彦四郎の中国生活

中国滞在記

延期されていた全国人民代表者大会を開催―米国などとの徹底対抗戦略を確認し行動に移すことを決定❹

2020-07-06 13:57:03 | 滞在記

 "全人代"後の具体的な動き(行動)③―インドとの国境、南シナ海、尖閣諸島などへの軍事的行動を高める

  6月、中国とインドの国境・カシミール地方で、中国軍とインド軍の軍事紛争が起きた。双方にかなりの死傷者がでた。インド国内では大規模な中国政府への抗議活動が行われたようだ。習近平主席の藁人形や写真などが燃やされたとの報道も。 

 この軍事衝突に関する報道は、中国では報道管制が敷かれ、中国国内では報道されなかったようだ。この件で中国外交部の趙立堅報道官は、珍しくほとんど語らず、ただ「特に発表する情報は何もない」とのみのコメント。このことを日本のテレビ報道番組の局中国駐在員は、「周辺をみても、台湾・香港・南シナ海と 火種をたくさん抱えている 南に隣接するインドは今は絶対に敵に回したくないのが実情」とコメントしていた。

 新型コロナウイルス感染拡大を抑制したと中国は内外にアピールした3月下旬。このころから、尖閣諸島(中国名:魚釣島)での中国海警の船が連日、日本が主張する領海に侵入してきている。(日本側は領海侵犯と強く抗議)  この連日の侵入は80日間以上におよぶ異例の事態。中国海警は、2年ほど前に中国人民解放軍(軍隊)の指揮系統下に編入されている軍船だ。日本の漁船を長時間にわたって追尾威嚇するなどの行動をエスカレートしてきている。また、4月11・28日の両日には、中国の空母「遼寧」など6隻の艦隊群が日本の宮古島と沖縄本島の間の海域を始めて航行し太平洋への進出を行っていた。6月18~20日には中国海軍所属とみられる潜水艦が鹿児島県奄美大島周辺を潜水航行。

  6月26日、東南アジア諸国連合(ASEAN)は、テレビ会議形式で首脳会議を開き、中国が実効支配を強める南シナ海情勢などを討議した。議長を務めたベトナムの首相は開会式で「全世界が新型コロナウイルス対策を進める中、依然として無責任な行動や国際法に反する行為が行われている」と、名指しを避けつつ中国を批判。フィリピンの大統領も会議で「緊張の高まりを回避し、国際法に基づく責任を果たすよう求める」と述べた。インドネシアやマレーシアやシンガポールなども、このような意見に賛同の意向を。

 7月1日に入り、南シナ海の西沙諸島付近で中国軍(海軍)は大規模な演習をおこない始めた。これに対し、アメリカ海軍は、空母「ロナルド・レーガン」「ミニッツ」なの空母2隻を中心とする空母艦隊群を南シナ海に展開し、「高度な訓練を行っている」と発表、緊張が高まっている。

 このような状況下、中国のインターネット動画配信では、上記のようなアメリカの空母艦隊群を壊滅させる構成動画などがより多く配信されるようになってもいる。

 7月3日、自民党の外交部会と外交調査会が「中国の習近平国家主席の国賓来日を中止するよう政府に求める方針」を固めた。また、香港情勢を受け、「中国への非難決議を出す方針や香港現地の日本人保護、香港から脱出する人たちへの日本での労働ビザ発給」などを求める方針を確認した。これらの自民党議員たちの動きに、二階幹事長は猛反発、岸田政調会長は理解をしめしていた。

 これに対し、中国の趙立堅報道官は、「彼らのパフォーマンスは 中国にとってはまったく意味がなく、我々は彼らに関わる暇もないし興味もない」と表明。

 6月11日号の「週刊新潮」では、特集記事が掲載されていた。「害毒発生源"中国"の覇権を許していいのか―◆一線を越えた"習近平"に"香港の女神"怒りの告発!"国家安全法制で私も拷問死の危機◆火消しに走るも燻る"コロナ流出は武漢ウイルス研究所"◆"中国支配のWHOから脱退"、"経済制裁で共産党幹部の資産を凍結"トランプ発言に溜飲が下がる―どれだけ害悪を撒き散らそうと自らの過ちに頬かむりして開きなおるのみ。それどころか、世界の混乱を好機とばかりに他国の領土・領海を侵犯し、香港の人民を絶望の淵へと追いやる。コロナ禍に続いて人類を襲う災厄は、中国の覇権掌握という悪夢に他ならない。」という見出し記事が。

 中国とオーストラリアは、オーストラリア政府が新型コロナウイルスの発生源に関する独立調査を呼び掛けたことなどを受けて関係が悪化している。中国側は「オーストラリアへの旅行をしないよう国民に呼びかけ、オーストラリア産の牛肉の輸入一時停止」を発表した。オーストラリアのモリソン首相は、6月11日、「中国の脅しには屈しない」と述べた。同日、中国の華春瑩報道局長はモリソン首相の発言を一蹴し、「中国人留学生への差別などを巡る警告は事実に基づくもので、オーストラリアに中国人の安全を守るよう」求めた。

 

 


延期されていた全国人民代表者会議を開催―米国などとの徹底対抗戦略を確認し行動に移すことを決定❸

2020-07-06 10:09:53 | 滞在記

  中国は習近平政権下2年目の2014年により強力な「スパイ法」を制定、翌年の2015年には「国家安全法」を制定させた。これらの法の制定により、中国国内での外国人拘束が相次ぐようになり、また、中国国内での人権派弁護士などの300人にも及ぶ大量拘束などが起きるようになった。中国共産党一党独裁政治に批判をすれば即拘束の危険が及ぶという中国社会となった。アリババやテンセント、ファウエイなどの中国の世界的IT巨大企業と政府が結びつき、ITを駆使した国民監視網も世界の中では超最先進の国家となった。この5年間で情報戦略においても「水も漏らさぬ現代版万里の長城」の構築と運営の国家となる。

