彦四郎の中国生活

中国滞在記

2020年1月11日、接戦となっている台湾総統選挙があと1週間後に迫った—中国での台湾大選報道より

2020-01-03 23:13:14 | 滞在記

 今後の東アジア情勢を大きく左右していくであろう台湾総統選挙が、あと1週間後の1月11日(土)に迫った。立候補者は3人だが、国民党の韓国瑜氏と民進党の蔡英文氏(現・台湾総統)の事実上の一騎打ちとなっている。

 12月20日頃に3人の候補者による「政見放送」が行われた。いろいろな選挙情報をみると、11月中旬には蔡英文氏が支持率では韓国瑜氏を15ポイン(%)あまりリードしていたが、12月に入り韓国瑜氏が猛烈な追い上げを行っており、1月に入った時点でほぼ互角の戦いとなっているのではないかと思える。

 中国国内での報道を12月中旬ころから新聞やインターネット記事などを眺めていると、台湾総統選挙(※中国国内では台湾大選と呼ぶ)関連のニュースや記事がたいへん多い。中国政府としてはなんとしてもこの大選での韓国瑜氏の勝利に結び付けたい思いは強く、記事やニュース報道は全てが蔡英文氏批判に満ち満ちている。

 12月中旬の頃は、韓国瑜氏が「あと50万票差までに迫った!!」と報道されていた。それが12月下旬になると、「差がなくなり蔡英文を上回ってきている」との報道もなされてきている。また、民進党が「中国の選挙干渉」を防ぐために12月下旬に制定を計った「反浸透法」について、「緑色(蔡陣営の選挙カラー)恐怖」「新戒厳令」「民衆は泪している、すごい恐怖の反浸透法に」などとも報道。

 「改革国民党」「台湾は国家ではない」、「韓国瑜猛追!!」などの記事が目立つ。「韓国瑜支持を訴えて、12月下旬に2万人以上が行進をおこなった」などの記事。

 12月20日頃に、台湾総統選挙に大きな影響を及ぼしてきた「米中貿易戦争」に関して、大きな動きがあった。米中間で第一次合意が成立したことを米国・トランプ大統領が明らかにした。その合意内容とは、「①米国側は中国製品に上乗せしていた15%の関税を7.5%に減らすこと②米国側は1月15日に実施予定だったスマートフォンなどへの追加関税実施を見送ること③中国側は米国の農産物を大量に輸入すること」の3つだった。(※中国政府側の発表は多少ニアンスの違いはある。)

 米中貿易戦争の両国が一歩も譲歩しないという過熱化は、これまで民進党の蔡英文氏に有利に働いていたが、この時期に米中間での第一次合意がなされたことは、当然に台湾総統選挙にも影響していることは必至だ。中国政府側としては、台湾総統選挙の行く末もにらみながらのこの時期での合意こぎつけだったと思われる。トランプ大統領としては台湾総統選挙のゆくえで蔡氏に不利に働くことを承知で、今年11月の米国大統領選挙を有利にすすめるための決定だったと思われる。「自国以外の自由や民主主義」にはあまり関心がなく、自分の大統領選挙での再選ファーストの彼らしい決定だった。

 2020年元旦の日、台湾では100万人規模の「民主化への五大要求」を求める人たちのデモが行われたと報道されていた。2020年の東アジア情勢はどうなるのだろうか。いずれにしても、1週間後に迫った台湾総統選挙の帰趨(きすう)は、今後の日本の将来はもとより、中国の政治状況(※習近平主席の政治的求心力)にも大きな影響を及ぼしてくる。

  2019年9月、かって日本の外務省勤務の経歴もある北海道大学教授の岩谷将氏が、北京での学術会議参加のため中国に渡航した際に、中国政府によって拘束されるという事件がおきた。岩谷氏の専門は「中国近現代史」で、特に「日中戦争時の中国国民党」の研究。大学の公職にある教員(公務員)が中国国内で拘束されるということは初めての出来事だった。岩谷氏は11月になり釈放された。

