tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

「ウェルカム トゥ バンコク」

2010-11-29 22:02:27 | プチ放浪 都会編

 
 
   



「Welcome to Bangkok!」
機長の現地気温32℃を告げるアナウンスに、隣の窓側の席に座っていた横浜国立大学の留学生の彼女は嬉しそうにぼくにそうつぶやいた。
朝の成田の気温は14℃だった。だから日本とバンコクの気温差は20℃近くってことになる。
偶然にも彼女とは、成田から台北を経由してバンコク・スワンナプーム国際空港までずっと隣り合わせだった。

台北行きチャイナ・エアラインのボーイング747‐400の最後列の2列シート。グッド・シートと呼ばれるその窓側の席に彼女はいた。窮屈なエコノミー席の中で最もくつろげると言われている席だ。
彼女に声をかけたのは、ぼくの思い違いからだった。彼女の前のシートポケットには見慣れない小豆色のパスポートが覗いていた。
ホテルとエアチケットが組み合わされた格安ツアーでのバンコク行きだったから、彼女も同じ旅行会社に旅行を申し込んだのだろうと勝手に思いこんでいた。だが、話を聞いたら違っていた。
つまり、台湾行きのジャンボジェットに、バンコクを目指す2人が乗り継ぎを含めてずっと隣り合わせの席だったというのは、天文学的な数字の確率から来る偶然に違いない。

彼女はタイ王国政府の公務員だった。現在、横浜国立大学に派遣留学中で、国際社会科学研究科で都市のインフラストラクチャーの整備とマネジメントを学んでいる。
彼女の専門は・・・たぶん、治水。
”たぶん”というのは、彼女がたった一言だけ発した日本語「コウスイ」の意味が良く分からなかったからだ。
彼女の「コウスイ」という言葉を「洪水」と解釈したぼくは、「もろいよね?」と問いかけると、彼女は大げさに同意した。
そして、
「日本人で”コウスイ”と言って解ってくれたのは、あなただけよ」
とほめてくれた。
”日本人であなただけよ”って、初めて会った外国の女の子にいつも言われるのは、ぼくの数少ない取り柄の一つなのだろうか・・・。

大雨でタイの東北部と中部を中心に洪水が発生し、数千戸が浸水、危機的な状況になったのはつい先日のことだ。
複数のダムで決壊を防ぐ放流が行われたため、バンコクでもチャオプラヤ川が増水したことをニュースが伝えていた。

・・・だが、彼女の言う「コウスイ」は、今思えば、地下水としての「鉱水」のことだったのかもしれない。
タイ王国は総人口6,300万人。うち約20%が都市域に住む。資源として使える水量は、日本の約1/3 。公共水道の普及率は、都市部においては、70%以上カバーされているそうなのだが、東北の農村部においては、水道の普及率はかなり低いようだ。タイで主な利用水源は、雨水、地下水、そして、水道。

「見て。山がないでしょ」
飛行機の窓から見えるバンコクの景色に彼女は言った。
「都市部に降った雨は、ほとんど利用されずに海へと流れていくのよ」
彼女は顔を曇らす。
経済発展に伴い生活様式が変わると、今後、タイ王国では水事情が激変する可能性が非常に高い。
バンコク周辺では、地盤沈下を防ぐため井戸水の取水制限がある。その上、地下でも海水の影響もあるため、水を得るにはかなり深い井戸が必要になる。
また、タイの多くの河川はシルト質の粘土が水に含まれて茶色く濁っている。タイの水道は、河川の表流水を浄水場で沈澱処理して配水しているのだが、都市部の水の問題はかなり深刻なものになっていくのかもしれない。


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