彦四郎の中国生活

中国滞在記

首都・北京とその周辺でクラスター、50万人以上の封鎖都市も―隠蔽体質を生んだ"市幹部たち罷免"がまたも

2020-07-02 10:20:55 | 滞在記

 世界でも最も厳しい中国の新型コロナウイルス感染拡大封じ込め政策。徹底した都市封鎖や徹底した住居区封鎖、徹底したPCR検査、徹底したクラスター感染追跡調査、徹底した隔離政策の追行。IT技術の最先進国・中国はビックデーターを駆使して、強権のもと人民管理も超超徹底している。「感染拡大防止のためにできることは全て何でもやる」中国社会。

 最近刊行された『新型コロナウイルスVS中国14億人』(浦上早苗著)6月8日発売の著書の裏表紙の紹介には「"コロナを世界にばらまいた元凶"として批判を浴びる中国だが、14億人もの中国人がどのようにこの未知なるウイルスと対峙したか、その実態は日本ではほとんど知られていない。中国が感染抑制のために講じた対策は、とんでもないスケールの大きいものだった。"マスクを外すとドローンが警告""GPSで感染リスクを追跡""5Gで感染者を遠隔診療""病院ではロボットが看護師に"、そして"ウイルスを故意に拡散したら死刑"‥‥技術と強権と監視を駆使した、畏敬の大国の異形のコロナ対策ドキュメント。」と。

 1月23日の武漢封鎖、そして1カ月間半後の3月上旬に、習近平主席がはじめて武漢を訪問し「感染拡大をほぼ封じ込めた」との国内外へのアピール。3月28日には、中国政府は「中国全土での感染はほぼ封じ込めた」と宣言した。中国国民は喜びに沸いた。2カ月間あまりの長い長い住宅区でのの封鎖生活が解除となったのだから。そして喜びで迎えた4月上旬の3日間の「清明節」休暇(祝日)だった。中国の感染拡大が収まったが、一方でヨーロッパやロシアやアメリカでの感染拡大が爆発的になってきた。日本でも感染が急拡大し始めた。この世界の状況下、中国政府は3月28日、外国からの一般入国を禁止(※中国国籍をもつ中国人の帰国だけは許可)を発表した。4月に入り、コロナ爆発流行の中心地は欧米やロシアとなっていく。

 4月に入り、欧米やロシアなどの感染拡大から逃れるため、中国に帰国する中国人が増えた。空港での徹底した検査体制と隔離政策によってコロナ感染者をブロック。しかし、ロシアと国境を接する黒竜江省でのクラスターが発生、その後の5月になると同じく東北3省の中の吉林省でクラスターが発生し、その感染は遼寧省にまで広がった。このため5月には約2億人の人が再び移動制限を受けることとなった。感染者の多い地区や市の人々は21日間の隔離と3種類の検査を受けることとなった。

 そして、ついに6月11日から北京ではかなり規模の大きなクラスターが発生し始めてしまった。それまでの約2カ月間、北京での新規感染者は"0"だったのだが。(※北京の空港での外国からの帰国者感染者を除く) 5月22日からは北京では全国人民代表者大会が10日間あまりの日程で開催されたため、それに向けて北京はウイルス防止も向けてに厳戒態勢だった。

 感染拡大クラスターの発生源は北京最大の大型農水産物生鮮食品市場「新発地農産物品批発市場」。この市場は広さも売り上げも中国一・世界一の市場。サッカー場160個分、武漢の問題となった市場の20個分の敷地の中に建物・店舗がある。6月30日現在で、そこを発生源としたクラスター感染者数は300人以上に上っている。生鮮魚などを扱う「まな板」などからもウイルスが多数発見される。感染拡大の場所は特定されたが、ここでどのようにして感染が拡大されたのかまだ明らかになっていない。また、冷凍された商品からのウイルス拡散も考えられると指摘されていることは、とてもこの新型コロナウイルスの怖さを改めて思わされる。このクラスター関連で、北京市民のうちすでに300万人以上が緊急にPCR検査を受けている。

 中国から持ち帰っている中国ファウエーの携帯電話を見ると、連日、この北京の状況がニュースで伝えられていた。(中国の記事)   市場周辺の学校は再び休校となりONLINE授業に。そして、北京市は6月15日に「非常事態」を発令。6月15日から半年ぶりに再開予定だった小学1年~3年の登校再開も延期された。おそらく今学期はもうすぐ終わり夏休みとなるので、9月までは1~3年生は一度も登校することにはならないだろう。

 北京では4月下旬ころから小学4〜6年生の学校再開を行い始めていた。人と人の距離を保つため、北京に近い山西省太原市のある学校では自家製の大きな羽根(1m)を背中に着けて学校生活を送るなどの涙ぐましい取り組みなども行っているのだが。北京市の市場周辺の何十万人もの住宅区も外出禁止の地区封鎖が再開された。

 そして、北京から他の地域に行くことにも強い制限がされることとなった。北京市の周りには河北省が広がる。中国当局は6月28日、北京から150km離れた河北省安新県で、住民50万人を対象にロックダウン(都市封鎖)を行うと発表。安新県では12人が発症。そのうち11人が北京の市場に関係(淡水魚を北京に出荷)していると報道されていた。50万人の人は、各家庭から1人のみ1日1回、食料品や医薬品などの必需品購入のための外出が認められるだけとなると発表された。

 北京に今住んでいる知り合いに電話をして話していると、「北京も1月以降ずっと規制すごかったです。出張時はPCR検査、隔離証明書の提出も求められました。このような中での中国の首都・北京での二次感染拡大なので、もう何しても完全に抑えられないと感じてもいますよ」と話していた。

 北京の政治トップは習近平主席の腹心の一人・蔡奇(さいき)北京市書記。蔡氏は私が以前に勤務していた福建師範大学の卒業生で卒業後この大学に勤務、そして習近平主席が福建省や浙江省の幹部時代からの腹心となる。北京での第2次クラスターが発生した責任は大きいのだが、重要腹心であるために更迭(罷免・馘首)はされないだろう。

 そして、クラスター発生の市場のある北京市豊台区の幹部を職務怠慢問題として、同区の共産党幹部(副区長、書記、市場経理[市場最高地位])など数名を馘首・免職(罷免・更迭)の処分を発表した。今後、この件での処分者はさらに増えていくこととなるだろう。また5月16日には、吉林省でクラスターが発生した責任で同省・舒乱(じょらん)市のトップ(書記)が更迭・解任されている。

 中国共産党一党支配の中国では、問題が発生し迅速的確に対応しなければ、責任を取らせて馘首・更迭・処分を行うことが普通にされる。このため問題の発生を党中央に報告することは命取りになる場合も多いかと思う。この中国の政治風土が武漢での初期の隠蔽対応から今回の世界的な厄災パンデミクスに広がった人災的な面があるとの世界からの批判は的外れではない。再び、隠蔽体質を作り出す原因となっている「問題対応ができなければ馘首・処分の政治」が中国東北部や北京でも行われたこととなる。

 そして、韓国。6月14日には解除予定だった外出自粛を延期することとなった。首都・ソウルでの連日40~50人規模の感染拡大クラスター発生のためだ。この新型コロナウイルス感染拡大抑制の難しさを思う。あの中国や韓国でも、再びの第二次感染拡大がおきたのだから。

 東京もここ1週間、連日50人を超える感染者出ている。中国や韓国は、第二次感染に対する対応は迅速にやっているが、日本は「非常事態宣言」レベル・「東京アラート」発令は当然のレベルなのだが、安倍首相も小池知事も ほぼやる気をなくしたように無策状態となってしまっている とても心配な状況下の日本である。