 最近になり、北海道教育大学の教授が昨年の6月中国国内に渡航して以来、連絡がとれない状況となっていることが判明し、中国当局による拘束の可能性も否定できないとの報道がされた。この北海道教育大学の教授は袁克勤(えんこくきん)氏(※1955年、中国吉林省生まれ。専門は東アジア国際政治史)。12月24日に、袁氏の友人の北海道大学教授・岩下明氏ら研究者有志が袁氏の安否について憂慮する「緊急アピール」を出した。

◆―中東を巡る新たな情勢―イランと米国との対立が激化してきている。今日の1月3日、イランの精鋭部隊・革命防衛軍の司令官をアメリカ軍が殺害したとの報道があった。アメリカとそれ以外の国も含めた有志連合によるペルシャ湾やオマーン湾での軍事的行動に対抗して、中国・ロシア・イランの3か国による合同演習が12月27日~30日にオマーン湾で実施された。「アメリカと有志連合」vs「中国・ロシア・イラン」との対立激化が心配される情勢となった。米国はかって(2000年代初頭のブッシュ大統領時代)、「悪の枢軸」として「イラク・イラン・北朝鮮」として名指ししていたが、世界情勢は変化し、「中国・ロシア・イラン・北朝鮮」の4か国とそれを支持する勢力とに二分され「新冷戦時代」に入ってきている2020年の幕開けとなった。

◆前号のブログで、「外交部副部長」と記した記述は、「外交部広報局副局長」の間違いでした。訂正いたします。

 

 

 

 

 


激動の世界をゆく「巨龍・中国の"素顔"を探して」「巨龍・中国と向き合う〜香港・台湾」❷NHK・BS1

2020-01-03 13:05:07 | 滞在記

◆前号のブログが、作成中の操作ミスで途中で「投稿」になってしまいました。続きを掲載します。すみません。

 2時間あまりの番組時間の後半は「台湾」。事実上、国民党で親中国派の韓国瑜氏と現・台湾総統で民進党の蔡英文氏の一騎打ちとなっている台湾総統選挙。二人の支持率の推移を示す折れ線グラフが報道されていた。「韓流」とも呼ばれる韓国瑜氏は、出馬を表明した今年の春には、圧倒的に支持率は蔡氏を上回っていた。しかし、6月から始まった香港でのデモや集会の高まりを境にして逆転の支持率となる。7月に入り、再び韓氏が優位に立つが、8月に入ると蔡氏が再び優勢に。

 11月になり、韓氏の妻が3億円のマンションを購入していたことが明るみに出て、庶民派を演出していた韓氏の支持率は急落していった。12月以降は韓氏が巻き返しを図ってきている。NHKキャスターの鎌倉千秋さんは、親中国派と反中国派の両方の人々にインタビュー取材を行っている。韓氏陣営の国民党本部のインタビューでは、「蔡氏が支持率でリードしていますが、この情勢をどうみていますか?」という質問を投げかけた。国民党職員は、「香港デモの影響のピークは過ぎていて、今後は、内政問題と経済問題が争点として再び浮上してきています。韓候補の勝利は可能です」と答えていた。これは現実になるかもしれないと、中国国内での日々の報道を目にしていると思う。

 台湾総統選挙に関する中国政府の干渉問題についても報道していてた。その最もたるものは、台湾の新聞社やテレビ局やインターネット報道会社などに対する「札束攻勢」だという。最近、「韓国瑜支持の報道が多くなった」新聞社を訪問したが、インタビューを断られている。

 今年になり「中国のスパイだった」として、とりわけ香港や台湾で活動していた男性がオーストラリアに亡命し、その活動の内幕を語ったことにより、さまざまな実情が世界に伝わった。これに対して、中国政府外交部副部長は会見で、「そのような事実は一切ない」と否定した。

