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「恐竜博2016」with 宮下さん講演会(2)


恐竜博見学の後は、宮下さん講演会、さらに恐竜倶楽部主催の懇親会と、充実した1日でした。

宮下さん講演会の内容については、多分パンテオンに上がると思いますので、ここでは詳細な紹介はしませんが、現在取り組んでいるいくつかのプロジェクト、ロイヤルティレル及びアルバータ大のフィリップ・カリーに師事した経緯、フィリップ・カリー論、これから研究者を志す若い人たちに向けた座右の銘(ノーベル賞物理学者ワインバーグの4つの心得)からなっていました。

私が最も面白かったのはフィリップ・カリー論の部分ですね。これは、宮下氏がいかにしてアルバータのフィリップ・カリーの元へ押しかけたかという経緯に続いて、カリーの人物像、人柄について語ったものです。宮下氏が10歳の時に読んで恐竜研究を志すきっかけとなった、「最新恐竜ハンドブック」の話。これは筆者も読んだが確かに、他の本と違って「研究する視点」があったと思います。
 また2003年の3つの論文、特にCurrie (2003) (北アメリカ産のティラノサウルス類の頭骨の記載・比較解剖学)について、読んでいて心地よいリズムがあるなど絶賛していましたが、宮下氏がいかにフィリップ・カリーに心酔しているかが窺い知れる語り口でした。13年間一緒にいてこれまで一度もフィリップ・カリーに対してがっかりしたことがないそうです。カウディプテリクスなど羽毛恐竜についても主導的な立場にあったが、激化する競争から身を引いて地道な研究に専念したというエピソードについても語っていました。
 講演終了後、真鍋先生が、フィリップ・カリー教およびアルバータ教の布教活動とおっしゃったのが受けました。アルバータ教は日本の高校生をアルバータに送り込んでしまう、恐ろしい宗教のようです。

それはいいが、宮下さんの講演を聴いた後で、大変なことに気がついた。
この「肉食の系譜」も初期の段階でフィリップ・カリーの影響を受けているのです。

私theropodが、最初に読んだ恐竜の論文が、宮下さんの絶賛したCurrie (2003)です。ゴルゴサウルスとアルバートサウルスの違いがどうしても知りたかった私は、Currie (2003)にたどり着いた。ポーランドのActa Paleontologica Polonica はオープンアクセスの学術誌で、無料でPDFが入手できた。古生物学の論文なんて、おそらくちんぷんかんぷんだろうと予想していた割には、結構わかりやすく書いてあるので、ある程度は理解できたのです。フィリップ・カリーの論文は、論旨が明確でわかりやすく、余計な部分がない。それでいて他の獣脚類についても豆知識が得られて、教育的でさえある。そのおかげでシンラプトルやシノサウロプテリクス、アクロカントサウルス、マプサウルスなど多くの獣脚類の論文も読む気になった。そうだった。Currie (2003)が素人には到底読めないような難解な文章だったら、「肉食の系譜」もなかった。
 私はカリー教の信者ではないと思うが、それは他にもSereno, Xu, Makovicky, Norell など他の研究者の論文に手を広げたからにすぎない。カリー教の魔力は、普通の職業に就いている大人にも作用するのかもしれません。
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