彦四郎の中国生活

中国滞在記

現代中国における「宗教」は、どうなっているんだろう?―尤渓の「天后宮」を歩く―

2016-06-02 18:01:05 | 滞在記

 1か月ほど前の5月6日(金)の夕方から7日(土)にかけて、福建省三明市尤渓県に行ってきた。新幹線で福州駅から1時間ほどで尤渓駅に着くと空は真っ黒。すざましい雨が降っていた。なかなか経験できないような雨だった。日本に留学中の学生の実家に泊まる。留学生の父親や兄、母親たちと地元の酒なども飲みながら夕食。日本語は通じないので、サバイバル中国語を駆使しての会話で場をつなぐ。
 翌日の午前中、父親と私の二人で 尤渓の街にあるダムと「天后宮」(寺)に行くことになった。市内バスに乗り、ダムの近くで下車。ダムの上に向かって歩き始めたが、前日の猛烈な雨のため いたるところで小規模な崖崩れができ、山からの水が激しく流れていた。ダムから街を見る。ダム湖には、「ホテイアオイ」のような浮草が一面に繁殖している。魚を養殖している「いけす」もある。

 中国の寺には いろいろな所に行ったが、もうひとつ「現代中国の宗教」についての全体像(概略)が分かりにくい。3年前に中国に来るまでは、「中国だから仏教と儒教が中心だろう。儒教は宗教ではなく哲理的なものかな。だから、中国の宗教は仏教が中心だろう。何といっても日本の仏教は中国から伝わったのだから。それに中国の西方のウイグル族はイスラム教、チベット族やモンゴル族はチベット仏教かな。」と思っていた。3年間住んでいて、いろいろな寺に行ったが やはり中国の宗教というものが もうひとつ理解できていない。理解するのは かなり難しいのだ。

 この「天后宮」というのは、中国の東シナ海に面した省や台湾などに多い。海の航海の安全の女神を祀り、安全を祈願する。それだけではなく、人々の健康や願い、豊作、蓄財など、いろいろなことを祈願する場所なのだ。「道教」という宗教とも混在している。日本では「宮」といったら神社だが、ここは神社の要素と寺の要素が混在している。いわゆる「民俗宗教」という範疇になるらしい。掲示されている写真を見ると、定期的に集まって「催し」をするようだ。宗教団体の「講」のような組織でもある。人々はここに集い、料理を食べたり酒を飲んだりして、信仰を共有し、人脈を作り、現生利益に生かす「講」でもある。旗や太鼓などの楽器も持って、パレードなどもするようだ。

 中国では、1949年に中国共産党による「中華人民共和国」の成立以来、宗教は禁止されるようになった。特に「文化大革命」の10年間、僧侶は逮捕されたり、寺院の多くが破壊されたりした。1978年、宗教が再び認められるようになった。それ以来、宗教が回復してきている。
 中国では、現在「道教・儒教・仏教・キリスト教・イスラム教」などの信仰が公認されている。また、多くの「民俗宗教」も公認されている。「中国の三教」とは「儒教・道教・仏教」。この三教と民俗宗教が教義上混在しているのが、中国の宗教のようだ。だから、中国の宗教の概略というものを理解することが とても難しい。「仏教や道教、そして儒教、それに 地方の民俗宗教的習慣の間に明確な境界線が存在しない」とも言われる。特に、道教と民俗宗教とは 区別がつきにくいというか混在しているというか。
 上記の写真の左は、「虎渓三笑」という絵。儒教・道教・仏教が一体化、3人の男が川沿いで笑っているのを描いた「宋」時代の絵画である。この絵が示すように、三教は混在しながら各宗教を作り上げている。また、民俗宗教の中に三教が混在している。
 2010年の調査によると、国民の56.2%が「なんらかの民俗宗教や祖先崇拝」に関心・関係をもち、国民の13.7%が「道教と民俗的道教」に関心・関係をもち、13.8%が仏教に関心・関係を持っているとされている。また、キリスト教やイスラム教の信者は、それぞれ2.4%(3300万人)・1.7%(2300万人)。まったくの無宗教は12.6%。ちなみに、共産党の党員は、宗教の信仰を原則禁止されているようだ。

 「天后宮」を後にして、山を下りる。昨日の雨で、川が増水し濁っている。中国の伝統的な橋が新しく作られていた。行ってみる。なかなかいい橋だ。橋の近くには「夾竹桃(きょうちくとう)」が咲いている。日本の関西の開花より2か月あまり早い。

 バス停方面に向かう。途中に河川公園がある。家族が公園をのんびりと散歩している姿もある。バス停では、小さな子供連れの2組の母子。

 バスを降りてからすぐの所にある中学校。正門には、「成績優秀生徒」の写真と紹介が大きく掲載された看板が設置されている。勉強の成績第一の中国らしいなあと感じる。日本でよく見られるのは、「○○さん、国体出場!」などの横断幕。家に帰る前に、近くの「証明器具店」に立ち寄って、お茶をごちそうになった。店の女性店主とは親しい顔なじみのようだ。
 夕方近くの時刻に、新幹線「尤渓駅」に行ったら、女性店主に偶然に出会った。彼女も同じ新幹線の同じ号車で福州に用事で行くようだ。午後7時に福州駅に着いた。「再見!」と、彼女とも別れを告げた。