全国人民代表者大会(全人代)の初日、李克強首相の政府活動報告で、2019年の軍事費(国防費)は前年比7.5%増の1兆1898億元(約19兆8000億円)と20兆に迫る予算額を提示した。今世紀半ばまでに「世界一流の軍隊」を目指す習近平指導部の「軍事強国路線」が改めて鮮明になった。2000年の中国の軍事予算(約1210億元)なので、2000年と比べて10倍程度の軍事予算である。中国海軍の空母は現在、空母「遼寧」が実戦配備されていて、初の国産空母となる2隻目がまもなく実戦配備予定だ。さらに、3隻目の建造に着手していると伝えられている。
2019年の米日の軍事予算規模は、米国が80兆1500億円、日本が5億2600億円。中国の軍事予算規模は米国の4分の1、日本の4倍となる。11隻の空母を保有している米国とはまだ予算的には開きが大きいので、予算規模を今後もますます増大させる方針のようだ。中国は最新鋭の中距離弾道ミサイル「東風26」やステレス戦闘機「殲(せん)20」などの装備を部隊に着々と配備。米中露が開発を競う「極超音速」兵器などの次世代戦力の研究開発に関しては、「分野によっては世界に先行している」とも言われている。米国国防総省の国防情報局は、「台湾問題が中国軍の近代化の推進力」と分析している。どのような過程を経るかはわからないが、台湾統一は中国共産党にとって、1949年の新中国の建国以来「必ず成し遂げるべき」核心的最重要課題であり続けている。
3月7日頃のANN(日本のテレビ報道)によれば、中国にとって「最新機器の生産に必要な半導体」の多くは、米国や台湾などからの輸入に頼っている状況があるという。現在、中国での半導体生産の自給率は15%となっている。米国との貿易摩擦の深刻化により、半導体なども米国からの「輸出制限」がかかっているようだ。中国では半導体の部品や素材を作る技術が不足していて、"中国だけの生産"は現状ではまだ難しいと報道されていた。中国にとって「半導体の自国だけでの生産体制の確立」は米国との対抗上、これは最重要課題となっていると伝えられていた。
「中国製造2025」計画は、ハイテク分野への莫大な国家資金投資を最重要課題の一つとして、官民一体となって2025年を目標に世界トップに躍り出ようという計画だ。今回の李首相の政府活動報告の中では、「2025」という言葉は米国への刺激を避けて使わなかったようだが、半導体の国産化を2025年までに70%にするということや、ハイテク分野における世界トップを目指すということを報告していた。
最近、中国は月の裏側に機器を着陸させるという人類初の成功を行った。地球上の地上・海・空だけでなく、宇宙開発における中国の勢いは最近すごいものがある。米国GPSに対抗する中国版GPS(中国独自の衛星測定システム「北斗」)は、中国国内だけでなく、まずはアジア・アフリカを中心に勢力圏を築き、さらに世界に広げようとしている。
また、「キラー衛星」と米国から呼ばれる衛星の打ち上げも米国から警戒されている。米国などのGPS衛星などが捕捉されたり破壊される(キラー・殺)ことへの警戒感だ。GPS衛星が破壊されれば、空母や軍艦も戦闘機もロケットなども、近代兵器はほとんど無力化させられてしまう。中国軍の内部資料文書(2010年)には、「宇宙は未来の戦場だ。『制天権』を奪取しなければならない」と記されていることも、2019年1月の朝日新聞では報道されていた。「中国生産2025」によって、10年間ぐらいでは埋められない米国との軍事力の隔たりを 宇宙戦略の軍事力で 米国に劣る総合力をカバーしようという戦略なのかもしれない。ちなみに、中国では、膨大な軍事兵器研究開発費などは、軍事予算内には入っていないようなので、それを含めると2019年の軍事・防衛・研究開発費は20兆円をはるかに超えた額となるのだろう。
最近発売された『中国製造2025の衝撃—習近平派はいま何を目論んでいるのか』(遠藤誉著)—中国の半導体と宇宙開発が世界を制する。中国研究の第一人者による、日本人が知っておくべき驚愕の事実—は、中国が2025年、2032年、2050年に向けてどのような国家戦略をもっているのかが詳しく書かれている書籍のようだ。今度日本に一時帰国の時に、購読し読了しようと思っている。
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