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肉食の系譜
ティラノサウルス ポーズ8

友達に「ティラノサウルスの絵、描いてよ」と言われて、さらさらと描いてみせる場合はやはり、斜めこちらを向いてガッと口を開けている感じがいいでしょうね。「こちらに向かって襲ってくる」シーンは、獲物が恐竜であれ人間であれ、定番中の定番である。
ティラノサウルスを描く場合、世間にイメージがあふれているため、どうしても映画やテレビのイメージがかぶってきてしまうということはある。やたら大きく、強く、頑丈な印象が強調される。ジュラシックシリーズのCGなんかはさすがによくできていると思うが、CGにも結構いろいろある。日本の放送局の科学番組(なんとかスペシャル)のティラノサウルスのCGには、気になることがあった。
ティラノサウルス類(ティラノサウリダエ)の魅力の一つとして、目鼻立ちが整っていることがあるだろう。眼窩が斜め前方を向いていることに関連して、ティラノサウルスでは額から鼻すじにかけて、Y字形がある。左右の涙骨の前方突起(眼の上前方の水平なところ)が鼻骨の後方部分につながるところのY字形である。ティラノサウルスでは上顎の腹側はわりと幅広いが、鼻骨は結構細長いので、涙骨のすぐ前方でキュッと引き締まって、鼻骨の幅が狭くみえる。文字通り、鼻すじが通っているわけである。これはティラノサウルス科が美形である一つの要素ではないだろうか。
なんとかスペシャルのティラノサウルスCGは、鼻すじが妙に太いように見えた。鼻骨の幅が広すぎるのではないかと思ったが、どうも外鼻孔の位置よりも外側に稜をつけているようだ。つまり涙骨のひさし状の角質を、ずっと前方に延長していて、それが鼻骨の幅よりも外側、前眼窩窓の上あたりを走っているのである。これは違和感があった。アロサウロイドでは鼻骨の側面が高くなっていてゴツゴツした粗面があるので、自然に角質の稜をなすと思うが、コエルロサウルス類ではそういうことはない。涙骨のひさしが前方の鼻骨のわきにずっと伸びているという根拠はない。ティラノサウルス類の鼻骨は中央が盛り上がっていてゴツゴツした粗面があるが、側面の上顎骨とつながる部分はなめらかである。このCGでは、大型肉食恐竜であるアロサウルスやギガノトサウルスなどが、みな鼻骨のわきに稜があることから、ティラノサウルスでも稜をつけないといけないと思ったのではないか。ティラノサウルス類では鼻骨のわきに稜をつけるのではなく、背面にゴツゴツした突起をつける方が良いと思う。
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