルニス科が分岐し、次にアルカエオプテリクスが分岐し、残りが孔子鳥類、エナンティオルニス類、真鳥類へとつながる形となった。
フジアンヴェナトルは手の指骨の比率についてはアルカエオプテリクスと似ている。アルカエオプテリクスと同様に末節骨以外の最も長い指骨はI-1である。一方シャオティンギアとアンキオルニスではII-2 である。しかし腰帯はアンキオルニスやトロオドン類の特徴を示す。短い座骨や遠位にある閉鎖孔突起はアンキオルニスと似ている。一方、幅広い恥骨エプロンpubic apronはトロオドン類と似ている。フジアンヴェナトルの後肢はいくつかの系統の形態が混在している。アルカエオプテリクスとアンキオルニスにみられるアルクトメタターサルでない足、アルカエオプテリクスと同様に中足骨IIがIIIとIVよりも幅広いこと、ドロマエオサウルス類と一部のトロオドン類にみられる蝶番関節のある中足骨IIIなどである。つまりフジアンヴェナトルにはいくつかの系統の特徴がモザイク的に混じっている。
特徴の一つは後肢の比率、つまり下肢が長いことである。著者らは前肢と後肢の骨について、代表的な多変量解析である主成分分析を行い、PC1, PC2, PC3 の三次元プロット(形態空間)の図を示している。前肢と後肢全体、または前肢の骨だけについて分析すると、フジアンヴェナトルは他のジュラ紀のアヴィアラエと近い位置にきた。ところが後肢の骨だけについて分析すると、フジアンヴェナトルはジュラ紀のアヴィアラエを含めて他のすべての獣脚類からかけ離れた位置にきた。フジアンヴェナトルは、飛翔に向けて前肢が発達するようなアヴィアラエの主流からは逸脱したものということになる。
脛骨や中足骨が長いことは、一般に高速での走行に適していることを表す。cursorial limb proportion (CLP)スコアという指標を計算して、他の獣脚類のグループと比較すると、フジアンヴェナトルは一般に疾走に適しているとされるトロオドン類やティラノサウルス類と比べても、ずっと高いスコアを示した。この数値をみるとフジアンヴェナトルは地上での高速走行に適していることになる。しかし様々な生態の現生鳥類を含めて解析してみると、フジアンヴェナトルはコウノトリやツルのような渉禽類と近い位置にきた。フジアンヴェナトルが産出した地層からは硬骨魚類、カメ、コリストデラなど水生または半水生の生物が見つかっている。フジアンヴェナトルの長い脚は沼沢地などの浅瀬に立って魚類などを捕食するためである可能性がある。残念ながら、これらを解明するために役立つ足の指骨は保存がわるく、実証するのは困難であるという。獣脚類の各グループと比較したときに、走行に適しているグループとも離れていることからは、走行とは別の機能という気もする。
参考文献
Xu, L., Wang, M., Chen, R. et al. A new avialan theropod from an emerging Jurassic terrestrial fauna. Nature 621, 336–343 (2023). https://doi.org/10.1038/s41586-023-06513-7
フジアンヴェナトルは、後期ジュラ紀チトニアン(Nanyuan Formation)に中国福建省南平市政和県に生息したアヴィアラエ鳥類で、2023年に記載された。頭と首を除いた胴体がほぼ完全に保存されている。これは、頭骨がなく食性の決め手がないのになぜヴェナトルにしたのかな。アヴィアラエなら、オルニスとかアヴィスでいいような気がする。
他のすべての原鳥類Paravesと区別されるフジアンヴェナトルの特徴は多数の形質の組み合わせからなる。手の第I指の末節骨が他の指の末節骨よりもずっと大きい(これはアンキオルニスやアルカエオプテリクスにもみられないが、白亜紀の鳥類にはみられる)、手の指骨II-1が II-2より長い、脛骨が長く大腿骨の2倍の長さである、中足骨IIが他の中足骨よりも幅広い、などからなる。
系統解析の結果、フジアンヴェナトルはアンキオルニス、シャオティンギア、アウロルニス、エオシノプテリクスとともにアンキオルニス科に含まれた。アヴィアラエの中で最初にアンキオルニス科が分岐し、次にアルカエオプテリクスが分岐し、残りが孔子鳥類、エナンティオルニス類、真鳥類へとつながる形となった。
フジアンヴェナトルは手の指骨の比率についてはアルカエオプテリクスと似ている。アルカエオプテリクスと同様に末節骨以外の最も長い指骨はI-1である。一方シャオティンギアとアンキオルニスではII-2 である。しかし腰帯はアンキオルニスやトロオドン類の特徴を示す。短い座骨や遠位にある閉鎖孔突起はアンキオルニスと似ている。一方、幅広い恥骨エプロンpubic apronはトロオドン類と似ている。フジアンヴェナトルの後肢はいくつかの系統の形態が混在している。アルカエオプテリクスとアンキオルニスにみられるアルクトメタターサルでない足、アルカエオプテリクスと同様に中足骨IIがIIIとIVよりも幅広いこと、ドロマエオサウルス類と一部のトロオドン類にみられる蝶番関節のある中足骨IIIなどである。つまりフジアンヴェナトルにはいくつかの系統の特徴がモザイク的に混じっている。
特徴の一つは後肢の比率、つまり下肢が長いことである。著者らは前肢と後肢の骨について、代表的な多変量解析である主成分分析を行い、PC1, PC2, PC3 の三次元プロット(形態空間)の図を示している。前肢と後肢全体、または前肢の骨だけについて分析すると、フジアンヴェナトルは他のジュラ紀のアヴィアラエと近い位置にきた。ところが後肢の骨だけについて分析すると、フジアンヴェナトルはジュラ紀のアヴィアラエを含めて他のすべての獣脚類からかけ離れた位置にきた。フジアンヴェナトルは、飛翔に向けて前肢が発達するようなアヴィアラエの主流からは逸脱したものということになる。
脛骨や中足骨が長いことは、一般に高速での走行に適していることを表す。cursorial limb proportion (CLP)スコアという指標を計算して、他の獣脚類のグループと比較すると、フジアンヴェナトルは一般に疾走に適しているとされるトロオドン類やティラノサウルス類と比べても、ずっと高いスコアを示した。この数値をみるとフジアンヴェナトルは地上での高速走行に適していることになる。しかし様々な生態の現生鳥類を含めて解析してみると、フジアンヴェナトルはコウノトリやツルのような渉禽類と近い位置にきた。フジアンヴェナトルが産出した地層からは硬骨魚類、カメ、コリストデラなど水生または半水生の生物が見つかっている。フジアンヴェナトルの長い脚は沼沢地などの浅瀬に立って魚類などを捕食するためである可能性がある。残念ながら、これらを解明するために役立つ足の指骨は保存がわるく、実証するのは困難であるという。獣脚類の各グループと比較したときに、走行に適しているグループとも離れていることからは、走行とは別の機能という気もする。
参考文献
Xu, L., Wang, M., Chen, R. et al. A new avialan theropod from an emerging Jurassic terrestrial fauna. Nature 621, 336–343 (2023). https://doi.org/10.1038/s41586-023-06513-7
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