 鎌倉キャスターがインタビューを断られた台湾の新聞社「中国時報」に最近まで勤めていた若い男性は、「韓氏を美化するような記事を見続けると、彼の主張が常に正しいと思ってしまいます。」「上司は必ず会社の方針に従う記事を書くように警告してきました。そうでなければ、職はなくなると。」「会社は中国から大いに見返りを受けているのです。引き換えに何らかの"任務"を担っています。」と鎌倉さんのインタビューに答えていた。

 台湾の大学院で国際政治比較を専攻している若い女性へのインタビュー。「蔡総統は"台湾を守る"ということを強く訴えすぎです。互いに妥協することが現実的に必要で、正面から中国とぶつかるべきではありません」と語っていた。その彼女への その後の選挙への関りを追跡取材を行っていた。その後 彼女は韓国瑜氏が参加する小規模な討論集会に参加。

 その会場で彼女は韓氏に「もしあなたが総統になったら中国との"平和協定"を結ぶのですか?」と質問した。韓氏は「その質問はとてもデリケートで慎重に答えなければなりません」とお茶を濁したようだ。彼女は、「はっきりと答えてくれませんでした。韓氏の回答には満足はできません。」とインタビューに答えていた。この質問を会場で行ったことにより、彼女の携帯電話には大量の批判メールが殺到したとも語りその批判メールを鎌倉キャスターに見せていた。

 その大学院生の女性は語る。「台湾では、涙を流しながら歯をくいしばり リーダーを選ばざるを得ないんです」と。

 

 


激動の世界をゆく「巨龍・中国の"素顔"を探して」「巨龍・中国と向き合う〜香港・台湾」NHK・BS1

2020-01-03 11:27:34 | 滞在記

  確か今年の10月頃だったかと思うが、NHK・BS1の報道番組「激動の世界をゆく―巨龍・中国の"素顔"を探して」を観た。NHKキャスター・アナウンサーの鎌倉千秋さんが中国北京を訪れ、さまざまな人と 流暢な中国語で話ながら取材し、「中国の今」「中国の素顔を探す」という内容は見応えがあり、とても勉強になる番組だった。そしてこの12月中旬頃には、「激動の中国をゆく―巨龍・中国と向き合う〜香港・台湾」を観た。二つともとても優れた報道番組だと感心させられた。

 「巨龍・中国と向き合う〜香港・台湾」は、11月24日(日)の香港区議会選挙の結果が判明し、民主派が8割強の議席を獲得したという香港で、「中国派」「民主派」のそれぞれの人々にインタビューを行い、香港の人々の思いを報道したものだった。

 日本の民放報道番組が「民主派」の意見をほとんど取り上げていたのとは違って、双方の意見や思いを汲み取る報道姿勢はなかなかのものだと思った。鎌倉千秋さんの報道姿勢がよく伝わってくる。「投票で力になればと思い一票に自分の意見を込めました。民主主義と自由のある香港になってほしいです」と語る若い女性(※特にデモには今まで参加はしていないが)。民主派の先頭にたって活動している若者たち。「今日までのデモをきっかけに、多くの人々が自分の意見を表明したいと思ったのでしょう」と街頭インタビューに応じる男性。

 一方、20年間あまり区議会議員として活動していた「中国派」の女性議員への取材。「本当に中国との関係を切ってしまったら 生活に大きな影響がでます。民主派の人の言う"夢物語"は香港にとってよくないことです。」という言葉も それはそれで重い現実を語っていると思う。また、「中国本土が莫大な資金を投資してくれていることは非常にありがたいことです」と語る男性のコメントも。

 中国では「選挙結果や議席数に関する報道は一切なし」のテレップも流れる。私もこのことは、中国で生活していて驚きだった。ここまで報道というものが政府判断のなすままになっているという中国社会の現実にだ。

 2時間あまりの番組時間の後半は「台湾」。事実上、国民党で親中国派の韓国瑜氏と現・台湾総統で民進党の蔡英文氏の一騎打ちとなっている台湾総統選挙。二人の支持率の推移を表す折れ線グラフが報道されていた。「韓流」とも呼ばれる韓国瑜氏