彦四郎の中国生活

中国滞在記

中国の結婚状況は、この10年間でものすごく大きく変わったなあ―5月20日は、「私は貴方を愛していますの日」

2023-05-27 14:56:02 | 滞在記

 2013年から中国で暮らし始めて、「中国における結婚に対する若い人々の意識、結婚事情、結婚数などの状況」が、この10年間でものすごく大きく激変したなあと感じている。「結婚適齢期までに結婚しなければ‥」という考え方が、多くの若い人の意識から薄くなってきていることだ。「日本概況」などの大学の授業の中での一コマ「日中結婚比較」の中で、ほぼ毎年、学生たちとこの結婚問題や意識について話し合いもしているので、この結婚に対する意識の変化もかなり分かることとなった。

 2013年・14年の頃、女子学生たちに聞くと、「①遅くても結婚適齢年齢範囲ギリギリの26歳までに結婚をしなければならないだろう。➁婚約又は結婚するまでは、挿入を伴うセックスはしない。③結婚する際、男性側は、女性の処女性を求める人が多いので、もし今、付き合っている男性がいても、婚約がほぼ決まっていなければ、セックスに於いては、完全挿入はさせない」というような意識実態だった。男子学生たちに聞くと、「30歳までには結婚したい。遅くでも31・2歳までには」という学生が多かった。このような結婚やセックスに関する意識は、日本における1980年頃までの意識と同じように思われた。

 ところが、2017年頃から結婚に関する、特に女子学生の意識が大きく変わり始めたのだ。「結婚はしたくない」という女性が徐々にだが増え始めてきたのだった。そして、2023年の現在、男性もだが、特に女性では結婚をしたくないという女性は、特に都市部でさらに増加し、もし結婚するとしても、「この人ならば結婚してもいい」という人が現れるまで待ち、結婚適齢期年齢をあまり気にしない晩婚傾向も出始めているように思われる。

 ところで、5月20日は、中国では最近は、「愛の日」「ロマンチックな日」となっている。そして、この日に「婚姻届け」を出すカップルも多い。また、現在、付き合いをしている男女カップルは、夜の飲食を共にする日ともなっている。なぜ、5月20日がそのような日になったのか‥。中国語で「520(Wu Er Ling)」の発音が、「私はあなたを愛しています」という意味の「我愛你(Wo Ai  Ni)」の響きと似ているからだ。また、「1314」は「一生一世(イー・サン・イー・スー)=一生あなたを愛します」という意味に似ていることから、520と1314を続けて、5月20日に、誰かに愛を告白するメッセージとしてこの数字(5201314)を相手に送信することも流行っている。

 近年、そのロマンチックな響きの日を結婚記念日にしようと、5月20日に婚姻届けを役所に提出するカップルも多くなっているようだ。(結婚式や披露宴は別の日にするが‥)  日本のテレビでもこのことが報道されていたが、今年の5月20日は土曜日に当たったので、各地の役所の担当部門は休日返上で手続きにあたり、門出を迎えたカップルを祝福した。このテレビ報道でもされていたが、中国では、10年前の2013年と結婚件数(人数)を比較すると、たった10年間で、ものすごく大きく結婚をする人が激減しているのだ。このため、人口減少や出生率を少しでも歯止めをかけるために中国政府も「結婚を奨励する」、さまざまな取り組みも始めていると伝えられている。

■中国政府による統計では、2013年に結婚をした人の数は2386万人だったが、8年後の2021年に結婚をした人の数は1158万人と半減(約50%もの減少)となっている。2021年はコロナ感染による「ゼロコロナ政策」のただなかにあり、そのことも多少の影響はあるかと思われる。しかし、2013年以降は減少傾向がずっと続いているのが実情だ。

 中国では、男性は60歳、女性は50歳(幹部は55歳)定年となっていて、定年後の最大の仕事とというか生きがいは孫の子育て(孫育て)だ。だから、我が子が結婚適齢期に結婚し、孫が誕生するのを心待ちにしている人が多い。しかし、中国では慣例上、男性側は結婚に際して、「持ち家・車、そして、結納金。さらに、結婚式や結婚披露宴のお金(※日本では結婚披露宴に参加する人は3万円前後のお金を祝儀として出すが、中国ではそのような慣例はあまりないようだ。)」などを準備しなければならない。それは、ものすごく多額の金額となる。これもまた、結婚することが難しい要因ともなっている。でも、中国の父母たちは、なんとかしてこのお金を準備しようと努力する。

