彦四郎の中国生活

中国滞在記

衆議院議員選挙結果を巡って➊日本における貧富格差、コロナがさらに貧困問題を直撃したが

2021-11-20 08:46:15 | 滞在記

 今年の8月には支持率が30%前後と低迷していた菅政権。9月にはいり、菅首相の突然の事実上の辞任表明を受けて、自民党内の政局は一気に動いた。そして、9月29日の4氏による自民党総裁選挙で岸田文雄氏が自民党総裁に選出され、10月4日に岸田内閣(政権)が発足した。その内閣や幹事長など自民党中枢幹部の顔ぶれは、安倍・麻生元首相の政局影響の強いものとなっていた。その後、10月31日に衆議院議員選挙を行うという短期決戦を決めることとなった。

 この衆議院選挙までの3週間、さまざまな報道期間は、選挙の争点や結果の予測について報道がされる。10月20日付朝日新聞には、「衆院選告示 コロナ・格差・多様性問う―岸田・菅・安倍政権に審判、5野党/217選挙区」の見出し記事、10月中旬の朝日新聞には「岸田首相"新しい資本主義"源流たどる―"分配重視の源流探る"独自色打ち出す/渋沢栄一に共感」などの見出し記事もあった。岸田首相はかなり、新自由主義によって拡大してきた格差や貧困の問題を意識した政策を選挙戦でも模索もしているよでもあった。

 選挙前の10月下旬の夕刊紙「夕刊フジ」では、「自民50減—甘利幹事長落選危機」「自民単独過半数割れ、勢いは間違いなく共闘野党」「ジリ貧岸田自民 地滑り的な敗北の可能性」などの見出し記事が掲載されてもいたが‥。

 この1年間、新型コロナ感染拡大が繰り返され、これにより、「貧困問題」がより拡大してきていた。特に、非正規で働くシングルマザーなどの生活困窮が、より広範な人々を直撃してきていた。書店には、『貧困女子—助けてとは言えない39人の悲しき理由』(カラダを売っても食べるのがやっとの生活 人生が自転車操業 もう限界)や、『東京貧困女子』、『女性たちの貧困』など、非正規労働の女性たちの問題についての書籍も並んだ。

 この10月29日付朝日新聞の「母子SOS"住む場所失う"―コロナ禍直撃、仕事・貯蓄なし 全財産2万円、1歳児と―"貧困の連鎖断つ策を」の見出し記事を読み、胸が詰まった。

 10月25日付朝日新聞には「格差の時代―激しさ増す"ことば"」の見出し記事。記事には、「ワンチャン」(成長神話よりも偶然性)、「上級国民」(ネットで伝染する悪意)、「タワマン文学」(図式化が作り出す幻想)などのことばが説明されていた。同じく10月20日付には、「30年間増えぬ賃金 日本22位 上昇率は4.4% 米国47% 英国44%」の見出し記事。記事によれば、日本人勤労者の平均賃金は424万円で、米国とは339万円も低いこと、G7諸国や韓国などと比較すると、この30年間の賃金上昇率が極端に低いというよりも、ほとんど上昇していない国であることが報道されていた。

 10月20日付朝日新聞、「新自由主義と社会保障―アベノミクス9年 非正規やひとり親への欠けた配分の回路」の見出し記事。(中央大学教授 宮本太郎筆)  「"1億総活躍"も"自助"もムリ筋—先に待つのは"無助"の社会」のネット記事(宮本太郎筆)もあった。10月21日朝日には「富裕な高額者への増税も"議論"を」(明治大学准教授 飯田秦之)、「下位層への再分配 道筋示して」(東京大学名誉教授 大沢真理)などの記事も。

 —日本における経済的格差(※純金融資産保有量2017年)の世帯階層別割合は次のようになっている―

❶超富裕層[5億円以上]8.4万世帯/全世帯の0.15%(84兆円保有)、❷富裕層[1億円以上~5億円]118.3万世帯/全世帯の2.2%(215兆円)、❸準富裕層[5000万円~1億円]322.2万世帯/ 全世帯の6.0%(247兆円)、

❹アッパーマス層<大衆上位層>[3000万円~5000万円]720.3万世帯/全世帯の13.4%(320兆円)、❺マス層<大衆層>[3000万円未満]4203.1万世帯/全世帯の78.2%(673兆円)