 国民は「国家や政治・経済や国の政策ののありかたなどを考えて判断する」存在でなく、「考えることは中国共産党中央指導部及び各専門局、地方政府がする」ことであり、国民はその指導に従い不満をもってはならない、ましてや その不満を行動に表してはならないという国家・社会である。それが現代の中国である。(◆憲法に明記➡「党があらゆる面で国民を導く」という憲法テーゼ国家) 

 昨年3月以来のアメリカとの貿易戦争の勃発、ほぼ1年ほど前の香港での6月に起きた民主化を求める「100万人・200万人デモ」、そして昨年11月下旬の香港区議会選挙での民主派勢力の圧勝。続く今年1月上旬の台湾総統選挙での民進党・蔡英文候補の圧勝。さらに、1月からの中国での新型コロナウイルス感染拡大と100以上にも上る大中の都市の封鎖による感染拡大抑制。2018年11月の中国共産党大会において終身的な国家主席・共産党総書記の座を勝ち取った習近平氏だが、これら一連の1年間の状況下、習近平氏の強権的な政治手法に一定の批判が国内的にも起きてきていたようだ。

 中国国内でのウイルス感染を3月下旬には抑制に成功し、その後は世界的な新型コロナウイルスパンデミックの状況が急拡大し世界が大混乱するなかで、この世界的状況を活用しながら習近平氏への不満を抑え込み跳ね返すための戦略が練られていった。そして、5月22日から始まった全人代で採決・確認し諸行動に移していった。

 "全人代"後の具体的な動き(行動)②―香港国家安全維持法の制定と施行―他人の顔色をうかがうのは永遠に過去のもとのなった

 その諸行動の中で最も急ぎ重要性をもつものが、「香港国家安全維持法」の制定であった。9月には香港立法府選挙が行われる。7月中旬から立候補者受付が始まる。この選挙での民主派勝利は絶対に許すことはできない。そこで、7月1日の香港返還記念日に施行が開始されるように制定作業を急いだ。6月30日に法案を成立させ7月1日から施行した。

 1年間以上にわたる香港の動きに関する圧倒的な日々の中国共産党政府宣伝により、中国国民のほとんどは「香港の運動に関わる人たちは、単なる凶悪な過激暴徒にすぎない。鎮圧されるべき対象だ。」と思っているのが実情だ。また、昨年11月に行われた香港区議選挙の選挙結果は報道管制を敷き、中国国民は知ることができていない。中国国内の最近のトランプには、4人の香港民主活動家が印刷されているものがある。周庭さん、黄之鋒さん、黎智英さん、李桂銘さんの4人。彼らの写真の下には、「国安香安 反独反奸」と書かれている。指名手配犯扱いだ。 

 5月29日、アメリカのトランプ大統領は5月28日に中国政府が香港国家安全法の施行方針を採択したことを受け、「香港に対する優遇措置を撤廃する」ことを表明。6月1日、これに対抗して中国はアメリカからの豚肉や大豆の農産物の輸入停止を発表した。

 6月上旬、アメリカは「6月16日からしばらくは、米中間の民間航空機の往来を停止する」と発表した。香港情勢への抗議の一環だった。(その後、この発表内容は 取り消されることとなったが)  6月中旬、アメリカのポンペイオ国務長官は「香港自治侵害の中国当局者にビザ制限制裁をする。中国共産党幹部の"秘密資産"を凍結することを検討する。」と発言。

 6月6日に台湾第二の都市・高雄市の韓国瑜市長へのリコール選挙が行われ、圧倒的多数で罷免が決定した。中国共産党政府が支援した韓国瑜氏は今年1月11日の台湾総統選挙で蔡英文氏に大きく敗北した候補者だった。台湾の蔡総統は6月、「香港からの難民を積極的に受け入れる」と表明。トランプ大統領の暴露本を書いて世界で注目もされているアメリカの元大統領補佐官(安全保障担当)のボルトン氏は最近、「今の世界情勢から考えると、アメリカなどの民主主義国家陣営は台湾を国家として承認するべきだ」と発言していた。

 6月に入り、「安倍首相"香港国家安全法"への反対G7共同声明に意欲。共同声明にリーダ的役割も果たしている」との報道。日本の国会でもこの共同声明について報告していた。日本の外務省は、中国大使館大使に香港国家安全法への抗議を伝えた。これらの日本の動きに対し中国の華春瑩外交部報道局長は、「我々は関連の報道に留意しており、この件について日本に深刻な懸念を伝えた」と発表。

 6月中旬、アメリカのハワイで、中国の楊潔チン政治局員(外交部の最高統括者)とアメリカのポンペイオ国務長官が緊急の会談をもった。中国側もアメリカ側も事態打開の思惑はなく、会談は平行線に。お互いの言いたい主張をし合った会談に終わる。(「覚悟しておけよ!」と双方が啖呵を切った会談となる)

 香港の国家安全法への欧米の批判に対して中国政府は「これは完全にわれわれの内政だ。中国人が他人の顔色をうかがう時代は永遠に過去のものとなった」と言明。また、国際社会の多くも香港国家安全法施行を支持しているとの演出に躍起でもある。キューバなど53か国は6月30日、国連人権理事会で、同法を支持する声明を発表した。一帯一路政策などの下、中国から巨額の投資を享受してきた発展途上国がその支持声明の中心となっている。韓国などは同法への反対声明は出さない方針のようだ。

 香港の問題を巡って世界は大きく分裂し対立の構造化がより進もうとしている世界の今。