(「松風の家」文春文庫上巻・下巻の目次)
辰寿は、静々斎(第14世後之伴家家元)の妻となった紗代子の養母である。
下巻第13章242ページで、作者は、辰寿に、こう語らせている。 (結婚が決まった紗代子に、
辰寿が言い聞かせる場面)
、、、無縁の人が、そばさ集まって来て、このひとが茶を教えでんなら、自分も茶を習わねくていられね、
っつう思いに駆られるようなもんを、紗代、お前はこれから会得していがねくてなんね。親の目から見て、
お前はまず器量も十人並み、気性も強靭、この上さ、人を惹きつけるもんば工夫して身につければ、成功疑いなしだと思う。
そいづには一に言葉、二に金だっちゃ。
(中略)
、、、お前が人に嫌わったら、後之伴家は盛上んね。お前が花、人は蝶、つねに蝶が群れ集ってくるよう、
さらにいっそう工夫をすんでがすと。んで、紗代、言葉ばかしなんぼ巧みでも、そんだけで人ば心服させっ
ことはなかなかむずかしい。口は無料、っつう思いが誰の心のうちさもあっからっしゃ。
そごで、思いやりの気持、やさしい心配りさついては、金っつうもんで証しを立ててみせねくてなんね。
とくに、人の上さ立つべき人間は、金の持つ役割と便利さば十分に心得、つねにこれを武器と見立てて
使いこなす必要がある。
(後略)
一に言葉、二に金だっちゃ。。
いいねえ、、誠に、人間の心理をついておる。真理あり、だと思う。
この小説の凄いところは、物語作りの「起承転結」が、非常に鮮やかなこと。
又、それぞれの「起」「承」「転」「結」、読者を読ませ泣かせ、エンターテインメントたっぷりなのである。
特に、下巻第8章は、大事な大事な「転」の部分。書き手として成功してますわ。。一気に場面転換。
その流れの中で、「結」の部分にあるヤマバがこの13章。東北弁の持つ温かみで包んで
豪傑女辰寿に言わせている所がニクイ。
というぐらいに、面白いのであります。
(まだまだ続く、松風の家)
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