■特に都市部での住宅購入(持ち家)には多額のお金が必要となる。例えば、新築の3LDKの住宅(高層マンション)を購入する場合、地方大都市の福建省福州市では、平均的に300万元くらいが必要となる。(300万元➡日本円では約5100万円)   このお金を準備するためには、当然に、男性側の両親・親族、女性側の両親・親族がそのお金の多くを準備することとなる。(「持ち家」ではなく「借家」を準備することは、恥ずかしいことだという意識が、まだ、かなり強くあるのが中国社会なのだ。)

 日本での現在の大学卒業生の初任給平均は22万円余り(➡中国元では1万3000元)。中国での現在の大学卒業生の初任給平均は、5000元余り(➡日本円では8万5000円)。つまり、日本と中国の賃金格差は、日本の方が中国の約2.5倍となっている。このことから単純計算をすると、中国での300万元の住宅物件の購入価格は、日本では(300万元×2.5倍=750万元)の物件に相当する金額なのだ。

 750万元は日本円では約1億2700万円となるので、「億円ション」の住宅を買うという金額を結婚のために準備しなければならなくなる。(※ただし、300万元が準備できなくても、「住宅ローン」を組んで購入契約を結ぶことは、当然に可能なので、頭金として100万元余りが準備できれば、購入できる‥。だが、ローンを組んだとしても、ローンの支払いはものすごく大変なことは間違いない。(「億円ション」であれば、日本の場合、すごく立派な住宅となるが、中国での300万元新築住宅は、日本では3000万円ほどで購入できる物件かと思う。)

■中国では、2020年以降、「不動産バブルの崩壊」に近いできことが推移している。(なんとか、中国政府も崩壊に至らないように方策をとってはいる。) このため、「住宅を購入し、値上がりを見越しての財産として、次にもっといい住宅を購入したりするために売れば(転売)いい。住宅購入=財産を増やす最も有力な方法」ということは、ほぼ難しくなっている。

■中国で結婚をする人がこのように大きく減少してきているのは、大学の進学率が急増し、女性も大学に進学する人がとても多くなったこととも深い関係がある。(中国の現在の大学進学率は約40%超となっている。) 「結婚により、自由な時間がなくなる、自分の好きなことができにくくなるのはいやだ」という考えの女性の増加だ。

 一方、日本の結婚事情、結婚に対する意識、結婚状況はどうかというと、1945年以降(戦後)の結婚数統計では、結婚件数が最も多かったのは、1971年の約110万。その約50年後の2022年では、約50%減少の約53万件。そして、2022年、日本の初婚の時の平均年齢は、男は30.7歳、女は29.0歳。また、50歳までに結婚していないという「生涯未婚率」は、男が25.7%、女が16.4%となっている。

■このように、日本では50年間を経て結婚件数が半減したわけだが、中国ではこの10年間の社会や人々の意識がとても急激(急速)に変化したためか、結婚件数もたった8年間で半減している。

 5月16日頃、「先生、20日の夜に一緒に食事しませんか。甘さんも一緒です」と閩江大学卒業生の王さん(男)から連絡があった。この日、二人は私のアパートに午後3時頃に一緒に来て、タクシーに3人で福州市内の古刹「西禅寺」に向かった。1時間ほど大きな伽藍の境内を巡り、午後5時頃に西禅寺を出て再びタクシーに乗り、福州学生街の近くにある「日本料理屋」の「上野一番」にて、この王さん・甘さんの二人にとって大切な「5.20」の夕食を二人と共にすることとなった。(「上野一番」で夕食をとることを希望したのは甘さん。彼女はこの店は初めて来ることとなった。日本食式「すき焼き」などが最近、中国の若い人たちの間で人気料理となっている。)まあ、今、中国では日本料理の人気が若い年齢層を中心に高くなってきているので、日本料理店も増加している。甘さんもすき焼きが好きらしく、「上野一番」に向かうタクシーの中で「すきやき、すきやき」と小声で口ずさんでいた。

 ちなみに、現在における日本の離婚率は「3組に1組」となっている。世界の主要国60カ国の「離婚率」では、1位はダントツのロシア。続いて2位はロシアの隣国であるベラルーシ。中国は35位で、日本は39位となっているので、日本と中国の離婚率はほぼ同じくらい。

 

 

 


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