今後の東アジア情勢を大きく左右していくであろう台湾総統選挙が、あと1週間後の1月11日(土)に迫った。立候補者は3人だが、国民党の韓国瑜氏と民進党の蔡英文氏(現・台湾総統)の事実上の一騎打ちとなっている。
12月20日頃に3人の候補者による「政見放送」が行われた。いろいろな選挙情報をみると、11月中旬には蔡英文氏が支持率では韓国瑜氏を15ポイン(%)あまりリードしていたが、12月に入り韓国瑜氏が猛烈な追い上げを行っており、1月に入った時点でほぼ互角の戦いとなっているのではないかと思える。
中国国内での報道を12月中旬ころから新聞やインターネット記事などを眺めていると、台湾総統選挙(※中国国内では台湾大選と呼ぶ)関連のニュースや記事がたいへん多い。中国政府としてはなんとしてもこの大選での韓国瑜氏の勝利に結び付けたい思いは強く、記事やニュース報道は全てが蔡英文氏批判に満ち満ちている。
12月中旬の頃は、韓国瑜氏が「あと50万票差までに迫った!!」と報道されていた。それが12月下旬になると、「差がなくなり蔡英文を上回ってきている」との報道もなされてきている。また、民進党が「中国の選挙干渉」を防ぐために12月下旬に制定を計った「反浸透法」について、「緑色(蔡陣営の選挙カラー)恐怖」「新戒厳令」「民衆は泪している、すごい恐怖の反浸透法に」などとも報道。
「改革国民党」「台湾は国家ではない」、「韓国瑜猛追!!」などの記事が目立つ。「韓国瑜支持を訴えて、12月下旬に2万人以上が行進をおこなった」などの記事。
12月20日頃に、台湾総統選挙に大きな影響を及ぼしてきた「米中貿易戦争」に関して、大きな動きがあった。米中間で第一次合意が成立したことを米国・トランプ大統領が明らかにした。その合意内容とは、「①米国側は中国製品に上乗せしていた15%の関税を7.5%に減らすこと②米国側は1月15日に実施予定だったスマートフォンなどへの追加関税実施を見送ること③中国側は米国の農産物を大量に輸入すること」の3つだった。(※中国政府側の発表は多少ニアンスの違いはある。)
米中貿易戦争の両国が一歩も譲歩しないという過熱化は、これまで民進党の蔡英文氏に有利に働いていたが、この時期に米中間での第一次合意がなされたことは、当然に台湾総統選挙にも影響していることは必至だ。中国政府側としては、台湾総統選挙の行く末もにらみながらのこの時期での合意こぎつけだったと思われる。トランプ大統領としては台湾総統選挙のゆくえで蔡氏に不利に働くことを承知で、今年11月の米国大統領選挙を有利にすすめるための決定だったと思われる。「自国以外の自由や民主主義」にはあまり関心がなく、自分の大統領選挙での再選ファーストの彼らしい決定だった。
2020年元旦の日、台湾では100万人規模の「民主化への五大要求」を求める人たちのデモが行われたと報道されていた。2020年の東アジア情勢はどうなるのだろうか。いずれにしても、1週間後に迫った台湾総統選挙の帰趨(きすう)は、今後の日本の将来はもとより、中国の政治状況(※習近平主席の政治的求心力)にも大きな影響を及ぼしてくる。
2019年9月、かって日本の外務省勤務の経歴もある北海道大学教授の岩谷将氏が、北京での学術会議参加のため中国に渡航した際に、中国政府によって拘束されるという事件がおきた。岩谷氏の専門は「中国近現代史」で、特に「日中戦争時の中国国民党」の研究。大学の公職にある教員(公務員)が中国国内で拘束されるということは初めての出来事だった。岩谷氏は11月になり釈放された。
最近になり、北海道教育大学の教授が昨年の6月中国国内に渡航して以来、連絡がとれない状況となっていることが判明し、中国当局による拘束の可能性も否定できないとの報道がされた。この北海道教育大学の教授は袁克勤(えんこくきん)氏(※1955年、中国吉林省生まれ。専門は東アジア国際政治史)。12月24日に、袁氏の友人の北海道大学教授・岩下明氏ら研究者有志が袁氏の安否について憂慮する「緊急アピール」を出した。
◆―中東を巡る新たな情勢―イランと米国との対立が激化してきている。今日の1月3日、イランの精鋭部隊・革命防衛軍の司令官をアメリカ軍が殺害したとの報道があった。アメリカとそれ以外の国も含めた有志連合によるペルシャ湾やオマーン湾での軍事的行動に対抗して、中国・ロシア・イランの3か国による合同演習が12月27日~30日にオマーン湾で実施された。「アメリカと有志連合」vs「中国・ロシア・イラン」との対立激化が心配される情勢となった。米国はかって(2000年代初頭のブッシュ大統領時代)、「悪の枢軸」として「イラク・イラン・北朝鮮」として名指ししていたが、世界情勢は変化し、「中国・ロシア・イラン・北朝鮮」の4か国とそれを支持する勢力とに二分され「新冷戦時代」に入ってきている2020年の幕開けとなった。
◆前号のブログで、「外交部副部長」と記した記述は、「外交部広報局副局長」の間違いでした。訂正いたします。