■この階層別割合を見ると、❶の超富裕層数と❷の富裕層数の割合は、日本の全世帯数の割合の2.35%となる。この経済的階層は、日本の純金融資産保有量の20%を占めていることとなる。

—日本人資産家ランキングTOP100(2020年)では、次などのようになっている—

1位柳井正(ユニクロ)2兆4000億円/年間所得20億円、2位孫正義(ソフトバンク)2兆2000億円/年間所得53億円、3位滝崎武光(キーエンス)2兆2000億円/年間所得10億円、4位三木谷浩史(楽天)5800億円/年間所得1.5億円、5位前澤友作(Zozo)2500億円/年間所得18億円、6位‥‥‥、‥‥‥100位。

※有名人としては、41位北野武/ビートたけし110億円/年間所得16億円、秋元康(AKB48などのプロデューサー)100億円/年間所得25億円、61位有吉弘行(タレント)51億円/年間所得6億円、85位指原莉乃(タレント)16億円/年間所得5億円、92位堀江貴文(著作業・実業家・タレント)10億円/年間所得3億円などが入っている。

—年間所得(給与)実態調査[国税庁発表2019年版]では、日本の勤労者6418万8985人の所得を次のように発表した—

❶100万円未満:898万人(13.9%)、❷100万円~200万円:1071万人(16.7%)、❸200万円~300万円:945万人(14.7%)、❹300万円~400万円:969万人(15.1%)、❺400万円~500万円:807万人(12.5%)‥‥‥‥‥、⓭1億円~2億円:1万6000人(0.03%)、‥‥、⓰10億円~20億円:442人(0.01%)、⓱20億円~50億円:206人、⓲50億円~100億円:31人、⓳100億円以上:16人

■この年の日本人の平均年間所得(給与)は436万円。貧困の目安とされる200万円以下の❶❷の合計比率は30.6%とされるので、勤労者の3人に1人はこの層となる。ちなみに、初任給を19万円とすると、1年目の人がボーナス込みで年間所得は260万円程度。平均年収436万円は、順当に昇進して社会に出て7年~10年という中堅どころが得る金額。❶❷❸❹の400万円以下の人の合計比率は60.4%。勤労者の3人に2人の割合となる。400万円以下が多いにもかかわらず、平均値を押し上げている高額所得者も多いことを示している。

■勤労者約6400万人に該当しない人が多い高齢者(年金暮らし)は、この勤労者年間所得データには入っていないので、これらを合わせると、年収が200万円以下の割合は、40%をはるかに超えて、50%近くになるのではないかと思われる。つまり、国民の2人に1人が相対的な貧困層だ。(※年金の平均支給額は現在、①国民年金と②厚生年金の両方を支給される人で年間147万円。これから、高額な税金や健康保険料や介護保険料などを徴収されると、あとにはあまり残らない。①の国民年金だけ支給される人は、さらにさらに所得が低くなり、年間の平均受給額は60万円ほど。これから税金や保険料などを引かれると、残るのは雀の涙ほどとなる。更に輪をかけて、年々、年金支給額は削減されてきている。)

■10月の「赤旗日曜版(日本共産党発行)」に、「1億円の壁=所得が1億円を超えると税負担率が下がる」という見出し記事が掲載されていた。それによると、年収が増えるほど税負担率は上がり1億円の所得に対する税負担率は27.9%となるが、1億円を超えるとだんだん税負担率の下降し、100億円の所得に対する税負担率は16.2%となっている。これは大企業や高額の株などの資産運用をして高額所得を得る者に対する超優遇措置だ。ちなみに、日本人の年間平均所得の場合の400万円~500万円への人への税金は20%。つまり100万円近くが税金として徴収されている。

■この2021年10月末に実施された衆議院議員選挙では、2000年代の小泉内閣(参謀は竹中平蔵)から始まった新自由主義政策によるこの所得格差(貧富の差)の拡大是正や非正規労働者の拡大是正(特にコロナ禍下で顕著となった貧困の問題)などが最大の争点となる必要があったのだが、そうはならなかった。選挙結果は、政党の中ではこの所得格差(貧富の差)是正に最も反対している日本維新の会が大躍進するという結果に終わった。

 


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