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アウストラロヴェナトル




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ネオヴェナトル科のメガラプトル類アウストラロヴェナトルは、2006年から2010年にかけてオーストラリア恐竜の時代博物館とクイーンズランド博物館の発掘調査により発見され、2009年に記載された。アウストラロヴェナトルの化石は、ティタノサウルス類ディアマンティナサウルスの骨とともに散在して発見された。2009年の論文では、分離した歯、左の歯骨、数本の肋骨、腹肋骨、前肢と後肢の部分骨格が見つかっていた。
 その後、前肢や後肢の追加の骨が発見されて、2012年に続報の論文が出ている。新しく見つかった前肢の骨は、左右の上腕骨、右の撓骨、右の撓側骨(手根骨)、右の第1遠位手根骨、右の第I中手骨、左の指骨II-1, II-2, III-3、ほとんど完全な右の指骨II-3(末節骨)である。右の指骨I-2 とIII-4は既に見つかっていたが、今回の追加で第I、第II、第III指の末節骨がそろったことになる。また前肢全体としてもほとんどの骨が見つかっているので、コンピュータ上で復元した像(手)が示されている。


図1 アウストラロヴェナトルの右手の復元(発見されている骨を示す)。Copyright 2012 White et al.

論文の主体をなすresultsの部分は、前肢の骨の形態学的記載が延々と続く。これは研究には絶対不可欠で本質的なことと思うが、アマチュア恐竜ファンにとって面白い部分ではない。興味があるのは、比較して考察している部分である。追加の発見により、アウストラロヴェナトルは四肢の骨についてはネオヴェナトル科の中でも最も完全なものとなったので、他のネオヴェナトル類と比較している。
 上腕骨が比較できるのはフクイラプトルとチランタイサウルスしかない。アウストラロヴェナトルの上腕骨は、フクイラプトルと似ている。両者とも骨幹が同じように曲がっており、三角胸筋稜deltopectoral crestは丸く、近位端も遠位端も細くなっている。アウストラロヴェナトルとフクイラプトルでは、上腕骨遠位端のradial condyle とulna condyleの形状が異なるようである。チランタイサウルスの上腕骨はもっとがっしりしており、よりまっすぐである。チランタイサウルスの三角胸筋稜は骨幹から90°近い角度で立ち上がっている。
 指骨II-1の形態は、アウストラロヴェナトルとフクイラプトルで異なっている。遠位の関節顆distal condyles と近位端proximal endの高さが、フクイラプトルではほとんど同じであるが、アウストラロヴェナトルでは遠位の関節顆の方が小さいという。

メガラプトル類は、第I指の末節骨が大きな鋭いカギ爪として発達している。メガラプトル、アウストラロヴェナトル、フクイラプトルに共通して、内側と外側で溝の位置が非対称という特徴がある。内側溝medial grooveは先端に向かって中央を通っているが、外側溝lateral grooveは先端に向かって背側を通っている。一方、第II指の末節骨では内側と外側で同様であり、対称的な形をしている。
 また、アウストラロヴェナトルでは第I指の末節骨は第II指の末節骨よりもひとまわり大きいくらいで、第I指と第II指でそれほど大きさの差はない。これはフクイラプトルでも同様であるという。一方、メガラプトルでは第I指の末節骨は非常に大きく、第II指の末節骨はそれよりもかなり小さい。つまり第I指と第II指で大きさの差が著しい。
 末節骨の基部の高さと幅の比率が、ネオヴェナトル科の共有派生形質として用いられている。それによると、比率が2.3より大きければネオヴェナトル科に含まれることが支持されるという。アウストラロヴェナトルの場合、第I指、第II指、第III指の比率は、それぞれ2.29, 2.22, 2.41であるという。結構微妙な値であるが、論文では、だからどうだというコメントはしていない。このような新しいデータをもとに、基準なども改訂されていくということかもしれない。




図2 アウストラロヴェナトルの前肢の末節骨。White et al. (2012) の論文の3つの図からスケールを合わせて作成した。カギ爪の先端の推定は筆者による。




図3 メガラプトルの前肢の指骨。Calvo et al. (2004) に基づいて作成。カギ爪の先端の推定はCalvo et al. (2004)。

残念ながら頭骨はほとんど見つかっていないが、オーストラリアの博物館には復元骨格(全身ではないようだが)があるらしい。これは吻の形や鼻孔が細長い点など、メガラプトルの幼体の復元を参考にしているようにみえる。

参考文献
White MA, Cook AG, Hocknull SA, Sloan T, Sinapius GHK, et al. (2012) New Forearm Elements Discovered of Holotype Specimen Australovenator wintonensis from Winton, Queensland, Australia. PLoS ONE 7(6): e39364. doi:10.1371/journal.pone.0039364

Calvo JO, Porfiri JD, Veralli C, Novas F, Poblete F (2004) Phylogenetic status of Megaraptor namunhuaiquii Novas based on a new specimen from Neuquen, Patagonia, Argentina. Ameghiniana 41: 565–575.

Hocknull SA, White MA, Tischler TR, Cook AG, Calleja ND, et al. (2009) New Mid-Cretaceous (Latest Albian) Dinosaurs from Winton, Queensland, Australia. PLoS ONE 4(7): e6190. doi:10.1371/journal.pone.0006190
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